三菱化工機株式会社は7月3日、自社の環境・エネルギー技術とパートナー企業の知見を融合させ、循環型社会の実現に貢献するビジネスモデルの創出を目指す新プロジェクト「MKK PROJECT by 三菱化工機」を発足した。川崎市を拠点に、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)や上智大学など多様なパートナーと連携し、水素やバイオマスを活用した地域循環型エネルギーシステムの構築と社会実装に挑む。

プロジェクト発足の背景には、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、個々の企業による技術開発だけでは限界があるという課題認識がある。同社は、現状の水素やバイオマスによるエネルギーシステムの供給が、作り手の論理を優先する「プロダクトアウト」に偏りがちで、需要創出が追いついていないと指摘。サプライチェーンも部分的な最適化に留まり、事業全体の収益性が低いことが社会実装を阻む一因となっていると分析する。

この状況を打開するため、MKKプロジェクトでは、顧客や市場の需要を起点とする「マーケットイン」の発想に基づき事業全体を再構築する。未来のあるべき姿から逆算して現在の戦略を考える「バックキャスト」の手法を用い、技術開発と市場開拓を一体で進めるビジネスデザインを重視する。

同社が90年にわたり培ってきた環境対応技術を基盤に、「スポーツ&カルチャー」「環境・災害対策」「食・医療」「学び・人材育成」「地域創生」の5分野で事業創出を目指す。プロジェクトの拠点となる川崎市は、日本の高度経済成長を支えた京浜工業地帯の中核でありながら、その過程で深刻な公害を経験し、市民や企業、行政が一体となって環境再生に取り組んできた歴史を持つ。同社は、こうした歴史的背景から生まれる「場のエネルギー」と、地域に集う人々や企業が持つエネルギーが融合する川崎を「Energy創発特区」と位置づけている。

2025年度の具体的な取り組みとして、「スポーツ&カルチャー」分野では、DeNAが京浜急行電鉄株式会社と進める「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」において、環境対応型アリーナの建設に向けた実証実験などの協業を進める。また、「食・医療」「学び・人材育成」分野では、上智大学と「フード&エネルギーのサーキュラーエコノミー化」をテーマにした社会連携講座を今秋に開設する予定だ。

三菱化工機によると、循環型クリーンエネルギー技術とビジネスデザインを統合し、地域循環型エネルギーシステムの開発と新たなビジネスモデル構築を目指す本プロジェクトは、業界初の試みだという。

【プレスリリース】業界初※1、川崎発、循環型クリーンエネルギー技術×ビジネスデザインで世界を循環型社会に変えるプロジェクト 「MKK PROJECT by 三菱化工機」が本日発足
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