経済産業省は5月22日、今後の循環経済政策が目指すべき基本的な方向性を取りまとめた「循環経済ビジョン 2020」を公表した。国内外の資源循環の現状と課題についての調査・分析から、循環経済への転換の必要性に加え、デジタル技術の発展と市場・社会からの環境配慮要請の高まりを新たなドライバーとして、これまでの廃棄物・環境対策としての3R(リデュース、リユース、リサイクル)から「環境と成長の好循環」につなげる新たなビジネスモデルへの転換を促す内容となっている。
日本では約20年前に「1999年循環経済ビジョン」を策定、2000年代初頭から3Rに取り組み、循環型社会形成推進基本法(2000年)、資源有効利⽤促進法(2001年)といった関連法律も相次いで施行。廃棄物の最終処分量の削減やリサイクル率の向上などの成果を上げてきた。一方でこの間、国内外の経済社会情勢は大きく変化、大量生産・大量消費・大量廃棄型の“線形経済”から“循環経済”への移行が世界的に求められているとして、ビジョンの刷新に至った。「循環経済ビジョン研究会」が2018年から検討を進めてきた。
内容は①1999年循環経済ビジョンとその成果、②グローバルな経済社会の変化、③諸外国における循環経済政策と国際会議における議論、④循環経済への転換の必要性、⑤我が国としての対応の方向性の5章約50ページ。このうち、グローバルな経済社会の変化に最も多くページを割き、人口の増加と経済の拡大、資源需要の増加と安定供給リスクの増大、廃棄物排出量の増大とアジア諸国の廃棄物輸入規制、気候変動や海洋プラスチックごみ問題、さらにESG投資の拡大、デジタル技術の発展などについて解説する。
そのうえで、日本企業がこれまで3Rの取組の中で培ってきた強みをグローバル市場で発揮し、中長期的な産業競争力強化につなげるべく①循環性の高いビジネスモデルへの転換、②市場・社会からの適正な評価の獲得、③レジリエントな循環システムの早期構築の3つの観点から、循環経済政策の目指すべき基本的な方向性を提示している。
新ビジョンは冒頭で「循環型の経済活動へと転換することは、地球環境の保全という公益(社会的な利益)をもたらす活動を通じ、市場で付加価値として評価され私益を生み出すことにつながるものであり、『環境と成長の好循環』を産み出す新たなフロンティア」と明快に打ち出す。
一方、「循環経済を実現し、ステークホルダー全体の利益を生み出すためには、業種を超えたパートナーシップが一層重要。日本は近江商人の『売り手よし、買い手よし、世間よし』という『三方よし』の経営理念が浸透するなどパートナーシップを重視した企業活動を展開してきた。三方よしを、「企業よし、消費者よし、環境よし」と読み替え、関係者が連携して循環経済を進めることが、日本らしい循環経済の在り方なのではないか。そしてこれが新たなる資本主義経済を作り出して行くのではないか」とし、日本が独自の手法で循環経済をリードできる可能性にも言及している。