慶應義塾大学SFC研究所は4月8日、「デジタル駆動超資源循環参加型社会共創コンソーシアム」が建設物の資源循環性能を簡易に評価する手法を開発したと発表した。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」による、「リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』共創拠点」というプロジェクトの一環である。

本手法は、建築物の設計初期段階から資源循環性能を可視化させることが特徴で、建材や設備の再利用・再資源化の度合い、長寿命化など50項目を5Rの観点から評価する。5Rには、従来の3R(Reduce、Reuse、Recycle)に加え、Resilience(レジリエンス)とRemountability(再生可能性)が含まれる。評価結果は「サーキュラー設計率」として数値化され、建設時の資源削減(インフロー)と解体後の再資源化(アウトフロー)の貢献度が可視化される。

また、設計者がチェックリスト形式で項目を選ぶことで評価する仕組みとし、基本計画段階から意思決定に反映できるようにしたという。さらに実施設計フェーズでは、BIM(Building Information Modeling)を活用した詳細評価にも対応する。

このプロジェクトは、オランダの建設資源循環評価プラットフォーム「Madasterシステム」を参考に取り組まれてきた。Madasterは、建材・設備の環境インパクトを定量化するデータベースを基盤とし、ライフサイクル全体での資源循環性とCO2排出量の管理を行うシステムである。

今後プロジェクトは、本手法に基づく設計による仮設建築を用い、解体後の部材の転用・二次流通の実証実験を地域で実施する予定だ。建築を「しげんバンク」と位置付け、地域住民や子どもたちがサーキュラーエコノミーを学ぶ教材としての活用も視野に入れている。

鎌倉市や関係企業と協働しながら、循環型まちづくりの構築を進めていく方針だ。

【プレスリリース】慶應義塾大学が率いる「リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』共創拠点」プロジェクトにおいて、建設物の資源循環性能の簡易評価手法を開発
【関連記事】デジタルとマテリアルをつなぐサーキュラーデザイン。大成建設が描く、日本版・循環型建設の未来
【関連記事】サーキュラースタートアップの「聖地」を目指す。鎌倉サーキュラーアワード開催の背景とは。実行委員長らに聞く
【関連記事】循環する未来を築く「しげんバンク」。日蘭交流プログラム2024レポート【後編】