新型コロナウイルス感染症の収束の兆しが見えないなか、「コロナ後(ポストコロナ)」の経済や社会を主導しようとする動きが本格化している。

Circular Economy Hubでも取り上げたヨーロッパプラスチック産業団体のEuPC(European Plastic Converters)によるプラスチック指令実行延期の要請やスコットランド政府のサーキュラーエコノミー成立先送りなど、サーキュラーエコノミーへの移行を一時中断する動きが相次ぐ。緊急的措置として、人命を優先する考えに沿うものである。

一方、これを契機にサステナビリティの促進を図るべきだとする議論も起こっている。特に欧州では、すでに公表している欧州グリーンディールに即した形での経済対策を要求する声明を発表。グリーンリカバリー(Green Recovery)という12ヶ国の環境大臣・39のグローバル企業のCEO・団体・シンクタンクの連合による協働イニシアチブを発足するなど、取り組みがすでに始まっている。

サーキュラーエコノミー移行の先頭を走っているオランダも例外ではない。オランダの8大学の170人の社会学者や環境科学者は、ポストコロナは抜本的な改革を実行する好機だと訴えるマニフェストを発表した。マニフェストは、貧困国の債務免除やジョブシェアリングなどの政策とともに、サステナビリティへの取り組みの加速を要求。これらの政策は同時に将来の新たな感染症に備えることになるとしている。

サーキュラーエコノミー関連では、地産地消を含む循環型農業への転換・食肉消費量の抑制・気候変動対策の加速・持続可能な消費の促進を提言。気候変動対策に関しては、経済活動の自粛によるCO2排出が抑えられている現象は一時的であるとし、何もしなければ元の状態に戻ると警鐘を鳴らしている。

このマニフェストに対する賛同が得られている一方、コロナ危機の政治利用だとする懐疑派の声や財源確保の問題を指摘する意見がある。いずれにしても、世界中でポストコロナのあるべき姿について議論が巻き起こっている。Circular Economy Hubでは新型コロナ危機がサーキュラーエコノミーへの移行にどう影響を及ぼすのか引き続き注視していく。

【参考文献】Manifest van 170 wetenschappers: het is een blunder als we niet groener uit de coronacrisis komen

【参考文献】Use crisis to make post corona society fairer and sustainable, say scientists