公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は10月1日、持続可能な消費行動を促進するために「買い物カゴ投票」を発案し、滋賀県立大学と共同で有効性を検証する研究を開始することを発表した。小売店での導入を想定した「買い物カゴ投票」は、生活者の選択を店舗に反映させることで、環境に優しいライフスタイルの障壁を克服する一助となることが期待されている。

「買い物カゴ投票」は、生活者がスーパーで買い物かごを返却する際に、二者択一の設問に対して「YES」または「NO」のかご置き場にかごを返却し、回答を行う仕組みだ。買い物かごを返却する行為を投票行動に変えることで、生活者がより良い選択を自発的に取れるように促す。行動をそっと後押しする、ナッジ型コミュニケーションの一つだ。

世界的な生活者インサイト調査「Healthy & Sustainable Living Report 2023」(調査会社Globe Scan)によると、環境によい生き方を妨げる要因として、日本では「高価である」「何をしたらよいかわからない」「不便である」「私の行動では何も変わらない」などの回答が目立ったという。

WWFジャパンは、このような状況を打破するために、生活者が意見を反映できる場を提供し、集団的な行動を促す「買い物カゴ投票」を考案した。この取り組みは、生活者の参画意識を高め、自身の投票によって店舗が変わる様子を目にすることで自己効力感につながると期待される。また店舗側は、「節電のために冷凍・冷蔵ショーケースに扉をつけても良いか?」などの質問を投げかけ、生活者の意見を取り入れた取り組みを実施できる。

WWFジャパンと滋賀県立大学人間文化学部生活デザイン学科の山田歩准教授は、「買い物カゴ投票」の実証実験を都内スーパーで行い、その効果を検証する。WWFは、行動科学を活用して効果的な介入をデザインするフレームワーク「SAVE NATURE PLEASE」を開発、世界各地で環境保全のための行動変容コミュニケーションを実践している。また、山田准教授は、社会心理学や行動経済学により「人を動かす」コミュニケーション手法の研究を行っている。

検証結果は特設ページで公開される予定。持続可能なライフスタイルを促す新たなモデルとなることが期待されている。

【プレスリリース】買い物カゴの返却が投票に。消費者とスーパーをつなぐ、 新たなナッジ型コミュニケーション「買い物カゴ投票」を WWFジャパンが考案、滋賀県立大学と共同研究
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