ヤンマー株式会社(以下、ヤンマー)は、資源循環型農業を実現する「もみ殻ガス化発電システム」の販売を2021年度に開始する予定だ。

稲作農業では、もみすり時に発生するもみ殻の処理方法としてかつて行われていた野焼きはほとんどの地域で禁止されており、国内で発生する年間約200万トンのもみ殻はたい肥などに一部利用されるものの、エネルギー源としては活用されてこなかったとしている。そこで、ヤンマーのグループ会社であるヤンマーエネルギーシステム株式会社(以下、YES)は、このもみ殻を有効活用して、燃料としてガス化することでもみ殻の処理問題を解決し、熱電併給も実現する小規模分散型のもみ殻ガス化発電システムを開発した。

資源循環型農業のイメージ(出典:ヤンマー株式会社)

YESは2019年、滋賀県彦根市の有限会社フクハラファームで同システムの共同実証実験を開始した。毎年約200トン発生するもみ殻を処理しているフクハラファームでは、発電量を15kW(年間75,000kWh)に設定し、システムは順調に稼働しているとヤンマーは発表している。

同社のもみ殻ガス化発電システムは、以下の主な長所があるとしている。

無害なガス化技術によるもみ殻の有効利用

  • 農業残さであるもみ殻は適切に処理しないと有害物質である結晶質シリカが発生するが、同社のもみ殻ガス化発電システムは特許技術により有害物質を発生せず、環境や健康に配慮してもみ殻を処理できる
  • もみ殻処理にかかる費用を削減するとともに熱電併給も可能にするため、コスト削減と省エネを実現する

資源循環型農業の実現

  • 燃焼後に発生する副産物である「くん炭」は、無害かつ肥料としての成分を含んでいることを同社が確認した
  • 保水性の改善、土壌微生物の活性化などの土壌改良効果や肥料効果のある可溶ケイ酸やカリウムを含有するなど、資源循環型の農業にも貢献する

排出される「もみ殻」(左)と、もみ殻燃焼後に発生する「くん炭」(右)(出典:ヤンマー株式会社)

ヤンマーは同システムの提案にあたり、顧客のもみ殻の処理・活用状況を確認して、円滑な導入と最適な運用を目指し、システム設計・施工・メンテナンスまで支援するとしている。

【プレスリリース】資源循環型農業を実現するもみ殻ガス化発電システムの実証を開始
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*冒頭の画像は、もみ殻ガス化発電システム(出典:ヤンマー株式会社)