日本政府はこのほど、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定した。

経済産業省は、企業における人権尊重の取り組みを後押しするべく、2022年3月に「サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン検討会」を立ち上げ、ガイドライン原案を取りまとめた。同年8月に意見公募を実施し、131の団体・事業者・個人から提出された意見をもとに経済産業省が修正して策定に至った。同ガイドラインは、次の5章から構成される。「はじめに」「企業による人権尊重の取組の全体像(総論)」「人権方針(各論)」「人権DD(各論)」「救済(各論)」である。

同ガイドラインは法的拘束力は持たないが、日本で事業展開する全企業は規模や業種などにかかわらず、同ガイドラインに則って国内外におけるサプライチェーン全体の人権尊重の取り組みに最大限努めるべきであるとしている。国連指導原則(※)などの国際基準を踏まえて策定された同ガイドラインは、企業に求められる人権尊重の取り組みについて企業が理解を深め、取り組みを促進することを目的としている。人権尊重の状況に関する日本政府の見解は、以下のとおり。

現在、欧州を中心に人権尊重の取り組みを企業に義務付ける国内法の導入が進んでおり、米国では「ウイグル強制労働防止法」が施行されるなど、強制労働を理由とする輸入差止を含む人権侵害に関連する法規制が強化されている。企業が人権尊重の取り組みを進めることは、こうした法令への対応強化や、予見可能性および企業価値の向上にもつながり、企業にとって大きな意義がある。こうしたことから、同ガイドラインの最後に「海外法制の概要」として、ドイツ・英国・フランス・オランダ・EU・米国・オーストラリアの法律および指令案の詳細が記述されている。

人権尊重に関して日本政府は国連指導原則を踏まえ、2020年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」を策定・公表し、取り組みを進めてきた。同計画の一環として2021年11月に結果を公表した「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取り組み状況のアンケート調査(経済産業省と外務省が共同実施)」では、日本政府によるガイドライン策定などへの強い要望も示された。他の多くのステークホルダーからも、企業による人権尊重の取り組み促進に関して日本政府によるイニシアチブを期待する声が上がっていた。

今後も日本政府は、国家としての義務を積極的に果たしていくとしており、ガイドラインが多くの企業に周知・活用されるよう広報活動を推進するとともに、企業の取り組みを後押しする方策についても検討していく意向だ。

特に、国家などが関与して人権が侵害されている場合には、日本政府に期待される役割を果たしていくことを明らかにした。これらの日本政府と日本企業の取り組みについて、各国政府・国際機関などと協力し、積極的に海外に発信していく考えだ。

※ 国連指導原則:2011年に国連人権理事会において全会一致で支持された「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合「保護、尊重及び救済」枠組実施のために」。「ビジネスと人権」における最も重要な国際的枠組みの一つ

【プレスリリース】日本政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました
【参照資料】責任あるサプライチェーン等における 人権尊重のためのガイドライン
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