経済産業省はこのほど、「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定した。同戦略の実現に向け、産官学サーキュラーエコノミーパートナーシップを今夏に立ち上げるとともに、動静脈連携の加速に向けた制度整備の検討を今夏に開始する。
同省は、2020年5月に策定した循環経済ビジョン2020を踏まえ、国内の資源循環システムの自律化・強靱化と国際競争力獲得に向けて、技術と規則のイノベーション促進を目指している。同政策を具体化するべく、経済産業省は2022年10月、成長志向型の資源自律経済デザイン研究会と資源自律経済戦略企画室を立ち上げ、2022年度中の戦略策定を目標としていた。
2023年2月、経済産業省は「資源自律経済戦略」骨子案を公開し、3月27日に「成長志向型の資源自律経済戦略」案を発表。同月31日、「成長志向型の資源自律経済戦略」の策定に至った。
同戦略の実現に向け、以下の行動を実施する。
1.「産官学サーキュラーエコノミーパトナーシップ」を今夏(6~7月頃)立ち上げる
- 自治体、大学、企業・業界団体、関係機関・関係団体などが参画するパートナーシップを立ち上げる
- ビジョン・ロードマップを策定する。サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォーム構築について検討する。その他の個別課題(標準化、マーケティング、国際連携、技術検討など)についても順次検討する
2.動静脈連携の加速に向け、制度を今夏(6~7月頃)整備する
- 「GX実現に向けた基本方針(令和5年2月閣議決定)」を踏まえ、動静脈連携による資源循環を加速する。中長期的に、レジリエントな資源循環市場の創出を目指し、「資源循環経済小委員会」を立ち上げ、3R関連法制の拡充・強化の検討を開始する
- 資源有効利用促進法(3R法)の対象品目の追加、循環配慮設計の拡充・実効化、表示制度の適正化、リコマース市場の整備、効率的回収の強化について検討する
サーキュラーエコノミー関連市場は、国内外で今後大幅に拡大が見込まれており、世界全体では2030年に4.5兆ドル、2050年に25兆ドルに拡大するとアクセンチュアは予測している。日本国内では、2020年に50兆円だったサーキュラーエコノミー関連市場を2030年に80兆円、2050年に120兆円に拡大することを目指している。
廃棄物問題や気候変動問題などの環境制約に加え、世界的な資源需要と地政学的なリスクの高まりといった資源制約の観点から、世界においてサーキュラーエコノミー移行が喫緊の課題となっていると経済産業省はみている。同戦略と戦略実現に向けた取り組みにより、日本の組織が信頼できるパートナーと協働し、サーキュラーエコノミー移行が加速していくことが期待される。
4章から成る同戦略の概要は、以下のとおり。
1章 リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの非連続なトランジション
- 世界が直面する課題と目指すべき方向性
- サーキュラーエコノミーの目的:デカップリングの実現とウェルビーイングの向上
- 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた問題意識
2章 国際動向
3章 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた今後の方向性
- サーキュラーエコノミーを通じた「新しい成長」
- 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた政策対応のフレームワーク
4章 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた総合パッケージ
- 成長志向型の資源自律経済の確立のトランスミッション:3つのギア
最終章では、日本におけるサーキュラーエコノミーの市場化を加速し、国際競争力を獲得するべく、3つのギアを示した。ギアⅠの競争環境整備(規制・規則)では、4R(Reduce、Reuse、Recycle、Renewable)政策の深掘りとして業界ごとのライフサイクルアプローチを提示。二次市場の製品安全強化や、クリティカルミネラルの確保など海外との連携強化も挙げた。ギアⅡのサーキュラーエコノミーツールキット(政策支援)では、サーキュラーエコノミー投資支援、DX化支援、標準化支援、スタートアップ・ベンチャー支援を提示した。ギアⅢのサーキュラーエコノミーパートナーシップ(産官学連携)では、産(野心的な自主的目標の設定と取り組み・進捗管理)、官(競争環境整備と目標の野心度に応じたサーキュラーエコノミーツールキットの傾斜的配分)、協調領域の課題解決、国民運動・教育・経営方針などサーキュラーエコノミーのブランディングを挙げている。
【プレスリリース】「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました
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