豊田合成株式会社は5月20日、廃車から回収したプラスチックを高品質な自動車部品に再生する水平リサイクル技術を実用化したと発表した。この新技術は、いその株式会社との協業により開発され、トヨタ自動車株式会社の「カムリ」向け内装部品で2024年から既に量産を開始している。欧州での環境規制強化を背景とした再生プラスチック需要の高まりに応えるものであり、脱炭素と資源循環社会の実現に貢献する。

従来、自動車の廃プラスチックは、不純物の混入などにより新材と同等の性能を得ることが難しかった。そのため、多くが焼却して熱を回収するサーマルリサイクルや、必要な性能の低い用途に再利用するダウンサイクルに留まっていた。今回開発された技術は、いその株式会社との連携による良質なリサイクル原料の確保と、豊田合成が持つ独自の材料改質技術を組み合わせることで、この課題を克服した。具体的には、廃車から回収したポリプロピレンを50%含有しても、新材と同等の性能を持つ再生プラスチックを開発し、自動車部品の品質基準での実用化を達成した。

この再生プラスチックは、耐衝撃性が求められる内装部品であるグラブボックスなどで実用化されている。豊田合成によると、廃車由来プラスチックを50%配合した再生プラスチックを、このような部品で実用化するのは世界で初めての事例だという。この技術を用いた部品生産により、CO2排出量を最大で約4割削減できる見込みであり、同じ部品への再利用、すなわち「水平リサイクル」を加速させる。

欧州委員会による使用済み自動車(ELV)規則案では、新車に対して再生プラスチックの使用が義務化される見込みだ。豊田合成は、この規制動向に対応し、中長期経営計画(2030事業計画)のもとで脱炭素をキーワードにプラスチックとゴムのリサイクルを推進している。同社は今後、自動車の意匠に関わる部位など、適用製品のさらなる拡大を目指し、再生プラスチックの改良を進めていく方針を示した。

【プレスリリース】廃車由来プラスチックの水平リサイクル技術を実用化
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