株式会社大林組は11月26日、解体工事で発生する鉄スクラップを新設工事にて循環利用する水平リサイクルフローの構築に着手したと発表した。この取り組みは、建材商社、金属リサイクル事業者、電炉鉄鋼メーカーと連携して行われる。解体現場で発生した鉄スクラップを電炉鋼材として再生し、再び建設現場で利用するまでの輸送ルートと事業者選定を最適化することを目的としている。
取り組みの第一弾として、東京都港区北青山三丁目での解体工事で発生する約1,000トンの鉄スクラップを、水平リサイクルフローを適用し大林組の新築工事で活用する計画だ。新しい高炉鋼材を用いる場合と比較して、製造時のCO2排出量を約60%削減できるとされる。
背景には、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、建設業界では建設物のライフサイクル全体でのCO2排出量であるホールライフカーボンの削減が重要視されていることがある。特に、建設資材の製造段階や施工段階で発生するアップフロントカーボンの削減は、建設会社による貢献度が高いとされており、リユースやリサイクル建材の積極的な活用が鍵だとされている。
鋼材は製造過程で多くのCO2を排出するため、大林組は2024年6月から鉄骨構造部材のリユース設計手法や技術開発を進めてきた。一方で、鉄スクラップの電炉鋼材への再生利用は従来も行われていたものの、建設用鋼材として再利用されるとは限らなかった。
今回の取り組みでは、輸送時のCO2排出量削減を図るとともに、鋼材のトレーサビリティの確立を目指す。輸送ルートと事業者選定を最適化するほか、従来は困難だった鋼材のトレーサビリティ情報を提供できる仕組みを構築することが狙いである。
2024年度中には首都圏および関西地域の建設現場で水平リサイクルフローを適用し、地域特性を考慮した輸送フローのノウハウを蓄積する方針だ。2025年には全国規模での展開を目指し、建材リサイクルやリユース、資源活用プロセスの確立を進める。こうした取り組みを通し、同社は脱炭素社会および循環型経済の実現に寄与する意向である。
【プレスリリース】建設現場で発生する鉄スクラップの水平リサイクルフローを構築し、アップフロントカーボン削減を推進
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