神戸市と小売・日用品メーカー・リサイクラー(再資源化事業者)の16社は協働で、市内75店舗に回収ボックスを設置、洗剤やシャンプーなど使用済みの日用品の詰め替えパックを分別回収して再び詰め替えパックに戻す「水平リサイクル」を目指す「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」を2021年10月1日(金)より開始すると発表した。
プラ容器の水平リサイクルへ企業、自治体が協働
家庭から出るプラスチックごみは全国的に急増しており、コロナ禍の 2020年は直近10年で最多となった。プラスチックの回収・リサイクルにおいて自治体と企業などの連携による自主的な取組み
が一つの柱となる「プラスチック資源循環法」の施行を22年4月に控えて、自治体と製造・販売・回収・再生に関わる複数の企業などが競合の垣根を超えた協働を通じて詰め替えパックの「水平リサイクル」を目指す全国に先駆けた試みとなる。
詰め替えパックは本体ボトルに比べてプラスチック使用量を70~80%削減できる一方で、多層構造のためマテリアルリサイクルが難しい。加えて、容器回収やリサイクル技術開発にも多大なコストがかかることもあり、1社単独での水平リサイクル推進のネックとなっている。こうした状況を踏まえて、今回は神戸市とNPO法人ごみじゃぱん(神戸市)、小売4社、メーカー10社、リサイクラー2社の計16社との協働によって水平リサイクルの実証に本格的に乗り出すことになった。
仕組み図(資料:神戸プラスチックネクスト つめかえパックリサイクルプロジェクトチーム)
プロジェクトでは、全国最大規模となる神戸市内75店舗ですべてのメーカーの詰め替えパックを店頭回収。回収に協力した市民には、神戸市が運営する「KOBEエコアクション応援アプリ」を通じて1枚につき50ポイント(5円相当)が付与される。回収後は、大栄環境グループの六甲リサイクルセンターで集約して選別、リサイクルを実施した後、和歌山市内にある花王和歌山工場のパイロットプラントで再製品化の実証を行い、参加企業間でノウハウを共有していく。初年度の回収目標量は5トン。将来的には、再製品化した商品の市内店舗での販売を目指す。
参加店舗の店頭に置かれる回収ボックス(写真:神戸プラスチックネクスト つめかえパックリサイクル)
つめかえパックの水平リサイクルに際しては、質の高い素材の確保が必要なことから、回収時に協力すべきこととを挙げて市民に広く呼び掛けている(資料:神戸プラスチックネクスト つめかえパックリサイクルプロジェクトチーム)
KOBEエコアクションポイントアプリを通じてポイントを付与(資料:神戸プラスチックネクスト つめかえパックリサイクルプロジェクトチーム)
日本のサーキュラーエコノミー化を先導できるか
今回のプロジェクトを監修した神戸大学の石川雅紀名誉教授は「詰め替えプラスチック容器の水平リサイクルは、サステナブル社会に向けた投資を誘発し、生産者責任の自主的な拡大を通じて日本が循環型社会に変わっていく一つの先導的事例になる」などとして、期待感を寄せている。
石川名誉教授によると、詰め替えプラスチック容器の水平リサイクルの課題としては▼排出量が少ない(プラスチック廃棄量全体の0.1%)中での効率的な回収の実施▼リサイクル技術の開発▼リサイクル資源による製品の再生産技術▼サステナブルなビジネスモデルの確立ーーが挙げられるとしている。日本は世界でもっとも詰め替え容器が市場に普及していることから、本プロジェクトでの成果はグローバル展開する他のメーカーにとってもインパクトを及ぼすもので、プロジェクトの行方が注目される。
なお、本プロジェクトの参加企業は以下の通り。
ウエルシア薬局株式会社、生活協同組合コープこうべ、株式会社光洋、株式会社ダイエー、アース製薬株式会社、花王株式会社、牛乳石鹸共進社株式会社、株式会社コーセー、小林製薬株式会社、サラヤ株式会社、P&Gジャパン合同会社、株式会社ミルボン、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社、ライオン株式会社、アミタ株式会社、大栄環境株式会社