国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は8月18日、廃プラスチックをリサイクルするプロセス技術開発事業に着手すると発表した。
この事業は、廃プラスチックを適正に処理し、資源として循環させることを目的に行われるもので、開発の詳細は以下の4つの項目とされている。
- 最適な処理方法に振り分けるための選別技術
- 元のプラスチック材料と遜色ない材料に再生する技術(マテリアルリサイクル)
- 分解して石油化学原料に転換する技術(ケミカルリサイクル)
- 材料や原料への再生が困難な廃プラスチックを焼却し高効率にエネルギーを回収・利用する技術の開発(エネルギーリカバリー)
同社はこの事業への着手の背景として、近年先進諸国のプラスチックごみを受け入れてきたアジア新興諸国で、廃プラスチックを適切に処理できないとして輸入規制が強化されたことや、海洋プラスチックごみ問題が世界的な課題となっていることを挙げている。
こうしたなか、日本政府が策定した「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」や「プラスチック資源循環戦略」では、2035年までに全ての使用済みプラスチックを有効利用することなどの目標が提示されており、そのなかでも「革新的リサイクル技術の開発」は重点戦略の一つとして掲げられている。SDGsやESG投資などによるリサイクルプラスチックの利用ニーズの拡大もあり、廃プラスチックの資源価値を高め、経済的な資源循環を達成することが必要だとしている。
一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、現在日本では、年間約900万トンの廃プラスチックが出ており、そのうち再生品への利用(マテリアルリサイクル)として約210万トン/年(うち約90万トン/年は海外へ輸出)、コークス炉やガス化の原料(ケミカルリサイクル)として約40万トン/年、固形燃料・発電・熱利用の熱エネルギー回収(エネルギーリカバリー)として約500万トン/年が毎年リサイクルされている。
しかし、現状では適切なリサイクルを行うための廃プラスチックの選別に人件費がかかることや、再生品の品質劣化など課題は多い。これに対してNEDOは選別の際のAIやロボットの活用や、品質劣化を避ける材料再生・成形加工技術の開発などを行うことで、現状より優れたリサイクル技術の開発を進める計画だ。
事業期間は2020年度~2024年度の予定で、同社はこの新しい技術を適用することで、2030年度までにこれまで国内で再資源化されていなかった廃プラスチックのうち、年間約300万トンを有効利用し、資源循環へ貢献するとしている。
経済産業行政の一翼を担う日本最大級の公的技術開発マネジメント機関であるNEDOによるこの事業開発は、日本でのサーキュラーエコノミーを加速させる大きな一歩になるといえる。今後の開発の成果に大いに期待したい。
【参照サイト】廃プラスチックをリサイクルする革新的なプロセス技術開発に着手
【参照サイト】プラスチックリサイクルの基礎知識