日本で新型コロナウイルスの影響が徐々に広がろうとしていた2020年3月、サーキュラーエコノミー(以下、CE)の情報プラットフォーム「Circular Economy Hub」が立ち上がり、縁あってニュース執筆やインタビュー取材だけでなく、オンラインセミナー運営にも参画させていただきました。
なぜ、CEなのか――。これまでも、CSRやCSVといった言葉を通じて環境に配慮した事業運営や社会貢献のあり方が語られてきましたが、CEはそれらとは全く次元が異なるものです。気候変動や資源枯渇への懸念が深刻化する中でSDGs(持続可能な開発目標)が生まれ、経済領域のメインゴールの一つでもある目標12(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)のドライバーとなるのは、サーキュラーエコノミーです。SDGs達成のカギとなるのがサーキュラーエコノミーということは、地球の存亡の命運を握るのがサーキュラーエコノミーということに他なりません。
そうであるならば、向き合わない理由はないと思ったのです。さらに言えば、単に知ったり学んだりするだけでは足りなくて、一人ひとりがビジネスや暮らしの現場で実践できるようになることを目指すべきだと思っていました(もちろん、今でもそうです)。そうした意味で、2020年9月から行ったエレン・マッカーサー財団(EMF)のオンライン学習プログラムの日本版という形でお届けした連続7回のオンラインセミナー「英国エレン・マッカーサー財団から学ぶサーキュラーエコノミー~各業界パイオニアとともに考える」は、その大きな一歩となりました。
「英国エレン・マッカーサー財団から学ぶサーキュラーエコノミー~各業界パイオニアとともに考える」
プログラム詳細URL:https://cehub.jp/news/seminar-emf-in-detail/
最終回の様子。全7回のべ約500人の読者の皆さんにご参加いただき、毎回チャット上では率直なコメントや質問で溢れました。
プログラムでは、「デザイン」「プラスチック」「都市計画」「ファッション」「食」「建築」というサーキュラーエコノミー実現のカギを握るテーマと業界を取り上げ、基本的な論点と今後の成否を左右する観点をカバーすることができました。
【サーキュラーデザイン】ゲスト:東洋製罐グループホールディングス株式会社
ガラスから缶、瓶など多岐にわたる容器づくりで持続可能なデザインによるモノづくりに取り組む東洋製罐グループホールディングス株式会社の取り組み。自動販売機併設のリサイクルボックスや塩分削減につながる容器「ソルト―フカップ」など、使う人の行動をサステナブルに変容させるデザインからのアプローチによって、環境や社会の課題を解決しながらCEの実現を目指しているとのことでした。
【プラスチックの循環化】ゲスト:ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
グローバル規模でプラスチックのサーキュラー化に取り組むユニリーバ。CEにつながる5つのアプローチ(製品デザイン/欧州でのプラ分別リサイクル推進に向けた業界横断的な取り組み/インドネシアでの行政との協業/消費者との協働/新たなビジネスモデル構築)は、非常に納得感があり、何よりCEを進めて企業価値を高める同社の意思を感じました。
【都市とサーキュラーエコノミー】ゲスト:福岡県北九州市役所
地方創生の流れもあってサステナブルな街づくりに取り組む中小規模の自治体がいくつかありますが、エレン・マッカーサー財団はCEの実現には大都市が肝であると捉えています。そこで、SDGs未来都市・北九州市からSDGs達成に向けた環境/社会/経済それぞれからのアプローチ、具体的には二次電池や再生ポリエステル、太陽光パネルといった次世代リサイクル領域で官民連携による事業化への取り組み、さらには地域でのCE推進に向けた官民連携スキームが動き出していることなどお話いただきました。
【サーキュラーファッション】ゲスト:エコアルフ(株式会社三陽商会)
三陽商会が展開するスペイン生まれのサステナブルファッションブランド「エコアルフ」の渋谷にある店舗をお借りして、オンラインとのハイブリッド開催でお送りしました。
リサイクル素材を一部の製品ラインに活用するのではなく、リサイクル素材の開発から全製品への導入までを一気通貫で行うことによって、ブランドとしての一貫性と事業採算性を確保している様子に、ファッション業界のポジティブな未来の可能性を感じました。
【食の循環化と環境再生型農業】ゲスト:NPO法人循環生活研究所
Circular Economy Hub編集部・西崎こずえからのEMFプログラムレクチャーでは、都市農業や農業生産活動を通じたカーボンオフセットといったこのテーマを考える上で押さえておくべき環境再生型農業について取り上げました。その上で、福岡市内で「半径2キロでつくる食の循環化」を目指し、市民、企業を巻き込んでのコンポストや屋上・近郊農業を進めているNPO法人循環生活研究所理事長の永田由利子さんにお話しいただきました。日本でもレジ袋が有料となった今こそ、コンポストを加速させていく必要性があることを痛感できるお話でした。
【建築・空間づくりとサーキュラーエコノミー】ゲスト:株式会社乃村工藝社
株式会社乃村工藝社より、国産材の活用、デジタルテクノロジーによる木質空間の拡大への挑戦、歴史的建造物の利活用を通じた地域活性化など、クリエイティビティとサステナビリティの両立に向けた同社の取り組みをご紹介いただきました。いずれも、この分野における可能性を感じられる取り組みで、今後への期待が高まりました。
世界を襲った新型コロナウイルスが露わにしたリニア型経済システムの限界は、CE実現への機運を高めています。2021年も国内外のサーキュラーエコノミー関連情報をお届けするとともに、海外を含めた最新動向を皆さんとともに学べる機会を提供していきますので、2021年もぜひアクセス、ご参加下さい!