サーキュラーエコノミーの実現に向けた新ビジネスの創出を目指す企業などによる共創プラットフォーム「ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(J-CEP)」が設立一周年を迎え、このほど会員企業による記念会合が東京都内で開かれた。会合には27社から約60人が参加し、LCAの専門家による基調講演や会員企業によるディスカッションなどが行われた。

低炭素化は実現できても、脱炭素化に向けては課題山積

J-CEPは、北九州市を拠点に2020年2月に設立された産官学民による共創プラットフォーム「九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(通称K-CEP)」を発展的に展開する形で2021年10月に発足。「ものと情報と気持ちがめぐる社会」を目指し、日本国内の資源の最適循環と持続可能社会の実現に資するビジネスの創出に向けて加盟企業が連携して取り組んでいる。加盟企業は日用品やエネルギー、IT、食品企業など設立当初の28社から43社に増加。循環型社会デザイン事業や廃棄物リサイクルを手掛けるアミタホールディングスと、IT大手NECソリューションイノベータが事務局を担う。

会合ではまず、「プラスチック循環におけるLCA」と題して北九州市立大学の松本亨教授が基調講演した。松本教授は、新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)や環境再生保全機構(ERCA)でのプラスチック回収・資源化に関わる研究プロジェクトの進捗とともに、プラスチック各素材に対してどのような技術で再資源化することが環境影響上適切かを評価しようとしている研究プロジェクトの目的と現状について紹介した。その上で、松本教授は今後の見通しについて「現状では低炭素化は実現できても、脱炭素化に向けてはリサイクルループの構築やCCS(二酸化炭素の回収・貯留)などが必要になってくることが分かる。ライフサイクルを通じたカーボンニュートラルが求められる」などと指摘した。

基調講演する北九州市立大学の松本亨教授(左奥)

続いて、J-CEPがこれまでに取り組んだコミュニティでの資源回収・リサイクル実証プロジェクトの概要が紹介された。北九州市で2021年に半年間にわたって行った使用済みプラスチック容器の資源回収・リサイクル実証実験「MEGURU BOXプロジェクト」では、市内の小売店や公共施設などに資源回収ボックスを7カ所設置し、使用済みプラスチックボトルやつめかえパウチなどを回収するとともに、LINEを活用して住民に付与したポイントを社会支援団体に寄付できるスキームを展開した。その結果▼資源回収ボックスの設置場所としては、よく利用するスーパーマーケット▼ポイント付与・利用方法としては、LINEポイントと寄付▼ポイント付与額としては10円/個相当ーがもっとも好影響をもたらすことが分かったという。

「ものと情報と気持ち」がめぐる社会のためにサーキュラーエコノミーを実装する

J-CEPは現在、兵庫県神戸市でプラスチック資源回収ステーションの運営に参画している。基調講演に続いてのディスカッションでは、同市長田区内の複合公共施設「ふたば学舎」内の回収ステーション「エコエコひろば」の運営に参加する幹事企業によるディスカッションが行われた。

このうち、エコエコひろばで地域住民に飲んでもらえるコーヒーを提供しているネスレ日本の執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長・嘉納未來氏は「具体的で分かりやすい分別時のコミュニケーションの工夫があり、単なるごみステーションではない機能があることに共感している。どれだけ多くのプラスチックを集めるかだけでなく、コーヒーを飲みに来てくれた人たちがコミュニティを作れる場所になっている」とエコエコひろばの意義を強調した。また、エコエコひろばで回収したプラ容器を活用してベンチを製作、提供した三井化学の常務執行役員モビリティ事業本部長・小守谷敦氏は「ここに多くやって来るお子さんやお年寄りの皆さんに、リサイクルの成果を体感していただきたかった。回収量が増えれば、もっと違うものができるので取り組んでいきたい」とコメントする一方で、回収したプラスチックは概してよく洗浄されているものの、香りや色が残ってしまうと除去できないため、分別の精度を上げたり、香りを除去するための技術開発が必要となっている現状にも言及した。

エコエコひろばの資源回収ステーションでは、色や形状によって分別の仕方をできるだけ分かりやすく伝える工夫をしているという(J-CEP提供)
回収プラ容器を活用して製作したベンチが置かれている(同)

その後この日の参加企業の担当者らによるワークショップも行われ、「魅力のある出口(リサイクル品など)をいかに作りだすか」「小ロットでリサイクル品を作るのが難しいため、共同で小ロットを作れる場を使えないか」「日本企業は新技術に拘りがちだが、既存技術をCEに繋げていくことに可能性を感じる」など、昨今サーキュラーエコノミーに取り組む現場が抱える課題感が共有された。

参加企業の担当者がテーブルに分かれて、この日の感想や自社の取り組みをシェアした

J-CEP代表幹事でアミタホールディングスの代表取締役社長兼COO・佐藤博之氏は「サーキュラーエコノミーでは一社単独ででできることは少ない。 立場を超えて協働しながら、理論を学ぶだけでなく、トライ・アンド・エラーをしながらサーキュラーエコノミーを社会実装できる存在でありたい」と話している。J-CEPは今後、自治体の参画や自治体との協働のあり方も検討するとしている。

気候危機が進展し、内外の社会情勢が大きく変化する中、J-CEPが掲げる「ものと情報と気持ちがめぐる」循環型社会志向のサーキュラーエコノミーの重要性はますます高まっている。資源循環を通じて地域に産業・雇用を創出するとともに、地域住民の健康増進や関係性の増大に寄与するサステナブルでウェルビーイングな地域が各地に広がるか、J-CEPの今後の取り組みに期待したい。

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