東京大学大学院工学系研究科はこのほど、産学連携でサーキュラーエコノミー移行に取り組むべく、2つの社会連携講座を開設した。
2講座は、清水建設株式会社との「物質サーキュレーション建設学講座」と、三菱電機株式会社との「持続可能な循環経済型未来社会デザイン講座」だ。
「物質サーキュレーション建設学講座」~清水建設と連携
研究テーマは、地球資源を考慮したサーキュラーエコノミーに資する物質循環型建造物の構築で、講座設置期間は2023年10月1日から2027年3月31日まで。
サーキュラーエコノミーの社会実装に最大限貢献する建造物の設計および施工システムの確立に向け、建設による元素・物質資源への影響を定量化し、元素・物資の持続的循環に適した建設材料および建設工法の研究開発に取り組む。建設分野における物質循環とサーキュラーエコノミーの構築を主導し、国際的に活躍する人材を育成することも目指す。
具体的な研究内容は、以下の通り。
- 建造物構築に用いる無機建設材料の主要構成元素であるCa、Si、Al、Feなどの循環を追跡および予測するシミュレーションモデルを研究開発し、元素・物質の持続的な循環性の評価指標を提案する。シミュレーションモデルを活用して、元素・物質を環境的および経済的に最適に流通・循環させる循環型建造物の実現を目指す
- 元素・物質循環性が高く、リサイクルおよびリユース可能な新たな建設材料・部材と接合方法を研究開発する。建設材料と部材の用途に応じて複数の機能を実現でき、性質・形態を容易に変化させられる素材(万能素材)をマテリアルサイエンスおよびナノテクノロジーの視点から研究開発する。これらを用いた建設材料・部材の実用的な製造方法を研究開発する
出典:東京大学、清水建設
「持続可能な循環経済型未来社会デザイン講座」~三菱電機と連携
日本製造業の強みを活かして、循環移行に向けたエコシステムの設計と検証に取り組み、システム実現における障壁および課題の抽出と解決策を検討する。講座設置期間は、2023年10月1日から2026年9月30日まで。
具体的な研究内容は、以下の通り。
- エコシステム全体のモデル化に取り組み、モデルを用いたシミュレーションによってステークホルダー間の関係性を整理する。経済合理性を阻害する要因を探求し、解決に向けた研究を進める
- 三菱電機のさまざまな事業・製品を事例として検証し、各ステークホルダーの役割・民間企業における最適な事業モデルのあり方・法規制のあり方などを明らかにし、実効性のあるエコシステムの構築を目指す
2023年4月、三菱電機と東京大学は多様な社会課題を克服したありたい未来社会の姿について議論し、実現への道筋を描く共同研究体「三菱電機-東京大学 未来デザイン会議」を設立した。同研究体において議論を進めるなかで、両組織が取り組むべき重要課題としてサーキュラーエコノミーを位置付け、実現に向けた方策を検討するべく今回の社会連携講座開設に至った。
出典:東京大学、三菱電機
高い環境負荷が指摘されている建設業界、レアアースなどの資源の安定供給が課題とされる製造業におけるサーキュラーエコノミー移行に向けて、こうした官学連携の取り組みが貢献していくことが期待される。
【プレスリリース】社会連携講座「物質サーキュレーション建設学講座」を開設~産学連携により、サーキュラーエコノミー対応型建設システムを構築~
【プレスリリース】三菱電機と東京大学が社会連携講座 「持続可能な循環経済型未来社会デザイン講座」を開設:エコシステムの設計・検証に取り組み、サーキュラーエコノミーの実現に貢献
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