2022年10月9日(日)、ロックバンド・くるり主催の音楽フェス「京都音楽博覧会2022」が京都・梅小路公園で開催されました。2007年からはじまり、今年で16回目を迎える「京都音楽博覧会(京都音博)」。今回は3年ぶりにオフラインでの実施となり、くるりをはじめ、マカロニえんぴつ、Vaundy、SHISHAMO、槇原敬之、アントニオ・ロウレイロ&ハファエル・マルチニらが出演。ステージ上の彼らの熱いパフォーマンスに、あいにくの雨の中でも会場は始終盛り上がり、熱気に包まれていました。
そんな「京都音博」には、音楽以外にもう一つ「環境」というテーマがあります。実は、これまでも環境に配慮しながら開催されてきた京都音博ですが、今年は新たな循環の取り組みにもチャレンジしています。
今回Life Hugger編集部では、プロジェクトのメンバーであり京都音博のトークイベントにも登壇した、サーキュラーエコノミー研究家の安居昭博さんにお話を伺いながら、イベント当日の様子をレポートします。
サーキュラーエコノミー研究家の安居昭博さん
「しげんが“くるり”プロジェクト」とは?
コンポストに京都音博の生ごみを入れたところ。よく混ぜて堆肥化します
今年で16回目となる京都音博は、以前から環境に配慮した音楽イベントとして開催されてきました。ごみ・資源の分別や、リユース食器の導入、フライヤーやチラシを配らないなどの取り組みを行なっていることもあり、イベント終了後にごみが散らかった状態を見ることはほとんどなかったそうです。
さらに今年からは、「しげんが“くるり”プロジェクト」がスタート。その名のとおり、これまでよりもさらに資源を無駄にしない取り組みが始まりました。
「今回の京都音博では、くるりの岸田繁さんの、これまでにない本質的な環境の取り組みをしたいという思いから、「しげんが“くるり”プロジェクト」が立ち上がりました。資源を無駄にせず、“くるり”と循環させながら、京都音博を開催していくことになりました。」(安居さん)
今年の「しげんが“くるり”プロジェクト」では、大きくふたつのプロジェクトが行われました。ひとつ目が当日のイベントで出たごみを肥料にするためのコンポストを設置する「コンポストプロジェクト」です。そしてもうひとつが、京都のロス食材を使ったヴィーガンアイスクリーム「しげくるアイス」の開発です。
梅小路公園に公共コンポストを設置
コンポストアドバイザーの鴨志田純さんと、梅小路公園に設置されたコンポスト
ひとつ目のコンポストプロジェクトでは、梅小路公園内に、京都音博で出る生ごみを堆肥に変えるコンポストを、梅小路まちづくりラボの足立毅さんが中心になって設置しました。
コンポストアドバイザーの鴨志田純さんの指導のもと、今回の京都音博で出た生ごみをコンポストに入れ、約4ヶ月かけて堆肥化。できた堆肥は、梅小路公園の樹木や市民花壇の肥料として使われる予定です。
「京都音博は、コンポストを使った資源循環の仕組みづくりのキックオフです。今回作成したコンポストは、梅小路エリアの公共コンポストとして今後も使われていく予定です。地域の方々と一緒にコンポストを通して、資源循環の仕組みづくりを進めていきたいと思っています。」(安居さん)
食品ロスを削減するヴィーガンの「しげくるアイス」誕生!
マイ容器に入れてもらった「しげくるアイス」
ふたつ目が、京都のロス食材を使ったヴィーガンアイスクリームの開発です。京都には酒蔵がたくさんあり、日本酒造りの副産物である酒かすがロスになっていました。また、京都は和菓子も有名ですが、粒あんと違って、こしあんを作る時には小豆の皮も大量に捨てられていました。そういった京都特有のロス食材を活用するために、安心・安全の食材を使って、自然の味をそのままに美味しく調理した動物性不使用メニューを提供する「mumokuteki cafe&foods」と、ヴィーガンアイスクリームを共同開発しました。
廃棄されるロス食材を使って作られたとは思えないおいしいアイスクリームが誕生し、京都音博のフードエリアでも「しげくるアイス」という名前で販売されました。くるりの岸田さんも試食し、「酒かすと小豆の皮で作られたアイスクリームのシロップが、めっちゃうまいっすね!」と、感動した様子でした。
安居昭博さんと、しげくるアイス開発者の堀口貴行さん
レシピ開発者の堀口貴行さんは、「ロス食材を使ったという観点ではなく、食の恵みを活かし単純に食べておいしいアイスクリームを作りました。今回のプロジェクトのような未来に向けてのチャレンジはまだまだ日本では伝わりにくいですが、続けていくこと、食べた方に素直に感激していただけることが、未来への懸け橋だと考えています。」と話していました。
今後の「しげんが“くるり”プロジェクト」は?
地域のボランティアの方たちとコンポストを設置
京都音博で、これまでにない本質的な環境の取り組みを始めたいという、くるりの岸田さんの思いから始まった「しげんが“くるり”プロジェクト」。今後の展開などについて安居さんに伺いました。
「「しげんが“くるり”プロジェクト」は今回限りで終わってしまうのではなく、継続的な取り組みとなるような仕組みづくりを地元の方たちと協力してやっていく予定です。
私が住んでいたオランダやドイツでは、これまでのリサイクルやアップサイクルとは全く異なる「サーキュラーエコノミー」が官民で進められています。リサイクルやアップサイクルはごみに対する後からの対処になりますが、サーキュラーエコノミーでは、あらかじめ予測されるごみに対して、前もって廃棄を出さない仕組みを整えることを目指します。
サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れた今回のプロジェクトのように、新しい楽しみにつながるところが、これまでのリサイクルやアップサイクルとは違う、サーキュラーエコノミーのおもしろさだと感じます。
今年はお話をいただいたのが5月だったので2つのプロジェクトしかできませんでしたが、来年は具体的なアクションを増やしていきたいと考えています。例えばサーキュラーエコノミーを実践できるような、ロス食材だけを使ったレストランなどをやりたいと思っています」
編集後記
音楽フェスなどのイベントは、ごみが大量に出てしまうという印象があるなか、京都音博は、すでに数年前からごみを極力出さないような取り組みを行なっていること、そしてさらに未来の地球のために進化していこうとする姿勢に感銘を受けました。
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Life Hugger」からの転載記事となります。