ブロックチェーンベンチャーのシビラ株式会社(以下、シビラ)と株式会社電通グループ(以下、電通グループ)はこのほど、川崎市などが進める食資源循環・食料サイクルの取り組み「eco-wa-ring Kawasaki(エコワリング川崎)※1」において、持続可能なサーキュラーエコノミー構築を目指すプロジェクトを開始すると発表した。両社は、同取り組みにおいてシビラが保有するブロックチェーン技術とWeb3.0(※2)の基盤技術を用いた情報流通インフラを提供する。

(出典:株式会社電通グループ)

同取り組みでは家庭で生ごみから作る堆肥を活用し、地域住民・農園・企業が一体となって食資源循環社会の実現を目指す。SDGs関連の行政施策が抱える「インセンティブなしに市民の自発的参加を促進する」という課題への一つの回答として両社は提示したい考えだ。 実証実験において両社は、市内の各協力先と参加者をつなぐ施策の有効性・技術面での可用性、および以下の2つの可能性について検証する。

1. 都市型の食品リサイクル・食資源循環モデルの創出
  • 貢献実績を評価基準とした金銭以外の多様なインセンティブの提供による効果
  • 貢献度の高い「公認パートナー」を中心とした地域コミュニティの形成・活性化の可能性
2.個人情報保護と参加者の利便性を両立するWeb3.0技術

EU一般データ保護規則など個人情報の取り扱いに関する規制強化の動きを捉え、メールアドレスなどの個人情報の取得なしに本人を証明する高利便性と高セキュリティを両立したパスワードレスオンライン認証規格「WebAuthn(FIDO2)」と、自身のエコ活動記録に応じてインセンティブを受け取れるデジタルアイデンティティ証明規格「Verifiable Credentials」の有効性

(出典:シビラ株式会社)

(出典:シビラ株式会社)

活動実績をデジタルアセット(Verifiable Credentials、NFT※3など)として表現することで、参加者はWeb3.0時代のデジタルアイデンティティ管理アプリ「dAvatar※4」を介して「活動実績の確認」「活動実績に応じたインセンティブの確認」「活動実績の証明」などができるとシビラは発表している。

同社は、インセンティブやデジタルアセットを提供する企業・自治体・店舗が実績に応じてデジタルアセットを発行したり、提供条件を管理したり、参加者の状況を確認したりするためのアプリケーションをWeb3.0時代のIDaaS「dAuth※5」を利用して今後開発していく意向だ。

電通グループ 電通イノベーションイニシアティブ プロデューサーの鈴木淳一氏は、「シビラ社とは2016年から共同研究を開始しました。自然生態系に配慮した農法にこだわる生産者の思いを消費者に伝えるために実施した有機農産品トレーサビリティPoC(概念実証)や、ワイナリー経営者に焦点を当て、NFTによるデジタルアイデンティティ証明を通して生産者のファンコミュニティ形成につなげた日仏エシカルワインPoCなど、従来の経済尺度での計測が難しい価値観の領域に踏み込んだPoCをともに実施してきました。今回の取り組みは、継続的な原資負担を求められることが障害となり持続可能なモデルになりにくい公共部門に共通する普遍的課題に対して、コミュニティ起点型の新しいソーシャルエコノミー構築を推進することで解決をはかる、とても先進的でこれまでの取り組みの集大成となる社会実験と考えています。コミュニティ・クローズドなインセンティブ設計によりユーザーの自律性が促される可能性などブロックチェーンとWeb3.0の技術特性を捉えたR&Dに取り組んでまいります」と述べている。

※1 eco-wa-ring Kawasaki:川崎市・株式会社電通・ローカルフードサイクリング株式会社・株式会社トラストリッジの4組織が共同で推進する地域自走の食品リサイクル推進で栄養循環コミュニティを創出するプロジェクト。実施予定期間は2021年6~12月。市内の家庭から排出される生ごみを各家庭で生ごみ処理機(コンポスト化容器など)を用いて堆肥を作り、市内の農園などで活用して、安心・安全な野菜を作り食べるというフードサイクルの創出を目指している。協力企業や施設を中心に展開する自活型フードサイクルと、地域農園を主体に展開する共助型フードサイクルがある。地域住民・農園・企業・自治体が一体となって、ごみの減量化や資源化・CO2削減・地域コミュニティ活性化や街づくりにつなげ、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献していく取り組み
※2 Web3.0:データに対するアクセス権・所有権を自己主権型で管理するSSIの考え方に基づき、デジタル資産を軸にアイデンティティを構築する価値のインターネット
※3 NFT:Non-Fungible Tokenの略語。ブロックチェーン上でその唯一性が保証されているトークンで、暗号学的にその保有や来歴を証明できる。現在はゲームアイテムや芸術の表現手段として活用されることが多いが、今後はデジタルアイデンティティの構成要素(ゲームアイテムや芸術なども含む)の表現手段としてより広範に活用され、アプリケーションを横断したアイデンティティの共有やアイデンティティに付帯する権利の証明といった発展的な利用事例も増加していくことが予想される
※4 dAvatar:シビラが提供する自己主権型デジタルアイデンティティの管理アプリケーション。SDGs活動・ゲーム・スポーツ・好きなアニメのファン活動など、さまざまな活動に伴う実績を証明することで、アプリケーションを横断して本当の自分らしさを表現できる。それらの実績に応じたインセンティブを確認・取得したり、類似した実績の持ち主とつながってコミュニケーションもとれる
※5 dAuth:シビラが提供するWeb3.0時代のIDaaS。Web3.0を構成する標準規格(DIDs、Verifiable Credentials、FIDO2、PIDなど)やブロックチェーンについての専門知識を持たない開発者やエンドユーザーがアイデンティティを構成するデジタルアセット(Verifiable Credential、NFTなど)の扱いを支援するAPIやSDKを総合的に提供する

【プレスリリース】
シビラと電通グループはWeb3.0技術を用いた持続可能なサーキュラーエコノミーの構築を川崎市で開始(シビラ株式会社)
電通グループ、持続可能な食資源循環社会の実証実験に参画し、コミュニティ起点型の新しいソーシャルエコノミーの構築を推進(株式会社電通グループ)