2021年4月15、16の両日に開催されたサーキュラーエコノミーと脱炭素の関係に焦点を当てたイベン「World Circular Economy Forum plus Climate(世界循環経済フォーラムと気候変動に関するハイレベル会合)」のオープニングセッション。

2050年に向けて脱炭素社会を作り出す上でなぜサーキュラーエコノミーが欠かせないのか、温室効果ガスの排出削減を含めた気候変動対策とどのように関連づけるべきかが議論された。

スピーカー:敬称略
  • オランダ環境大臣 スティンチェ・ファンフェルトホーフェン
  • フィンランド・イノベーション基金(Sitra)会長 ユルキ・カテイネン
  • 欧州委員会副委員長 フランス・ティマーマンス
  • チリ環境大臣 カロリーナ・シュミッツ
  • ケニア森林環境長官 ケリアコ・トビコ
  • 国連環境計画(UNEP)事務局長 インガー・アンダーセン
  • 国連開発計画(UNDP)総裁 アヒム・スタイナー
  • 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局次長 オバイス・サルマド

脱炭素社会の実現に向けて、なぜサーキュラーエコノミーの推進が欠かせないか

「World Circular Economy Forum plus Climate(世界循環経済フォーラムと気候変動に関するハイレベル会合)」の幕開けを告げるオープニングセッションではまず、国際的に議論されている2050年脱炭素社会の実現に向けて、なぜサーキュラーエコノミーの推進が欠かせないかをめぐって論点が提示された。

スティンチェ・ファンフェルトホーフェン氏(オランダ環境大臣)

「サーキュラーエコノミーを気候変動対策と結びつけて推進すべき理由は2つあります。まずは世界の人口増。すべての人々のニーズを地球環境の許容する範囲内で満たすには、エネルギーだけに焦点を当てていては足りません。また、世界のCO2排出量の約50%は財の生産・消費活動によるもの。エネルギーを超えて資源に焦点を当てなければならない。気候変動への適応策のもとにサーキュラーエコノミー戦略を積み重ねることが、パリ協定(1.5度目標)達成に欠かせません」

気候変動対策としてサーキュラーエコノミーを推進することは、2030年の達成を目指すSDGsに貢献しながら大きなビジネス機会を得られることも意味する。

ユルキ・カテイネン氏(Sitra会長)

「リニア経済は人にも生態系にも経済にも悪いもの。サーキュラーエコノミーを通じて、社会的公正を実現しながら成長を維持することが重要です」

スティンチェ・ファンフェルトホーフェン氏 (オランダ環境大臣)

「EUによる製品におけるリサイクルプラスチック使用率の条件化は素晴らしいと思います。これを全世界で行うとすれば、どのような機会がもたらされるのでしょうか。グローバルで取り組めば、新たな世界を作り出せます。世界のサーキュラリティはまだわずか9%。ここからがチャンスだということを発信していきます」

サーキュラーエコノミーと気候変動との関係性が増す中で、国の気候変動対策にサーキュラーエコノミー戦略を連動させた先進的な国がチリだ。

カロリーナ・シュミッツ(チリ環境大臣)

「世界のCO2排出量の55%はエネルギー転換で削減できる一方、残る45%はリユースやリサイクルなどの推進によって削減する必要があるとされています。サーキュラーエコノミーはカーボンニュートラルを達成する上で非常に重要なので、われわれはNDC(自国が決定する貢献)にサーキュラーエコノミーを織り込みました」

カーボンニュートラル達成に向けてはCEが欠かせない(出典:COMPLETING THE PICTURE: HOW THE CIRCULAR ECONOMY TACKLES CLIMATE CHANGE

「また、サーキュラーエコノミーはグリーン雇用の提供と不平等の解消にも貢献します。ディーセントワーク*の提供は、とりわけわれわれのような新興国にとって重要です。われわれのサーキュラーエコノミー戦略では、不法投棄されている土地の90%を回復させること、リサイクルの促進などを通じて180万人分のグリーンジョブの創出を目指しています」

*働きがいのある人間らしい仕事

サーキュラーエコノミーの戦略的な推進ではEUが世界をリードしてきたが、グローバルでサーキュラーエコノミーを推進する上で何か求められるのだろうか。

フランス・ティマーマンス氏(欧州委員会副委員長)

「再エネ化などエネルギーの側面だけに取り組んで、その他の部分を資源依存型のリニア型で運営していては意味がありません。EUは最近、資源効率性の向上を目指す国際的な枠組みとして『Global Alliance for Circular Economy Resource Efficiency(GACERE、循環型経済と資源効率に関するグローバルアライアンス)』を立ち上げたところ、世界的に反響をいただいています。われわれは今、デジタル産業革命の真っただ中にあり、サーキュラーエコノミーに取り組めば資源効率性を飛躍的に高められることでしょう」

「これに加えて、グローバルでの消費者同士の連帯も必要です。修理、再利用できる製品を望んだり、リサイクル素材の製品にしたりすることです。経済はグローバルなのですからね。国際間の貿易協定にもサーキュラーエコノミーの視点をもっと取り入れるべきだと考えています。サーキュラーエコノミーを前提としながらも、開発途上国の成長を抑えない公平なものである必要があります」

今、アフリカでもサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みが急速に広がっている。

ケリアコ・トビコ氏(ケニア森林環境長官)

「グローバルでの取り組みと同時、ローカル、さらには各家庭やオフィスといった単位におるサーキュラリティの追求も大切です。グローバル、地域、国、ローカル、草の根といった重層的なレベルでの取り組みが必要で、何より人々がサーキュラーエコノミーの重要性に気づくことが必要です」

インガー・アンダーセン氏(国連環境計画(UNEP)事務局長)

「EUと共同で立ち上げたGACEREには多くの反響をいただきました。例えば、ガーナでは電子廃棄物の95%(大半は欧州からのもの)は、リサイクルされるようになりました」

サーキュラーエコノミー、はパリ協定の達成に向けた気候変動対策に何をもたらすことになるのか。

オバイス・サルマド氏 (国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局次長)

「グローバルで生産・消費パターンを変えることであり、持続可能な形で調達された資源をリサイクルしながら使うことです。われわれの生活様式と意識を変えることでもあります」

アキム・スタイナー氏 (国連開発計画(UNDP)総裁)

「低炭素のエネルギーへアクセス可能であることも、途上国も含めたグローバルでサーキュラーエコノミーを推進するためには重要です」

インガー・アンダーセン氏(国連環境計画(UNEP)事務局長)

「世界には気候危機、生物多様性危機、公害・廃棄物危機という3つの危機があります。解決策のカギはサーキュラーエコノミ―です」

「世界循環経済フォーラムと気候変動に関するハイレベル会合」その他のレポート

レポート#2

気候目標の達成を実現する:各国の気候戦略におけるサーキュラーエコノミーとは?(「世界循環経済フォーラムと気候変動に関するハイレベル会合」レポート#2)

レポート#3

循環性測定によるサーキュラーエコノミー移行の可視化(「世界循環経済フォーラムと気候変動に関するハイレベル会合」レポート#3) 

【参照】World Circular Economy Forum + Climate, 15-16 April 2021
【関連記事】循環型経済と資源効率に関するグローバルアライアンスが発足。日本を含む11カ国とEUが加盟

【本セッションの動画】A Circular Economy by 2050: A Necessity for Climate Neutrality-Global Opening WCEF+Climate –