一般社団法人シェアリングエコノミー協会は2022年11月1日、SHARE SUMMIT 2022を会場とオンラインのハイブリッドで開催した。

シェアリングエコノミーは、環境負荷低減と経済性向上に貢献するとともに、私たちの生活と心を豊かにする新たな「文化」を創り出す可能性を秘めている。戦略コンサルティングファームのアクセンチュアは、シェアリングエコノミーを5つのサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの一つとして位置付けており、現在さまざまなシェアリングサービスが開発および展開されている。

シェアサミットは年に一度のシェアカンファレンスとして、政府・自治体・企業・個人・あらゆる分野のステークホルダーが集い、その年の動向や世の中の潮流に合わせて共有し学ぶ場として2016年から毎年開催されている。今年のテーマは、「次世代へシェアすること~先送りしない持続可能な共生社会を~」だ。

本記事では、セッション「サステナビリティ経営の具体戦略〜新しい資本主義における企業の役割。戦略と実践〜」をレポートする。同セッションでは、環境と社会への配慮、および経済合理性を追求するサステナビリティ経営における具体戦略と実践が求められる現在、新しい資本主義における企業の役割について議論された。

モデレーター

  • 天沼 聰 氏:株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO

登壇者

  • 渋澤 健 氏:シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
  • 坊垣 佳奈 氏:株式会社マクアケ共同創業者/取締役
  • 永田 暁彦 氏:株式会社ユーグレナ 代表執行役員CEO リアルテックファンド代表

サステナビリティ経営における現状や認識

最初に、サステナビリティ経営における現状や認識について共有された。

永田氏は、サステナビリティの認識浸透の重要性を指摘し、「サステナビリティの意味はまだ十分に認知されておらず、認識の浸透に向けては、日本語への意訳などによって親しみやすい言葉をつくることが必要だ」と述べた。

坊垣氏は、いま消費者は価格と機能性に基づいて行動しており、これは今後も変わらないとしながらも、サステナビリティは購買時の意思決定の一つになってきているとの見解を示した。

渋澤氏は、新しい時代に入っていることを強調。今後は「メイドインジャパン」「メイドバイジャパン」だけでなく、「メイドウィズジャパン」という考え方で、日本と一緒に豊かで持続可能な社会を作るモデルが必要だと語った。その主役は新しい時代・価値観・成功体験を創造できる10~30代の人で、実現できる可能性は十分あるとしている。

サステナブル経営のあり方

つぎに、サステナブル経営のあり方について意見交換された。

永田氏は、2025年以降は日本における労働人口の半分以上がサステナビリティ意識の高いミレニアル世代になることに焦点をあてて、経営のあり方を再考することが重要だと語った。企業の業績は優秀な人材の有無で決まることを経営者が認識すれば、人的資本と資本が集まるようになると同氏は考える。「世界で環境負荷が高いのは、発電・輸送・製造分野であり、こうした産業の形態を変えていくことが重要だ。ミレニアル世代が世界の環境に真に影響を与える場面は、消費行動ではなく、働く側面である。企業の主なステークホルダーは、投資家・経営者・労働者だ。ESG投資などが出現するなど、投資家は変わり始めている。焦点を当てるべきは労働者だ」と述べた。

坊垣氏は、「成長のみを重視し、生み出す影響の方向性や目指すものを忘れている経営も見受けられる」とし、経営者側の変化にも期待している。坊垣氏と永田氏は、欠乏する物質を世界に届けることが必要だった大量生産の時代と比較して、現在は状況と価値観が変化していることに気付きを与えてくれる人の存在や多様性などが必要だと考える。

渋澤氏は、日本の大企業のサステナブル経営において、3つの言葉を使わないことが重要だとみている。3つの言葉「前例がない」「それは組織で通らない」「誰が責任を取るか」が日本において可能性を抑制しており、10年後に若手世代が活躍できる会社をつくることが大切だと述べた。

個人が行動していくべきこと

最後に、個人が行動していくべきことについて共有された。

渋澤氏は「エッジに立ち続けること」を挙げ、坊垣氏は自身・内面との対話が重要であるとし、自分が本当にやりたいことを考えることで答えが見えてくると述べた。永田氏は、過去10年間の投資と企業の関係をみると、資本主義はサステナビリティ経営において機能していると認識している。「サステナビリティ経営は、なんとなくいいことをしていると考えるのではなく、サステナビリティ経営への移行によって幸せになれる」と客観的に示されていることを多くの人に共有することが大切だと語った。

セッションのなかで、たびたび議論にあがった言葉は「次の世代の幸せと笑顔をつくる経営」であった。今後、時代および社会の状況と価値観に沿って、ミレニアル世代を軸に企業の役割とサステナビリティ経営戦略について考察していくことの重要性が強調された。

【参考】SHARE SUMMIT 2022公式ページ
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*冒頭の画像の出典:一般社団法人シェアリングエコノミー協会