政府は12月27日、循環経済に関する関係閣僚会議を開催、循環経済(サーキュラーエコノミー)の移行加速化パッケージを取りまとめた。再生材供給体制構築、国内外での資源循環市場への関与強化、循環型ビジネスモデル確立に向けた支援などが柱。

具体的には、再生材の安定供給に向けた拠点整備(全国に12ヶ所)のための調査事業、レアメタル含有率の高い小型家電などの回収と再資源化、ASEANでの電子廃棄物の処理体制構築支援、使用済みおむつ・太陽光パネルリサイクルの推進、食品ロスの削減、全市町村が参加する資源循環自治体フォーラムの立ち上げなど、各領域の政策が盛り込まれている。

石破茂首相は、同会議で「環境制約や資源制約が高まる中、多くの資源を輸入に依存する我が国にとって、金属やプラスチックなどの廃棄物を循環資源として、最大限活用しながら付加価値を生み出し、新たな成長につなげる、循環経済への移行は極めて重要な取組」と述べた。加えて、国際的なルール形成を主導し、欧米・アジアの循環経済市場へ貢献していく構えも示した。

政策パッケージの詳細は以下の通り。

  • 地域の資源循環を生かした豊かなくらしと地域の実現
    1. 地域の再生可能資源の徹底活用
      • 国民各層における資源循環ビジョン・モデルの共有や地域への実装支援
      • レアメタルを含む小型家電など地域の循環資源の回収・再資源化の促進
      • 食品ロス削減、サステナブルファッション、使用済おむつリサイクルの推進
      • 新しい地方経済・生活環境創生交付金等による地方公共団体の取組支援等
      • 廃棄物や未利用資源などの地域資源を活用した地域脱炭素の推進
      • 資源循環に資する「地域生活圏」の形成
    2. 農山漁村のバイオマス資源の徹底活用
      • 地域の未利用資源等を活用した農林漁業循環経済地域づくりに向けた支援
      • 中高層をはじめとする木造建築の推進や木質系新素材の技術開発の支援
    3. 資源価値を可能な限り活用するまちづくり・インフラ整備
      • 下水汚泥資源の有効利用の推進
      • 建設リサイクルの高度化
      • 長く使える住宅ストックの形成・空き家等の利活用・インフラ長寿命化の推進
    4. 循環経済型ビジネスの拡大
      • 付加価値が高く利用しやすいリユースビジネス等の支援
      • 大阪万博での「日本版CE」の発信
  • 国内外一体の高度な資源循環ネットワークの構築
    1. 資源循環を促進する制度的対応
      • 再生材利用拡大、環境配慮設計の可視化・価値化等のための制度的枠組み構築
      • 太陽光パネルのリサイクル促進等に向けた制度的枠組み構築
    2. 製造業と廃棄物処理・リサイクル業(資源循環業)の連携強化による再生材供 拡大
      • 再資源化事業等高度化法の認定事業による製造業と資源循環業の連携強化
      • 資源循環分野における外国人材確保
      • 自動車向け再生プラスチック市場構築のための産官学コンソーシアムの形成
      • 事業者間で素材情報等を共有する情報流通プラットフォームの構築支援
    3. 高度な再資源化技術・設備に対する投資促進
      • 高度な分離・回収技術や AI 導入による高効率な再資源化設備等の技術開発・ 設備導入支援
      • 環境配慮の製品設計等を可能とする技術開発への支援
      • バイオものづくりの社会実装に向けた支援
      • 持続可能な航空燃料(SAF)供給体制の構築促進
      • 廃棄物処理施設を核に CO2 等を資源として活用する新たな循環産業の創出
    4. 我が国をハブとする資源循環ネットワーク・拠点の構築
      • 資源循環ネットワーク・拠点構築に向けた FS事業(全国12カ所)実施や港湾の選定・整備
      • 不適正ヤードへの対応強化等による金属スクラップの不適正な国外流出抑制等
      • ASEAN 諸国の電子スクラップの我が国での再資源化体制の構築
      • アフリカにおける廃棄物管理プロジェクト形成支援等を通じた廃棄物インフ ラ輸出機会の創出
  • 資源循環市場の創出拡大に向けた国内外のルール形成
      • 資源循環分野での企業の循環性情報開示のスキーム(GCP)等の国際ルール形成を主導
      • 政府調達における循環性基準の導入によるマーケットの創出支援

海外循環市場を取り込み、地域とビジネスを活性化できるか

経済産業省は20年5月「循環経済ビジョン2020」を発行し、23年3月にはその具体策となる「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定した。同年12月には経産省・環境省が連携して産官学パートナーシップ「サーキュラーパートナーズ(CPs)」を立ち上げ、556者(11月時点)の会員に加え、3つのワーキンググループ「ビジョン・ロードマップ検討WG」「CE情報流通プラットフォーム構築WG」「地域循環モデル構築WG」で議論を進める。政府は24年7月には今回の会議「循環経済に関する関係閣僚会議」を設置し、8月には「第五次循環型社会形成推進基本計画」を閣議決定、循環経済を国家戦略と位置づけた。

このように、政府が循環経済の優先度を着々と上げてきた背景には、循環経済政策が欧州を中心に先行するなか、循環経済がカーボンニュートラル・ネイチャーポジティブへの貢献のみならず、経済安全保障確保や地域経済の活性化、国内の産業基盤へ貢献する機会としての側面としても捉えられてきたことが一つある。こうした要素は、より喫緊性の高いものとして認識されやすい。

今回の政策パッケージには、再生材の安定供給に向けた拠点整備や、地域循環モデルの展開に資する政策、インフラ基盤の整備、リユースの推進など、水平展開に向けた政策も数多く含まれる。加えて、日本が有するリサイクル基盤などをもとにASEANなどの循環経済市場の取り込みを図る意図が示されていることも特徴である。グローバルな循環経済を見据えながらも、「日本型CE」なるものの輪郭が見えてきたともいえるかもしれない。

循環経済政策において先行するEUでは、10年代から資源効率から循環経済へ政策軸を移行している。その効果として実際の循環経済関連のマクロ指標がEurostat等で公開されており、そのなかでは循環経済における雇用数など進捗が見られる項目もあるが、実際のところ同政策がEUの経済全般あるいは産業競争力強化の面においてどの程度寄与しているのか疑念の声が少なからずある。循環経済政策の効果検証には、中長期的視点が求められるということにほかならない。

国内でも、循環経済に取り組むインセンティブのさらなる掘り下げや循環経済政策と課税体系の一貫性確保、需要創出など、こうした中長期の目線が必要な項目は多い。今後策定予定のビジョンやロードマップもとに、経済のあり方を変革するという視点をもって、移行を確かなものにしていくことが期待される。

写真(冒頭):首相官邸HPより

【プレスリリース】循環経済に関する関係閣僚会議
【参照】循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する関係閣僚会議