一般社団法人電子情報技術産業協会(以下、JEITA)が事務局を務めるGreen x Digital コンソーシアム(※)はこのほど、異なるソリューション間でのCO2排出量データ連携の技術実証実験に成功したと発表した。

日本初(JEITA調べ)の試みとなる同実証は、サプライチェーンのCO2排出量の可視化実現に向けた第1段階として実施された。JEITAが今回公表した内容は、以下のとおり。

2022年9月~2023年1月に実施された同実証には、企業15社が参加した。15社は、アスエネ株式会社、アビームコンサルティング株式会社、SBI R3 Japan株式会社、株式会社クラウディオ、株式会社Sustech、株式会社ゼロボード、株式会社chaintope、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、日本オラクル株式会社、株式会社野村総合研究所、株式会社PID、株式会社日立製作所、株式会社日立ソリューションズ、booost technologies株式会社、富士通株式会社(順不同)。

Green x Digital コンソーシアムは、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のPartnership for Carbon Transparency(PACT)に参画している。同実証では、PACTのPathfinder Networkが提示するデータフォーマットとAPI(接続方式)を用いて、製品の仮想サプライチェーン上で複数ソリューション間のデータ連携を検証した。

サプライチェーンの各企業が異なるソリューションを活用した場合でも、共通仕様のもとでデータ連携できることを同実証で技術的に確認した。これにより、ユーザー企業においてはソリューション導入時に選択の幅が広がり、ソリューション提供企業は他社との個別調整が不要となるため開発の効率化が期待できる。同実証が成功したことで、ソリューションを活用したサプライチェーンCO2排出量の可視化実現に近づいた。

同実証実施の背景は、スコープ3を含むCO2排出量の正確な把握と削減努力が求められていることだ。そこで、同コンソーシアムの見える化ワーキンググループはデジタル技術を活用して、サプライチェーンの企業間でCO2排出量データを連携し、スコープ3を含むサプライチェーンCO2排出量を可視化するための仕組みを検討し、「CO2可視化フレームワーク」と「データ連携のための技術仕様」を策定した。

今後、第2段階としてCO2算定実務も含めた検証をユーザー企業と共同で2023年6月末までに完了させることを目指す。実証実験を通じて、「CO2可視化フレームワーク」と「データ連携のための技術仕様」を改訂し、国内外の産業界との連携や官民協力を深めていきたい考えだ。

2050年までにネットゼロを達成するには、すべての企業が炭素排出量を測定する必要があるとWBCSDはみている。WBCSDは、炭素の透明性に取り組む業界横断的エコシステムを構築するべく、PACTを新分野に拡大していく意向だ。PACTのアプローチを取り入れつつ、参加企業の需要や国内制度などを考慮した仕組みを策定し、共同で取り組みを進める同コンソーシアムの今後の展開が注目される。

※ Green x Digital コンソーシアム:環境関連分野のデジタル化や新たな事業モデルの創出などを通じて、2050年カーボンニュートラル実現に寄与することを目的に2021年10月に設立された。サプライチェーンにおけるCO2排出量の可視化や再生可能エネルギー導入などを課題として、会員間の共創促進を図る活動を展開している。会員数は2023年1月末時点で143社

【プレスリリース】Green x Digital コンソーシアム、 異なるソリューション間でのCO2データ連携の技術実証に成功 ソリューション提供企業15社が参加、サプライチェーンCO2排出量見える化の実現に前進
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*冒頭の画像は、技術実証実験のイメージ図(出典:一般社団法人電子情報技術産業協会)