三菱電機は11月12日、プラスチックのケミカルリサイクルに使用されるマイクロ波加熱において、分解効率を同社によると世界最高レベルとなる従来比約5倍に高める技術を開発した。加熱効率の高い周波数を選定し、プラスチックと触媒の混合比を最適化することで実現した。併せて、大きな開口部を持つ分解装置の実用化を可能にする電波漏洩抑圧技術も確立し、ケミカルリサイクルの低コスト化と社会実装を目指す。

ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを加熱分解して化学原料(モノマーや油など)に戻し、新たなプラスチックを製造するリサイクル手法だ。プラスチックの品質を維持したまま再生できるため、資源循環の実現に向けた重要技術と位置づけられている。その加熱手法の一つであるマイクロ波加熱は、プラスチックと触媒の混合物にマイクロ波を照射して分解するものだ。従来は、産業・科学・医療用途に割り当てられ、ライセンスなしで利用できる「ISM帯」(2.45GHzなど)のマイクロ波が主に使用されてきた。しかし、ISM帯は加熱に時間がかかり、大量の電力を消費するためコストが高いという課題があった。また、従来主流だったバッチ式では、電波漏洩を防ぐために加熱時に装置の開口部を閉じる必要があり、プラスチックを連続的に投入できず、分解効率に限界があった。

今回、三菱電機はまず、マイクロ波の周波数によって触媒の加熱効率が異なる特性を測定し、ISM帯よりも加熱効率が高い10GHz程度の高周波数を選定した。これにより昇温速度が速まり、加熱時間を短縮できる。さらに、実験的検証に基づきプラスチックと触媒の混合比を最適化することで、分解効率を最大化する技術を確立した。同社の比較によると、これらの技術により分解効率は従来のISM帯を用いた方式の約5倍に向上したという。

従来のISM帯周波数と今回選定した周波数との比較

加えて、装置の開口部からマイクロ波が漏洩するのを防ぐ新技術も開発した。装置内に設置した複数の共振器が「電波の壁」として機能し、開口部が開いた状態でも電波漏洩を抑圧する。これにより、プラスチックの連続投入が可能な分解装置の実現が見込めるようになり、処理能力の向上とさらなる低コスト化が期待される。

同社は今後、今回開発した技術と、マイクロ波の集中照射と均一加熱を実現する制御技術を組み合わせ、プラスチックリサイクルのさらなる効率化に取り組む。実証研究を進め、2030年までの製品化を目指すとしている。また、廃棄物処理やリサイクルに関わる企業とのパートナーシップを推進し、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に貢献する方針だ。

なお、本技術の詳細は、2025年11月26日から28日までパシフィコ横浜で開催される「マイクロウェーブ展 2025(MWE2025)」で出展される予定だ。

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