株式会社リコーはこのほど、エッジデータセンター向け循環型蓄電システムの実証設備の稼働を開始すると発表した。
同プロジェクトは、環境省「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業(CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業)」の一つとして2021年度に採択され、実証評価を進めてきた。今回、同蓄電システムの実証実験を開始し、事業化に向けた課題や顧客要望などを検討して新たな事業モデルを構築していきたい考えだ。
実証開始の背景は、利用者の近くで情報を処理する分散型エッジデータセンターの普及拡大に伴い、エッジデータセンターでの電力消費量の増大が予想されることだ。デジタル社会における情報処理の脱炭素化推進が求められており、再エネの発電量の変動を吸収して電力を安定供給するべく、循環型蓄電システムを構築して既設の太陽光発電設備と接続した実証を開始するに至った。実証では、エッジデータセンターの電力消費を模擬した装置(電子負荷装置)に発電した電力を供給する。
リコーの目指す循環型ビジネスフロー(出典:株式会社リコー)
同蓄電システムは、車両の使用済みリチウムイオン電池をリユースすることで、各車種で異なる仕様や特性(ハイブリッド電気自動車は高出力、電気自動車は大容量)を持つ電池を混在して使えることが特徴であるとしている。複数種の電池をリユースすることで、資源の有効活用により製造時のCO2も削減したと発表。同社は独自技術により、リユース電池の課題であるコストダウンと安全性の両立に取り組み、再エネ活用の普及を目指していく構えだ。
増え続けるデータセンターの容量とエネルギー需要について、企業は環境負荷を考慮する必要があるとの指摘があるなか、データセンターにおける資源のリユースを増やしたり、データセンターから出る排熱を利用したりといったさまざまな取り組みが進められている。車両用リチウムイオン電池に関しては、環境負荷削減という目的の達成において、適切なリユースなど長寿命化に向けた取り組みが必須である。株式会社リコーの循環型蓄電システムの実証設備稼働が、データセンターの環境負荷削減と車両用リチウムイオン電池の有効活用および長寿命化に貢献していくことが期待される。
【プレスリリース】エッジデーターセンター向けサーキュラー型蓄電システムの実証を開始 ~ デジタル社会での再エネ活用を目指し、車載電池を再利用した蓄電システムを開発 ~
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*冒頭の画像は実証実験機外観(出典:株式会社リコー)