スイス食品大手のネスレは9月7日、持続可能な容器包装の新しいプロジェクトを発表した。米国で食品用の再生プラスチックを増産するための3,000万米ドルの投資、チリで詰め替えできるペットフードのシステム、そして、フランスでマギーブイヨン用にリサイクル可能な包装紙を初めて生産する。同社は、製品の容器包装材料を2025年までに100%再生可能あるいは再利用可能にするコミットメントを2018 年に発表しており、ネスレの総重量の87%、プラスチックの総重量の66%は、すでにリサイクルあるいは再利用可能な容器包装を使用している。
ネスレはこれまで、2019年1月から次の3つの柱を通じて、廃プラスチック問題に取り組んできた。
1. 新しいパッケージの開発
- さまざまな商品で、紙パッケージへ移行を進めている。例えば、ネスレ日本(本社:兵庫県神戸市)は2019年9月、チョコレート菓子「キットカット」の大袋タイプ5品の外袋を、プラスチックから紙パッケージに変更。これにより、年間約380トンのプラスチックが削減される見込みだ。英国でも、チョコレート菓子スマーティーズに、リサイクル可能な包装紙を利用している。
- ガーバーとピルッティのベビーフードは、リサイクル価値を高めるために単一素材のパウチを使用している。
- 飲料水事業では2019年以降、米国の静水で使用されるrPET(再生プラスチック)の量を倍増させて16.5%にしている。
2. 廃棄物のない未来の形成
- ネスレ・フィリピンは今年8月、プラスチック中立を実現した。販売した製品が含む量と同量のプラスチックを回収して処理し、プラスチックが埋立地や海洋に流出するのを防いだ。
- インドネシアでは、イニシアティブProject STOPとともに、持続可能な廃棄物管理システムを構築し、海洋プラスチック汚染削減に貢献している。
- オーストラリアでは、軟質プラスチックの回収・選別・処理の試験運用に着手した。
- スイスでは、スタートアップ企業MIWAとの協働を通じて、ペットケア製品とインスタントコーヒー製品の再利用可能な詰め替えを拡大している。
- 拡大生産者責任スキームの設計と実装を提唱。同社の全プラスチック使用量の50%を占める20か国を特定し、リサイクルと廃棄物管理インフラの構築を支援する。
3. 新しい行動の推進
- 行動変容を加速させるために、290,000人を超える従業員を対象に持続可能な容器包装に関する研修プログラムを展開している。
- イタリアでは、消費者が容器包装廃棄物を適切に処分できるようデジタルプラットフォームを導入。
- ネスカフェドルチェグストは、ドイツとメキシコでリサイクルを促進する消費者教育キャンペーンを開始。
- アルゼンチンでは、学校プログラムを通じて、消費者行動の変化を推進している。
- Algramo(チリ)・MIWA(スイス)・Loop(フランス)の詰め替え・再利用容器包装の試みは、新しい購買体験を提供している。
このほか、9月30日に予定されるネスレ共有価値の創造(CSV)賞については、非営利組織のアショカ財団と協力して、代替配送システムやプラスチック廃棄物におけるイノベーションに対し25万スイスフランを贈る。
食品業界で初めて設立されたパッケージング研究所は、環境に配慮された容器包装材料の開発を推進する。同研究所の最先端の容器包装研究に従事する約50人の科学者は、詰め替え、再利用可能なシステム、原材料の簡素化、高性能バリア紙などの調査を行う。また、ネスレのグローバルR&Dネットワークの180人以上の容器包装の専門家、研究機関、スタートアップ企業、サプライヤーとも協働する。
【プレスリリース】Nestlé intensifies its sustainable packaging transformation journey
【プレスリリース】「キットカット」の外袋を、紙パッケージに変更 主力の大袋タイプ5品を、9月下旬出荷分より全量切り替え
Circular Economy Hub Editorial Team
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