アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の環境庁(EAD)は3月10日、有害物質の発生を最小限にとどめるため、国内の使い捨てプラスチック材料削減の新政策を発表した。2021年までにプラスチックを環境から排除し、代替可能な使い捨てプラスチックおよび非プラスチック材料使用の廃止を目指すとともに、コミュニティにおけるリサイクル・リユースの文化醸成と持続可能な習慣の定着を狙う。EADは「地域初の取り組みとなる包括的なもので、EADの実施する政策の中でも重点的な要素の一つとなる」としている。

政府の経済発展加速と地域投資に取り組む「Ghadan 21」プログラムを通して、サステナビリティの向上と環境改善を目指す。政策は、環境保全事業を展開する非営利組織エミレーツネイチャーWWFをはじめ、経済開発省、12の政府機関、アブダビ国営石油会社とオーストリアのボレアリスの合弁会社Borouge、さらに含プラスチック材料を生産するアブダビにある6つの大手アウトレットや多くの民間企業が協力。2020年から21年まで、2年間にわたり官民一体で実施する。具体的な条例としては、使い捨てビニール袋の有料化導入後に利用者への無料配布を禁止するなど、環境に優しい代替手段を提供し、段階的な利用制限を促す措置が含まれている。

環境、社会、経済的にサステナブルな廃棄物管理システム構築に関するアブダビのビジョンを実現するため、政策では特に海洋廃棄物の中でも質量が最大で、その影響力が高いと使い捨てプラスチック16種類を対象に、種類ごとにふさわしい方法で対策していく。具体的には課金の対象となるビニール袋、飲料コップとふた、プラスチック製ナイフ・フォーク・スプーン、ストロー、マドラーが含まれる。 ペットボトルは、インセンティブを伴うペットボトル返却計画の導入を予定している。

2019年2月の世界政府サミットで発表されたレポートによると、UAEでは年間110億枚のビニール袋が消費されている。これは一人あたり年間1184枚の消費に相当し、世界平均の一人あたり年間307枚という数値と比較して3倍以上の量だ。EAD事務局長のシャイカ・セーラム・アル・ダハリ博士は「新政策の実施により、アブダビは、使い捨てプラスチック材料の使用を禁止し、制限措置を取っている世界127カ国以上の国々に名を連ねることになる。

また、この政策はアブダビが21年までに代替可能な使い捨てプラスチックおよび非プラスチック材料の使用削減の先駆者となるべく国際基準に基づいたものとなっている」と説明。そのうえで「私たちが人々の行動に影響を与え、効果的な廃棄物管理を通して、使い捨てプラスチックの使用を抑制する大胆な措置を講じなければ、2050年までには海に魚よりもプラスチックが多くなり、 海洋の健康だけでなく、最終的には人間の健康と世界的な食料安全保障をも脅かす」と新政策の実施に固い決意をうかがわせている。

EADは1996年に設立。大気環境、地下水、砂漠と海洋生態系の生物多様性の保護と向上に取り組んでおり、政府機関、民間部門、NGO、また地球環境機関と提携することで国際的で実効性の高い政策措置を講じている。