公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(以下、WWFジャパン)は、「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の参画企業全12社が、プラスチック利用に関する問題の解決に向け、2025年を目途とした包括的な目標と具体的な取り組みを公開したことを発表した。同枠組みは、WWFジャパンが、容器包装、使い捨てプラスチックを多く扱う企業に対して参画を呼びかけ2022年2月に企業10社と共に発足、今回新たに2社の追加が発表された。

WWFジャパンは6月29日、企業が野心的で包括的な自主コミットメントを掲げ、透明性を持って取り組みを進める重要性について、枠組みの参画企業やアメリカ・インドの事例発表、企業・専門家・政府関係者によるディスカッション等を行うイベントを開催した。下記に内容を抜粋して紹介する。

イベントでは、参画企業12社が、自社のプラスチック対策についての包括的なコミットメントを公開。食品、飲料、日用消費財、運輸・飲食など幅広い業界の大手企業が、「取り止め」「段階的削減」「代替素材の持続可能性」「リユース」「リサイクル素材」「デザイン」「ステークホルダーとの協力」などについて、自社の目標と具体的な取り組みを新たに開示した。

「段階的削減」に関するコミットメントの例として、日本航空株式会社は、客室やラウンジにおいて利用客に提供するすべての使い捨てプラスチック用品を、2025年度までに「新規石油由来全廃」の目標を掲げている。同社は、2022年度の削減実績は、2019年との重量比較で45%と報告している。

「リサイクル素材」に関するコミットメントの例としては、日本コカ・コーラ株式会社は、日本国内において、2030年までにすべてのPETボトルを100%リサイクルPET素材、または植物由来のPET素材に切り替えるという目標を掲げる。2023年開始時点で、同社が展開する「コカ・コーラ」など4ブランド44製品において100%リサイクルペットボトルを使用していると報告した。

参画12社のコミットメントはこちら

「野心的な目標」を掲げる意義

イベント冒頭、WWFジャパンの三沢行弘氏から同枠組みの概要が説明された。三沢氏は、地球の限界の範囲内で資源を循環させ続けるサーキュラーエコノミーの重要性を確認。実現のために達成可能な目標だけを掲げても現状の課題解決は難しく、達成が難しかったとしても目指そうとする野心的な目標を設定・実行することの意義を強調した。意図に賛同した企業が枠組みに参加していると説明し、新たに、Uber Eats Japan 合同会社、江崎グリコ株式会社の参画を発表した。

参画企業による事例紹介:ステークホルダーとのコミュニケーション不足、資材高騰などの課題

新たに枠組みに参画した江崎グリコ株式会社の森田裕之氏からは、同社の使い捨てプラスチック削減に関する取り組みの中で、飲料製品に付随していたストローを廃止した際の事例として、顧客に対する事前コミュニケーションの不足から、ストロー廃止の意図が正確に伝わらず顧客満足度の低下につながった経験が共有された。ステークホルダーとのコミュニケーションを重視する体制に変えた取り組みのひとつとして、学校給食用の牛乳パックを同様に変更した際の事前コミュニケーションの徹底ぶりなど、努力が伺える内容も紹介された。また、原材料の価格高騰が続く現在、コスト高になりやすい環境負荷の低い素材は経済的な理由により採用を見送らざるを得ないという、多くの企業にとって共通となりうる課題の共有もあった。

プラスチック汚染への対応:社会的営業免許が持つ可能性

同志社大学経済学部 原田禎夫氏からは、プラスチック汚染の現状と、社会的営業免許について解説された。控除性(競合性)と排除不可能性を持つ典型的な共有資源である海が、誰も責任をとらない巨大なごみ箱のようになっている現状を説明、プラスチックの自然環境への流出を防ぐことの難しさ、環境を汚染する行為の監視や制裁には高額な費用を要すること、実効的な法制度の整備にもコストがかかる可能性が指摘された。また、企業の営業活動が社会から認められ、企業の存在自体が社会にとって不可欠なものであると評価する「社会的営業免許」の解説の中では、法に反していないからプラスチック汚染を招くような活動をしていてもよいわけではなく、また国内法規だけを守っていれば充分というわけではない、企業が自主的な努力によってこの課題に対処することの重要性が強調された。

今後に向けて:消費者の意識改革、取り組みを進めるために必要な制度

後半のパネルディスカッションでは、参加企業からメディアに対する要望もあった。製品を購入する消費者が、少し価格が上がったとしても環境負荷の低い製品を選択するようになるためには、消費者の意識改革が必須であり、メディアはそのための情報提供をより行ってほしい。また、社会にとって良い活動をしている企業が、より評価されるような仕組みや制度(経済的なインセンティブなど)があると、取り組みを推進しやすくなるという声も出された。

参画企業

計12社

キリンホールディングス株式会社、サントリーホールディングス株式会社、株式会社資生堂、日本航空株式会社、日本コカ・コーラ株式会社、日本水産株式会社、ネスレ日本株式会社、ユニ・チャーム株式会社、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社、ライオン株式会社、Uber Eats Japan 合同会社、江崎グリコ株式会社

WWFジャパンは、日本において企業が包括的で野心的目標を設定し、進捗について透明性を持って開示した上で、生活者や自治体等幅広いステークホルダーとの協働を進めることにより、プラスチック汚染の根絶とカーボンニュートラルの実現を主導していくことを目指すと発表している。

冒頭の写真はWWFジャパン提供

【公式サイト】プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025特設サイト
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