鹿児島県大崎町と志布志市、ユニ・チャーム株式会社と有限会社そおリサイクルセンター(本社:鹿児島県曽於郡)はこのほど、紙おむつ水平リサイクルに関する新たな実証実験を開始した。

4組織は2018年4月に協定を結び、使用済み紙おむつからパルプを取り出してリサイクルするユニ・チャーム株式会社が開発した技術を活用し、2020年2月から大崎町にて「紙おむつの分別試験収集」に取り組んできた。分別試験収集では、一般ごみの袋に人の使用済み紙おむつ(大人用と子ども用)・尿とりパッド・ウェットティッシュのみを入れて収集している。収集された紙おむつは、そおリサイクルセンターにて洗浄・分離し、取り出したパルプにオゾン処理を施して、排泄物に含まれる菌を死滅させ、未使用のパルプと同等に衛生的で安全なパルプを生成している。

同実証では、紙おむつ水平リサイクルの資源循環を推進するべく、紙おむつから回収された再生プラスチックを利用した専用回収袋を使用し、一部のモデル地域限定(15集落)で紙おむつを個別回収する。専⽤回収袋の製造は、タキロンシーアイ株式会社(本社:⼤阪府⼤阪市)が担当する。

今回の実証実験開始決定の背景は、紙おむつごみの増加だ。環境省によると2030年には一般廃棄物において紙おむつが占める割合は6.6〜7.1%となる。大崎町と志布志市が共有する埋立処分場では、収集されるごみにおける紙おむつの割合は重量比で現在約20%にのぼる。4組織は、紙おむつのリサイクル率向上により、同埋立処分場の延命化と「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」の実現を目指していきたい考えだ。

2022年、大崎町は「環境省おむつ調査費用補助」の対象団体に採択され、紙おむつ専用の回収箱を210箇所のごみステーションに配置する予定。同補助を活用し、モデル地域での紙おむつ専用回収袋の配布と合わせて、紙おむつ回収率の向上と資源循環促進に向けて取り組んでいくとしている。

大崎町は、「大崎システム」という「焼却炉に頼らない、廃棄物の80%以上をリサイクルする資源循環型の社会形成」に向けて20年以上取り組んでいる。その結果、これまでに資源リサイクル率日本一を14回達成し、2018年度のリサイクル率は83.1%に至り、「2018ジャパンSDGsアワード」内閣官房長官賞を受賞するなど、環境問題への取り組みが国内外から高く評価されている。同実証では、紙おむつから回収された再生プラスチックを利用した専用回収袋を住民が使用することで、自らが参加する資源循環の取り組みの成果を住民が実感できるようになるだろう。こうした住民の参加と共感を通した取り組みが、資源循環促進に貢献していくことが期待される。

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※冒頭の画像は、左から大崎町役場住民環境課 松元昭二氏、ユニ・チャーム株式会社 和田充弘氏、ユニ・チャーム株式会社 織田大詩氏、タキロンシーアイ株式会社 加藤晋康氏《画面上》、タキロンシーアイ株式会社 牧村洋一郎氏《画面下》、平良衛生自治会 山野利高氏、平良自治公民館 近松輝久氏、大崎町役場住民環境課 竹原静史氏。(出典:大崎町)