歴史的な街並みや遺産、世界中から集まる人々が織りなす国際的な雰囲気、のんびりと過ごせる広大な公園……観光・ビジネス・学業・アートの街として、絶えず人々を惹きつけてきたロンドンが、今回の旅の出発地だ。
ロンドンは、世界を代表する国際金融都市であり、898万人もの人口を抱える欧州最大の都市でもある。ロンドンの人口は、2050年に1,300万人を超えるとも予測されており、増加し続ける人口と消費に対応し、持続可能なまちづくりを実現するための戦略として、「サーキュラーエコノミー」が2015年に本格的に都市の戦略として導入された。
サーキュラーエコノミーの原則を政策に取り入れてから8年が経過したいま、ロンドンはどのような「サーキュラー・シティ」になっているのだろう。そしてその活動の一部になるのは、一体どのような人々で、彼らはどんな想いを抱えて活動しているのだろう。
そうした問いを探求するため、IDEAS FOR GOOD/Circular Economy Hub編集部の欧州在住メンバーによる事業チーム「ハーチ欧州」と、サステナブルな旅を届ける株式会社ジャパングレーラインの共催で、サーキュラーエコノミー先端都市と呼ばれるロンドン・パリ・アムステルダムを巡るツアー「Beyond Circularity 2023」を開催した。世界的に注目されている経済・社会概念である「サーキュラーエコノミー」。世界に先駆けてサーキュラーエコノミーの実践を進めてきた欧州では今、どんな議論が繰り広げられているのか──そんな現地のリアルを、五感で体感した8日間の旅だ。本記事は、「Beyond Circularity 2023」のうち、ロンドンに焦点を当てていく。
今回ロンドンで訪問したのは、都市のサーキュラーエコノミーを牽引する行政機関から、テクノロジーを生かしてサーキュラーエコノミー移行を進めるスタートアップ、そして世界初のゼロウェイストレストランまで、多種多様な団体だ。その中で、ツアーの参加者とIDEAS FOR GOOD編集部は、実際に彼らがデザインするシステムやサービス、プロダクトを体験しながら、「サーキュラーエコノミー移行」の本質的な価値について考えた。移行は私たちの生活に何をもたらし、どのような景色を見せてくれるのだろう。
本記事では、Beyond Circularity 2023のロンドン編の中で編集部が見たものや感じたことを綴っていく。この旅の視点が、皆さんの活動のインスピレーションとなれば幸いだ。
目次
第一部:環境と社会的公正のために、デザインとテクノロジーを使う
イギリスのEU離脱の影響はあるものの、ロンドンは今でもヨーロッパの中でデザインとテクノロジーの分野を牽引する街として知られる。最近では、気候テックと呼ばれる、CO2排出量の削減または地球温暖化の影響への対処に焦点を当てた技術、およびその開発に取り組む企業が増えており、とりわけスタートアップの活躍が目立つ。まずは今回の訪問先の中でも、デザインやテクノロジーを駆使して、サステナブルビジネスを展開する企業を紹介したい。
イギリスの気候テックの先駆。食べられる包装をつくった「Notpla」
「Notpla(ノットプラ)」は、環境に優しいパッケージを開発する企業だ。彼らの主な製品は「Ooho(オーホー)」という名前の水溶性で食べられるカプセルであり、プラスチックボトルの代わりに水や他の飲料を包むことができる。Oohoは海藻由来の自然な材料から作られ、利用後は短期間で生分解することが可能だ。
Oohoのパッケージに包まれた、オレンジマンゴージュース。実際に食べて(飲んで)みると…美味しい!パッケージは無味だが、ジュースを飲み干したあとも、グミのような食感が残る。
Notplaのプレゼンテーションで印象的だったのは、彼らのマーケティング戦略だ。彼らは「プラスチックが一瞬で使い捨てられる」状況に焦点を当て、そのソリューションを提供している。マラソンの給水や飲料試飲など、すぐに使い捨てられるプラスチック製品に代わる選択肢を作り出しているのだ。彼らの目標は、世の中の全てのプラスチックを置き換えることではない。
Oohoのような新しい商品を世の中に送り出すことについて、NotplaのSamaraさんはこのように語った。「食べられる包装を口に含むことに関して、一部の人々は保守的な反応をするだろうと思っていました。そこで私たちはまず最も抵抗があるであろう高齢の人々にOohoを食べてもらいました。最初は抵抗がある様子でしたが、反応は悪いものではありませんでした。さらにロンドン・マラソンで給水所に設置したり、会議室に置いてみたりすると、参加者の間で会話が広がることが多いです。サステナビリティの話もしやすくなります」
さらに、オフィス訪問では彼らの仲間である「ミミズ」の家が紹介された。この家に住むミミズたちは、Notplaが本当に自然に好まれる素材なのかを実験するための存在だ。ミミズの家にペットボトル、ダンボール、みかんの皮、そしてNotplaの素材を置く。するとミミズはなんとみかんの皮よりも先にNotplaの素材を完食したという。Notplaはこのように理論上、土の中に放置されたとしても、虫が食べられる素材であり、海に放置されたとしても自然に溶けていく。そしてそのスピードが速いのが特徴となっている。
ミミズが住む家。この日は顔を見せてくれなかった。「彼らはシャイだからね」とNotplaメンバーのサマラさん(右)
▶︎参考記事:コーヒーバッグごと「飲む」時代が来るか。プラ包装の代わりになる“海藻”包装、開発中
環境負荷の低いWebページをつくる「Wholegrain Digital」
「Wholegrain Digital(ホールグレイン・デジタル)」は、サステナブル・ウェブ・デザインを提供するデジタル企業だ。ロンドンに拠点を置き、クライアントに対して効率的でエコフレンドリーなウェブソリューションを提供している。
プレゼンテーション中の様子
全世界のインターネット業界のカーボン排出量は、なんとイギリス全国の約2倍。航空業界のカーボン排出量にも引けを取らないと言われている。「サーキュラーエコノミー」「サーキュラーデザイン」というと、物理的なモノを想像しがちだが、目に見えにくいウェブの業界こそ、サステナブル・トランスフォーメーションが急務なのだ。
Wholegrain Digitalは、クライアントに対してサステナブルなウェブサイトを提供することを主な業務とする。ビジネス開発を担当するGaryさんは「大切なのは、クライアントと一緒に旅をすることです」と語る。「例えば、サイトをサステナブルにするのに、使用する画像の画質を落とさなければいけない。けどクライアントは、高画質の画像や動画を使いたいと言っている。ここから本当の意味での議論が始まります。私たちは単に美しさや好みだけではなく、そもそもサステナブル・ウェブ・デザインがどんなものかを見てもらい、クライアントとともに学んでいく時間を大切にしています」
さらに彼らは、誰もがその問題に触れられるように、Website Carbon Calculatorを制作した。サイトのURLを入れると、そのサイトが出す環境負荷が明示されるようになっている。ウェブの環境負荷はそもそも計測するための数式が複雑であり、さらにサイトのデザインだけではなく使用するサーバーから閲覧するデバイスの影響まで幅広く受けるため、個人で算出することが難しいという。そのため、気軽に計測できるツールができたことが一つの大きな成果だ。
当日Wholegrain Digitalからディスカッションに参加してくれたのは3名。彼らが語るビジネスへの熱い想いや、ジョークを交えて笑顔でアイコンタクトする様子が印象的だった。実は3名のうち1名は、チームコーチと言われるメンバーで、「メンバー全員がモチベーション高くビジネスに関われているか」「心理的な問題はないか」などを聞き出し、チームのイベントなども開催している。
チームコーチのChrisさん
環境や社会に良いモノを提供することと、メンバー自身がそれらを本当に良いと思うかは別の話だ。Wholegrain Digitalのメンバーが醸成する「良い雰囲気」は、後者も考えられているからこそのものなのかもしれない。
▶︎参考記事:英・Wholegrain Digitalに聞く。IT企業は本当の意味でサステナブルになれるのか?
技術を駆使したサーキュラーファッションの展示場「Fabrica X」
「The Mills Fabrica(ザ・ミルズ・ファブリカ)」は、テキスタイル業界のイノベーションを推進するビジネスプラットフォームおよびスタートアップアクセラレーター。香港に本拠地を置き、現在ロンドンにも進出している。ロンドンでは、サステナブルな「マテリアル」の企業を多く支援しているのが特徴だ。
The Mills Fabricaのジェニファーさん
The Mills Fabricaのアクセラレータープログラムに参加していたり、オフィスに入居していたりする企業の作品を実際に手に取れるのが「Fabrica X」という展示場だ。展示されているのは、色素を生成、沈着、固定するための生物学的なプロセスを開発したバイオテクノロジー企業「Colorifix」の技術や、完全バイオ素材でできたパフ素材(ダウンコートの中身)を作る「BioPuff」など。一部の商品は展示場でそのまま購入することもできる。
Biopuffのサンプル
Biorestoreの商品。洗濯の際に洗剤に混ぜると、衣類の毛玉や表面を直し、色まで再生される。参加者も半信半疑で購入…!
見ているだけで面白いデザインやテクノロジーの数々。衣類は多くの人にとって身近なものでもあるため、つい試したくなってしまう。
▶︎参考記事:スタートアップの力で繊維業界をサステナブルに。香港生まれ、ロンドン育ちのイノベーションハブとは?
第二部:企業・行政・生活者が、足並みを揃えて変化を起こすために
このように企業による印象的な取り組みが多い中、次に注目すべきは生活者が日々の暮らしの中でいかにサーキュラーな取り組みを取り入れ、実践しているのかということだろう。筆者は実際にロンドンに暮らして、インフレ・生活費高騰に伴う価格の問題はあるものの、ロンドンが総じて「選択肢が多い」都市だと感じる。その土壌になっているのは、次のような団体の存在があるからかもしれない。
ロンドンの都市全体でサーキュラーエコノミーを推し進める「ReLondon」
サステナブルな生活とビジネスモデルを推進することを目指したイギリスの公共部門組織。それが「ReLondon(リロンドン)」だ。ロンドン市内の廃棄物管理とリソース効率を担当している。元々はLondon Waste and Recycling Board(LWARB)として知られていたReLondonは、資源を最大限に活用し、廃棄物の削減を目指すことで、ロンドンの循環経済への移行を支援している。
お話ししてくれたのは、ReLondonのPaulineさん
最初に我々がPaulineさんから聞いたのは「ロンドンで提供される予定だった3分の1の食材は廃棄されている」「ヨーロッパの60%のオフィスは日中も使われていない」「ヨーロッパで廃棄される建材の54%は埋立地に送られる」といったショッキングなデータだった。ReLondonはサーキュラーエコノミーのシステムを導入することが特に重要であるとされる「食」「建材」などの分野を特定し、重点的にプロジェクトに取り組む。
ReLondonがプロジェクトをともにするステークホルダーは主に3つ。「ロンドン市」「企業」「市民」だ。ロンドン市に対しては、Circular Economy Route Mapを策定するなど、都市全体でサーキュラーエコノミーへの移行を進める道筋を示す。企業に対しては、主にマネタイズの面で支援を行う。さらに市民に対しては、節約ができかつ環境にも配慮した食事のスタイルを紹介する「Eat like Londoners」のキャンペーンを実施したり、修理のワークショップなどを行う「London Repair Week」を主催したりと、参加の機会を生み出すのに意欲的だ。
参加者からは、ファッションに関するこんな質問も。「生活者のマインドが変わらないまま『古着』が新品の洋服同様に流行ってしまったら……それは『循環の輪に入る』素材が増えるだけで、本当の意味でサステナブルではないのではないか」。それに対しPaulineさんは「ロンドンでもそれは同じ状況です。ただ、100%とはいかなくても洋服のコレクションの一部を古着にしたり、イギリスに多いチャリティーショップで購入することで格差問題にアプローチできたりと、それでもなお良いことはあります」と回答していた。
ロンドンのような大都市では、「サステナブルな生活に移行したいのにできない」そのジレンマも様々だ。ReLondonはそれぞれの「手の届かないところ」「もどかしさ」を理解した上で、専門のチームがその解決を助ける。都市の規模が大きいからこそ、最初から100%を目指さずに徐々に移行していく。「サーキュラーエコノミーはこれからの時代のビジネスに必要」と、利益の面でもサーキュラーエコノミーを重要視しているのが特徴だ。
▶︎参考記事:ロンドンで360社のスタートアップを支援した「ReLondon」が語る、循環都市の歩みと苦悩
生活に身近な選択肢を。廃棄物でつくられた雑貨を売る「The Home of Sustainable Things」
そんなReLondonが支援した先の一つが、「The Home of Sustainable Things(ザ・ホーム・オブ・サステナブル・シングス、以下HOST)」だ。2018年に設立されたHOSTは、ゼロまたは低炭素排出の製品を専門とするストアおよびデザインプラットフォームであり、ストアの軸となる「サーキュラーデザイン」に関わるデザイナーたちの作品を集め、販売している。
電子レンジに使われるガラスからできた花瓶|Image via The Home of Sustainable Things
家具、照明、食器、装飾品など、販売されているプロダクトの原料となっているのは、建築廃材、テキスタイル廃材、電子ガラス、農業廃棄物、金属スクラップなどだ。「環境中心デザイン(environment-centred design)」のコンセプトを大切にしているというHOST。それぞれのプロダクトのストーリーをオーナーのPetkoさんが丁寧に説明してくれた。
当日案内してくれたのは、The Home of Sustainable ThingsのオーナーであるDesislavaさん(左)とPetkoさん(右)
実際にロンドンに店舗を構えるHOSTだからこそわかる変化は「店舗を訪れる人が増えた」ことだという。学生も多く、教育目的で来るファミリーもいる。それぞれの作品が何から作られ、どのように使用されるのか、会話も増えたそうだ。当初は5人のデザイナーとともに歩みを始めたHOSTも、今では40人以上のデザイナーの作品が販売されている。
「この店舗で実現したいのは、プロダクトの背景を知ることで『自然』と『人間』がつながっていることを実感してもらうこと」とPetkoさん。ただデザインがかっこいいだけではなく、各商品にどのような背景があるのかを知ると、愛着が湧く。これは商品を長く使うための秘訣なのかもしれない。
第三部:サーキュラーエコノミーは心地よい体験のあとからついてくる。デザインの仕掛けを作る人々
サステナビリティもサーキュラーエコノミーも快適でなければ続かない。例えば、調達から提供まで環境負荷に配慮されたレストランがあったとする。しかし、提供される料理のクオリティが低かったとしたらどうだろう。あなたはそのレストランを再訪するだろうか?多くの人々の答えはNOだろう。サステナブルな取り組みが広がり、ある意味で「日常」にもなってしまったいま、ユーザーの「心地よい体験」なくしてそれが選ばれることは少なくなってしまう。
だからこそ、次は「サーキュラーエコノミーの説明をする前に、まずは『心地よい体験』をしてもらおう」と奮闘する企業を紹介したい。実際にその場所を訪れて、ツアー参加者はどのような経験をしたのか、そして、そこからどのようにサーキュラーエコノミーのエッセンスを学んだのか、記していきたい。
自然の中に入って、サステナビリティの本質を教わる「OmVed Gardens」
「OmVed Gardens(オムベド・ガーデンズ)」は、持続可能な食物システムと自然とのつながりを促進するための農園だ。ロンドンのハイゲートに位置するこの庭園は、自然環境とその保全に焦点を当て、多様なコミュニティイベント、ワークショップ、教育プログラムを提供する。
当日ガーデンを案内してくれたRebeccaさん(左)とVickyさん(右)
ガーデンの様子
当日はガーデンを歩き回り、そこに生きている植物たち、そして動物たちの説明を聞いた。農園では、虫がつかない組合せでハーブを植えたり、唐辛子をまくなどの工夫も。自然の材料を使った、より良い共生の仕方が模索されている。他にも「The Seeds Saving Network」という種子を保存する活動も行っており、地域の生物多様性保存に努めている。
OmVed Gardensのあるハイゲートという地区は、ロンドンでも比較的裕福な地域だが「経済的に余裕のある人だけがガーデニングについて学び、サステナビリティについて考えるスペースにはしたくなかった」とビッキーさんは語る。何かを「教える」立場にある人には無料でスペースが貸し出されているという。さらにOmVed Gardensのメンバーは裕福でない地域にも出向き、ガーデニングのスキルを共有することがあるそうだ。
ガーデンで採れたハーブでつくるハーブティー
最後は、実際にガーデンで摘んだハーブを使って、ハーブティーを作るワークショップも。実際に自分で摘んだものを、自分の身体の中に入れる。私たちは自然の中の一部であるということを忘れがちな現代の生活で、体験を通してそのことを思い出させてくれた。
ツアー参加者からは「色々な取り組みはあるけど、難しいことはどうでも良いと思えるくらい、緑と風とハーブや草の香りがいっぱいで、とにかく気持ち良かった」という声も。イギリスで古くから大切にされてきたガーデニング文化が、自然の中に身を置くことの喜び、そしてサステナビリティの本質を問いかけてくれる。
今回、編集部はガーデンの音を収録した。小鳥のさえずりや木の葉が擦れる音など、目を閉じて現地の雰囲気を感じてみてほしい。
▶︎参考記事:完璧ばかり目指して疲れてない?ロンドンのガーデンを歩いて「不足の美」を学んだ日
サステナビリティをハイクオリティに。世界初のゼロウェイストレストラン「Silo London」
「Silo London(サイロ・ロンドン)」は、世界初のゼロウェイストレストランとして知られており、食材の廃棄物を最小限に抑えることを目指している。Siloでは、食材を直接農家や生産者から調達し、フードチェーンの各ステージで発生する可能性のある廃棄物を排除。食材はすべてレストランの厨房で調理され、未使用の部分は堆肥化・リサイクルされる。
メニューは季節と地域の食材に基づいており、自然の恵みを最大限に活用しようという哲学が反映されている。また、レストランでは自家製のパンや乳製品、ビール、ワインなども提供される。
食事前にレストランの概要を紹介してもらった。食材だけではなく、机の上にも廃棄されるものがない。マーブル模様のテーブルも、廃棄プラスチックを使って作られたものだ。
説明の中で印象的だったのは、「発酵」「味噌」「麹」など日本で馴染み深いキーワードが頻出だったことだ。レストランにごみ箱を置かないということは、食品を使い切る努力だけではなく、食品を長く保存する技術も大切になる。日本で古くから使われてきた「発酵」などの知恵がいまロンドンで再評価され、実際に使われているのだ。
食事は地元で調達された野菜を根っこ(普通は切り落としてしまう部分)まで使ったものや、出汁が出た後の貝の身を使ったクラッカーなど、シンプルかつ工夫が凝らされたものが多い。デザートに出てきたアイスクリームに使われるバニラは、中米のパナマからSiloの目の前まで(※Siloの前には運河が流れている)風の力を使ったカーボンフリーの帆船で運ばれてきたものだ。
季節によっても変わる、Silo Londonの料理|Image via Silo London
Siloでの食事の体験は、サーキュラーエコノミーが美味しく健康的な食事と十分に両立できることを示すものだ。彼らは、レストラン業界が地球への負担を軽減するためにどのように進化できるかのモデルを提供するだけでなく、私たちが食事と環境との関係を考え直すためきっかけも提供してくれた。
▶︎参考記事:街と人とともに進化する。7年目を迎えた世界初ゼロウェイストレストラン・Silo Londonインタビュー
編集後記:サーキュラーエコノミーを磨くのは、より良いものへの欲求と実験?
これからのサーキュラーエコノミーは、環境や社会への熱い想いだけではつくれない。そして、技術だけあってもつくれない。当たり前のようだが、それがロンドンの訪問先全体で学んだことだ。
変化の大きな世の中で、自社の事業が本当に良いことをしているのか、持っている指標は有用なものか、常に問い続けなければならない。Notplaのようにプラスチックの使われ方全体に目を向け、ピンポイントに自分たちの活動領域を設定することや、Wholegrain Digitalのように計測ツールを自ら生み出しウェブサイトを測る「新たな指標」を作ったことなどは、技術を時流に合わせて展開した先駆的な例だろう。
一方、OmVed GardensやSilo Londonなどでは、忙しい都市生活の中で、見失ってはいけないものは何なのか、体験として感じることができた。もしサーキュラーエコノミーが私たちの楽しい・心地いい時間を損なうものだとしたら──それは本当にいま必要な変化ではないのかもしれない。
ダイナミックな実験が続くロンドンは、失敗事例も含め、これからもポジティブな変化の作り方を教えてくれるだろう。
Photo by Masato Sezawa
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