日本航空株式会社(以下、JAL)と住友商事株式会社はこのほど、JAL運航便を利用する海外から日本への旅行・出張者を対象に、衣服シェアリングサービス「Any Wear, Anywhere」を提供する実証実験を7月5日に開始した。

実証は2024年8月31日まで実施予定で、同サービス利用に伴う環境価値も計測する。

同サービスのコンセプトは、渡航先での衣服レンタルによる、少ない荷物での移動体験の提供と環境価値創出だ。同サービスの利用を拡大し、渡航先での衣食住全般について現地のものを利用できる環境を整え、よりサステナブルな旅行・出張を実現することを目指す。

両社の役割は、次のとおり。住友商事は同サービス展開に向けた予約システムを開発するとともに、日本国内の余剰在庫や古着を活用したシェアリングを採用して衣服を調達・管理する。JALは同サービス利用による顧客の預け入れ荷物重量の変化を監視し、環境負荷低減効果(飛行機重量の削減によるCO2排出量の削減効果)を検証する。衣服調達においてウィファブリック株式会社が、レンタル衣服の洗濯・クリーニングにおいて株式会社白洋舍が協働する。

サービスコンセプトイメージ

実証開始にいたった背景は、世界におけるサステナブル・ツーリズム推進の高まりだ。旅行先・宿泊先・移動手段などについて、よりサステナブルな選択をしたいと考える旅行者が増えている一方、選択肢は十分でないとJALと住友商事はみている。現在渡航先の衣食住において、食はレストラン、住はホテルなど現地のものを利用できるが、衣服は自宅からの持参が一般的だとしている。

今後、両社は同実証実験をはじめ、顧客の需要とともに環境価値を創出する取り組みの検討を共同で継続していきたい考えだ。

大きな環境負荷が指摘されている航空業界は、廃棄物やCO2の排出量削減などに向け、さまざまな取り組みを進めている。飛行機の軽量化もそのうちの一つだ。全日本空輸株式会社(ANA)は、飛行機1機あたり重量を580キログラム削減すると、同社全体で年間約5700トンの燃料消費量を削減し、25メートルプール約1万7500個分相当のCO2排出量(約1万7500トン)を削減できるとしている。飛行機1機あたり580キログラムを削減するには、乗客1人あたり荷物を約2キログラム削減することで実現できることから、JALと住友商事が提供するサービスを利用する乗客が増えると飛行機の軽量化に貢献できると考えられる。同サービスでは、レンタル衣服の品揃え・サービス全体の使い勝手・コストも重要となるだろう。飛行機の軽量化とサステナブル体験の実現を目指し、古着を活用したシェアリングサービスを提供する同実証の検証結果が期待される。

【プレスリリース】インバウンド向け衣料シェアリングAny Wear, Anywhereの実証実験開始について~少ない荷物で渡航できる旅行・出張体験の提供と環境価値の可視化を目指します~
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*記事中の画像の出典:日本航空株式会社、住友商事株式会社