株式会社日立製作所(以下、日立)は5月27日、日立グループ全体の環境ビジョンと2050年度に向けた環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を改定したと発表した。新たな環境ビジョンでは、「脱炭素」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」の3つを柱に掲げ、その実現に向けた目標を更新した。あわせて、日立の2050年度へ向けた温室効果ガス削減目標が、国際的な気候変動イニシアチブであるSBTイニシアチブ(以下、SBTi)から科学的根拠に基づくネットゼロ目標として認定されたことも公表した。
今回の改定は、近年顕在化している環境課題に加え、その解決に向けた人々の意識変化やビジネスモデルの進化を踏まえたものだ。生成AI利用拡大などによる電力需要の急増や、地政学リスクに起因するバッテリー等製品製造に必要な鉱物資源の囲い込み、自然災害の激甚化といった課題が一層深刻化している。これに対し、非化石エネルギーの利用拡大や循環型ビジネスへの転換、自然資本の保全・回復など、多様な解決策が模索されている状況がある。
このような背景のもと、日立は改定した環境ビジョンで「脱炭素」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」の3つを柱に設定した。社会イノベーション事業を通じて、すべての人が地球環境を守りながら豊かな社会を実現できるよう、グリーントランスフォーメーション(GX)のグローバルリーダーを目指すとしている。この新たな環境ビジョンの下、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」も改定された。

「日立環境イノベーション2050」改定の主なポイントとして、「脱炭素」の実現では、従来のCO2のみならず温室効果ガス全体の削減を目指し、2050年度までにバリューチェーン全体の「ネットゼロ」実現を目標とした。高効率な製品や革新的なサービス、将来の技術により貢献する。
「サーキュラーエコノミー」の実現では、2050年度までに「サーキュラートランスフォーメーション(資源とビジネスを循環型へ移行)」を新たな目標に設定。エネルギーや資源の使用量を最小化し、製品ライフサイクル全体での価値最大化を目指す。2030年度までの目標として、埋立廃棄物ゼロ、すべての関連製品へのエコデザイン適用を設定した。水利用効率の改善は、ネイチャーポジティブの取り組みの中で継続する。
「ネイチャーポジティブ」の実現では、従来の「自然への影響の最小化」に加え、自然災害による被害軽減と迅速な回復への貢献を含む「ネイチャーレジリエンス」を2050年度の目標に据えた。これらの目標に対し、2030年度の行動目標を設定するほか、3年ごとのアクションプラン「環境行動計画」を具体化し、グループ全社で取り組む。
さらに、日立がSBTiから認定されたネットゼロ目標は、パリ協定で定められた1.5℃目標と整合する科学的根拠に基づいている。具体的な目標として、2050年度までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを目指す。短期目標(Near-Term Targets)では、スコープ1および2の排出量を2030年度までに2019年度比で83%削減、スコープ3の購入した製品・サービスからの排出量および販売した製品の使用による排出量を2030年度までに2022年度比で付加価値あたり52%削減する。
長期目標(Long-Term Targets)では、スコープ1および2の排出量を2050年度までに2019年度比で90%削減、スコープ3の排出量(購入製品・サービス、販売製品使用)を2050年度までに2022年度比で付加価値あたり97%削減することを目標としている。
【プレスリリース】日立、環境ビジョン・環境長期目標「日立環境イノベーション 2050」を改定
【参照記事】日立環境イノベーション2050
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