日本ではじめてゼロ・ウェイスト宣言した徳島県上勝町に本拠を置くブルワリーRISE&WIN Brewing Co.(株式会社スペック)は、同社の製造工程から出る廃棄物を有効活用するシステム「reRise(リライズ)」を開発し、上勝町で展開しているクラフトビール工場において同システムを2021年9月に導入した。
同システムでは、工場から出るモルトかすと濃度の高い排水などを装置に直接投入して微生物分解し、乳酸菌とアミノ酸を主体とした液体肥料を生成する。1回のビール仕込みにおいて発生する約1トンのモルトかすや濃度の高い排水などは、24時間以内に液体肥料となり、現在、上勝町内の農場でビールの原料である麦の栽培に活用されている。同液体堆肥の特徴について、RISE&WIN Brewing Co.は以下を明らかにした。
- pHは3〜4とやや強めの酸性になることから、長期保存が可能
- 乳酸菌を主体とした液体肥料であるため、乳酸菌に加えてアミノ酸を豊富に含み、農業・酪農・畜産・養殖などでの利用に適している
- 病気や害虫に強く、苦味やエグ味の少ない甘みのある作物を育てられる
- 農場での試験栽培において、同液体堆肥100%で栽培したチンゲンサイの糖度・抗酸化力は約1.5倍(化成肥料100%と比較)に、苦味の元となる硝酸イオン(高い方が苦味が強い)は約30分の1 になった
醸造後に廃棄物となって出てくるモルトかす(RISE&WIN工場内)
現在、農作物を育てる生産者など町民約40人に同システムから得られた液体肥料を無料で配布しており、「野菜が美味しくなった」「害虫がいなくなった」との声を聞くようになったとしている。
上勝町は2003年よりごみの再利用・再資源化に力を入れ、現在リサイクル率80%以上を達成している。RISE&WIN Brewing Co.もゼロ・ウェイストを理念としており、上勝町のサーキュラーエコノミー移行に貢献し同システムを世界に周知することを目指す。今後、上勝ツアー(液体肥料を使用した野菜の収穫体験など)の実施・液体肥料でできた野菜を使った製品開発(コーヒーやカカオなど)・異業種との協働・企業や地方自治体への導入支援を進めていく意向だ。
reRise液体堆肥生成装置(RISE&WIN工場内)
アルコール醸造工程で生じる廃棄物を循環利用するそのほかの取り組みとしては、酒の精製で発生する酒粕をジンのベーススピリッツとして100%使用する再生型の蒸留所「東京リバーサイド蒸溜所」などがある。今後、さまざまな廃棄物を多くの組織が共同で循環利用していくことが、環境的・社会的・経済的に好影響をもたらし、サーキュラーエコノミー移行を推進していくことが期待される。
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*冒頭の画像の出典:株式会社スペック