日本経済団体連合会(以下、経団連)はこのほど、これまでの成長戦略の路線に一旦終止符「。」を打ち、新たな成長戦略である「。新成長戦略」を発表した。

新型コロナ蔓延が世界経済に打撃を与えるなか、経済界は「価値」を協創・提供して、環境問題や経済的格差などの課題解決に積極的に取り組まなければならない。そこで、経団連は新しい資本主義の形としてサステナブルな資本主義を基本理念に掲げ、以下の3点に重点を置く成長戦略を提言した。

  1. サステナブルな資本主義 −資本主義をサステナブルにするための国家間と世代間、職種間と地域間などの格差の是正
  2. 2030年の未来像−将来にわたる持続的成長を目指すべく、子どもと若者の教育、子育て世代と若手研究者への支援、および次世代技術などの未来投資の重点的な拡充
  3. 2030年へのアクション:成長戦略−SDGsの達成年度とされる2030年に向けた経済社会の重要アクションの明確化

今回は、同戦略で明記された「サステナブルな資本主義」と「2030年へのアクション:成長戦略」のなかの「グリーン成長」について取り上げる。

サステナブルな資本主義

環境問題などのさまざまな問題を引き起こした「株主至上主義」への反省機運や、デジタル化などによる社会課題への意識が高まった。生活者や働き手、地域社会や国際社会、および自然環境に対する意識の変化と、これらのステークホルダーの要請の変化に対し、企業は対話を通じて要請を包摂して価値を協創していくことで、サステナブルな資本主義実現を達成できるとした。

そのカギとなるのが、社会課題を可視化して全体および部分的な最適化を両立させ、多様な価値を創造するデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。経団連は、このDXに多様な人々の想像・創造力をかけ合わせて課題解決・価値創造を図る創造社会「Society 5.0」を、サステナブルな資本主義において重要な概念として捉える。

グリーン成長

経団連はグリーン成長に必要なこととして、以下を挙げている。

  • イノベーションの加速:新政権が掲げた2050年温室効果ガス実質排出ゼロ達成に向け、蓄電池や水素、CCUSなどのイノベーションを国家プロジェクトとして強力に推進する。「チャレンジ・ゼロ」などを活用しつつ、官民連携のもとでイノベーションを支援する
  • 競争力ある再生可能エネルギーへの支援重点化:屋根置き太陽光や大規模洋上風力の拡大を目指し、インフラやサプライチェーンを整備する
  • 電化率の向上:データセンターなどの大規模電力需要を確保する。家庭やオフィスビル、および自家用車などの電化を推進する
  • グリーン成長国家連合の形成:グリーン成長を目指す国家連合の形成を主導する。国際社会と実効あるサステナブル・ファイナンスのあり方を模索しながら、アジア各国に日本のクリーン技術の導入を目指す

なお、「グリーン成長」の項目には、脱炭素社会実現にあたって原子力は欠かせない手段であると位置づけられた。安全性が確認され、地元の理解を得られた発電所の稼働を推進し、新型炉を開発したい意向が明記されている。

経団連は、経済界が同戦略を遂行するにあたって規制制度や行政改革が不可欠で、政府はこれらの重要分野に投資を集中させるワイズスペンディングによって経済の回復・成長を実現し、財政健全化につなげるべきだとしている。そして、経済界は同成長戦略に掲げたアクションを、いますぐできることから着実に実行していくことを宣言した。

【参照サイト】。新成長戦略