ゼロウェイスト普及に取り組むNPOのZero Waste Europeはこのほど、ケミカルリサイクルの一つ「熱分解法」についての報告書を刊行した。

報告書は、独立した実証研究における情報と比較して、プラスチック由来の熱分解油の品質に関する業界の主張を評価した。報告書の概要は、以下のとおり。

産業界は、プラスチック循環に向けたソリューションとして熱分解法を促進してきたが、熱分解法はさまざまな種類のプラスチックとの非相溶性・油収量効率の低さ・汚染などの問題がある。使用済みプラスチックを再生プラスチック生産に使用するには、大量のエネルギーを消費する精製工程や、バージン石油が原料のナフサによる大幅な希釈が必要だ。希釈倍率が40倍になる場合もある。

熱分解に関する取り組みは長年実施されてきたが、こうした問題を抱えていることから、熱分解技術の拡大計画の多くは中止された。熱分解法はリサイクル困難なプラスチック廃棄物の流れを管理できる将来性のあるケミカルリサイクル技術ではなく、欧州グリーンディールの目的に沿っていない。

プラスチック廃棄物汚染を最小限に抑えるための最も賢明なソリューションは、上流での介入だと考えられている。リユースと修理を促進し市場投入される製品の量を削減することでリサイクル目標を改善することは、プラスチック製品の複雑さを軽減して汚染を減らし、より「リサイクル可能」な製品に投資することを意味する。上流での介入は、安価なプラスチックの製造と消費に基づく現在の経済構造を不安定にする可能性が大きい。これこそが、プラスチック業界が熱分解法を促進する理由だ。

熱分解技術の拡大計画の多くが中止されたことについては、ロイターも2021年に報じており、その理由を技術的・商業的問題であるとしている。

ケミカルリサイクル全般に関しては、世界的な消費財業界ネットワークのザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF)のプラスチック廃棄物行動連合が2022年に声明文を発表。ケミカルリサイクルは、プラスチック廃棄物の課題に対する最良の解決策ではないとの考えを公表した。しかし、サーマルリサイクルの割合が上昇している国では、リサイクル困難なプラスチック廃棄物のソリューションとしてケミカルリサイクルの規模を拡大することで、温室効果ガス排出量が削減される可能性が高いとしている。

【参照レポート】Leaky loop “ recycling” A technical correction on the quality of pyrolysis oil made from plastic waste
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