PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)はこのほど、報告書「ASEANのサステナブルな成長を目指して サーキュラーエコノミーに関する調査レポート2024」を刊行した。

ASEANにおけるサーキュラーエコノミー移行に貢献するべく、「サーキュラーフレームワーク」について解説するとともに、同地域のサーキュラーエコノミーの現状と課題を提示した。

2022年11月、PwC Japanが発起人となり、企業経営者の意見交換の場として「エグゼクティブ・サステナビリティ・フォーラム」が発足。フォーラムは同報告書をもとに、ASEANのサステナブル成長実現のための共同声明を2024年1月に発表した。

サーキュラーフレームワークは、産業の多様なステークホルダーがサーキュラーエコノミーについて共通理解を持つことを目指し、PwC Japanが作成。従来のリニア型経済による課題を概説し、環境課題解決と経済の両立を図る方策としてサーキュラーエコノミーを定義するとともに、次の3つのサーキュラリティの追求の必要性を示した。

  • マテリアルサーキュラリティ:鉱物・プラスチックの循環による資源の採取・拡散の極小化の実現
  • バイオサーキュラリティ:窒素の採取・拡散の極小化を中心とした持続可能な農業の実現
  • カーボンサーキュラリティ:炭素の採取・拡散の極小化によるカーボンニュートラルの実現

ASEANにおけるサーキュラーエコノミーの現状と課題については、下記のとおりサーキュラリティごとに明示し、ごみ資源の循環がサステナビリティおよび事業の観点からも重要だと強調した。

  • マテリアルサーキュラリティ:ASEANは多くの資源を使用し、ごみを輸入している。域内のマテリアル需要・廃棄も増えており、廃棄物処理インフラの不整備により廃棄物を循環利用できていない
  • バイオサーキュラリティ:食料・農産物の需要が増加し、窒素肥料の大量散布による土壌汚染・劣化や森林破壊が進んでいる。適切な農業の普及が必要だ
  • カーボンサーキュラリティ:ASEANは多くのエネルギーを使用し、温室効果ガスを多く排出している。域内のエネルギー需要増加が見込まれるが、エネルギー移行は容易ではない。マテリアルサーキュラリティやバイオサーキュラリティへの取り組みを進めることで、カーボンサーキュラリティに貢献できる領域は広い

サーキュラーモデルの推進によって得られる事業機会として、世界経済フォーラム(WEF)の推計も紹介した。2030年にASEANでサーキュラーエコノミー移行によって創出される可能があるネイチャーポジティブな事業機会は、推定4200億ドル。内訳は食料・土地・海洋の利用が1480億ドル、エネルギー・採取活動で1460億ドル、インフラ・建築環境で1250億ドルとなっている。

報告書は、サーキュラーエコノミー移行推進は環境と社会への負荷低減と事業成長を達成する最も有効なアプローチであると強調。日本企業にとって、ASEANを生産基地や消費地として捉えるだけでなく、ASEAN諸国の環境・社会課題の解決に貢献しながら共に成長するパートナーとなることが求められていると結論づけた。

ASEANの現状と課題を明示した同報告書をはじめとする取り組みが、地域の包括的なサーキュラーエコノミーへの移行と事業機会の創造に貢献していくことが期待される。

【参照レポート】サーキュラーエコノミーに関する調査レポート2024 ASEANのサステナブルな成長を目指して
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