三菱電機株式会社は11月21日、プラスチックのケミカルリサイクルにおいて、効率的な加熱処理を実現するマイクロ波加熱制御技術を開発したと発表した。この技術により、マイクロ波を特定領域へ集中照射し、その領域内で均一に加熱することが可能となる。従来の技術と比較し、加熱時間が約3分の1に短縮され、効率的に再生原料を取り出すことができるとしている。

プラスチックリサイクルには、主にマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3種類があり、日本では燃焼による熱利用を行うサーマルリサイクルが主流だ。サーキュラーエコノミーの観点から、プラスチックを原料として再利用するマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの重要性が高まっているものの、課題もあった。

マテリアルリサイクルは選別工程が多く、リサイクル後に強度や色調など品質が低下し用途が限られてしまうのだ。またケミカルリサイクルは、異素材が混在するプラスチックの処理が可能で、品質を維持できるが、加工には大量の電力を要する。

従来のケミカルリサイクルでは、電気炉を用いた外部加熱方式が主流だが、炉全体を加熱する必要があり、加熱効率が低いという課題があった。また、マイクロ波加熱方式では加熱効率は向上するものの、加熱ムラが発生するという問題があった。

ケミカルリサイクルの従来方式との比較

今回開発された制御技術では、金属で囲まれた狭い空間におけるマイクロ波の強さと広がりを調整し、特定領域への集中照射と均一加熱を実現した。この結果、加熱ムラを解消し、従来の外部加熱方式やマイクロ波加熱方式に比べて効率的な加熱が可能となったという。また、独自構造の電磁波吸収板の採用により、吸収板の経年劣化を抑制し、反射波の影響を低減する回路の開発によって消費電力の削減も見込まれるという。

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(※画像の出典:三菱電機株式会社)