芝浦工業大学と株式会社ケー・エフ・シーは10月6日、微生物を利用して廃太陽光パネルからレアメタル「セレン」を浄化・回収し、再資源化する技術の開発に世界で初めて成功したと発表した。将来深刻化が懸念される太陽光パネルの大量廃棄問題に対し、環境負荷の低い生物学的プロセスで廃棄物を資源に変える画期的な取り組みだ。

本技術は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)を主成分とする「CIGS(Cu、In、Ga、Se)系太陽電池」の使用済みパネルを対象とする。まず、パネルからCIGSを溶解させ、中和処理を施す。その後、セレン酸を還元する能力を持つ微生物「Stutzerimonas stutzeri NT-I」と反応させることで、有害なセレン化合物を無害化すると同時に、固形のセレンとして回収する。この一連のプロセスは、微生物などの生物機能を利用して金属の精錬や浄化を行う「メタルバイオテクノロジー」に基づくものだ。

太陽光発電設備の導入は2000年以降拡大しており、その耐用年数から2030年代以降に大量の廃パネルが発生すると予測されている。環境省の推計では、2030年代後半には年間50万トンから80万トンに達する見込みだ。ガラスや金属、樹脂が強固に接着された構造は処理を困難にするだけでなく、一部の化合物系パネルにはセレンやカドミウム、ヒ素といった有害物質が含まれており、不適切な処理による環境汚染が懸念されている。

一方で、セレンは半導体材料などに用いられる重要なレアメタルでもある。今回の技術開発は、環境汚染のリスクを低減する「浄化」と、希少な資源を国内で循環させる「再資源化」を同時に実現する点で大きな意義を持つ。
この成果は、両者が2023年に開設した「メタルバイオテクノロジー共同研究講座」から生まれたものだ。今後は、研究室レベル(ラボスケール)から実証段階(ベンチスケール)、最終的には商業プラントレベルへのスケールアップを進め、循環型社会の構築を目指す計画だ。

【プレスリリース】世界初、微生物を利用して廃太陽電池からレアメタルの回収に成功〜セレン酸還元微生物を用いて廃太陽光パネルからレアメタル「セレン」の回収再資源化を実現〜
【参照資料】太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)[PDF]
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