京都議定書誕生の地、京都市。法的拘束力のある温室効果ガス削減目標である同議定書の採択を機に、京都市民や事業者、行政、NGOなどが一体となって環境への取り組みが進められてきた。その後の意欲的な取り組みによって着実に成果を上げ、全国の自治体から注目される政令指定都市として認識されている。

京都市の取り組みのなかでも注目されているのが廃棄物政策だ。京都市の2019年度のごみの量(一般廃棄物/市受入量)は約41万トン。2000年度まで約82万トンと増加し続けたが、その後約20年でほぼ半減した。1人1日あたりの家庭からのごみ排出量も、2018年度には399gと政令指定都市で初めて400gを切り、さらには2019年度に396gまで減らしている(平成30年度環境省「一般廃棄物処理事業実態調査」より)。ごみ処理費用も2002年度のピーク時の367億円から2019年度には224億円(京都市循環型社会推進基本計画(2021-2030)(案)/出典:京都市)まで削減された(清掃工場は5工場から3工場へと減)。2020年8月には、株式会社Mizkan Holdings(以下、ミツカン)との協力関係の締結や、エレン・マッカーサー財団が主導するフード・イニシアティブへの加盟を発表し、世界に視野を広げている。

京都市各種資料を参考に筆者作成

今回、時代に即した政策を打ち出す京都市のごみ減量政策や、そのなかでも特に力を入れる食品ロス削減についてレポートする。レポートに際し、京都市環境政策局循環型社会推進部ごみ減量推進課課長補佐の小野 利恵さんと林 孝彦さんにお話を伺った。

京都市環境政策局循環型社会推進部ごみ減量推進課課長補佐 小野 利恵(冒頭写真右)氏
京都市環境政策局循環型社会推進部ごみ減量推進課 林 孝彦さん(同左)

京都市の廃棄物政策の取り組みの概要

先述の通り、ごみ量をピーク時(2000年度)の半減にすることを実現した京都市。ごみ減量政策を進める背景には、市独自の下記3つの課題があった。

  1. 市内には、クリーンセンターと呼ばれる清掃工場が3工場稼働しているが、20年間使用したのちに、2年にわたる大規模な改修が必要だ。その際には、2工場で稼働させなければならず、その量が39万トンとなる
  2. 367億円(2002年当時)という膨大なごみ処理費用がかかっている
  3. 市唯一の最終処分場である東部山間埋立処分地の残り期間は約50年(2020年時点)。延命化を図らなければならない

このように、全国にも共通に見られる廃棄物処理問題と京都市独自の課題が絡み合っている。

京都市の廃棄物政策の変遷

出典:京都市参考資料集より

京都市のごみ量(市受入量)は、2000年度まで全国同様に増加し続け、同年度にピークの82万トンに達した。2000年といえば、循環型社会形成推進基本法が制定された年でもある。

市は、2003年に「京都市循環型社会推進基本計画~京のごみ戦略21~」を策定。ごみの発生抑制や再利用などの「上流対策」、分別品目やリサイクルの拡大、廃棄物適正処理対策の3つが同計画の柱だ。

そして、2006年10月に家庭ごみ有料指定袋制を導入した。同制度を導入するとしばらくの間家庭ごみが減る。しかし、一貫して減り続けるかというと決してそうともいい切れないのだが、京都市では継続的に減り続けている

その後、次期の政策として、「2Rの促進」と「分別リサイクルの促進」を柱とした新・京都市ごみ半減プラン-京都市循環型社会推進基本計画(2015-2020)」を2015年に策定。ごみ量を2000年度の82万トンから2020年度の39万トンにまで削減することを目標に掲げた。

結果、2018年度・2019年度のごみ量(一般廃棄物)は約41万トン。目標年度の2020年度に39万トンを達成できるかどうかというところまできた。全国の総ごみ量排出削減幅(2000年度の5483万トンから2018年度に4272万トン(約20%削減))と比較すると、京都市の約半減の実績がいかに高いかがわかる。

この「新・京都市ごみ半減プラン」にはもう一つ特筆すべき内容がある。全国初の食品ロス削減目標を定めたという点だ。同プランでは、食品ロス排出量を2000年度の9.6万トンから2020年度の5万トンに削減することを目標に掲げる。食品ロス削減関連施策については、本記事後半で取り上げたい。

他自治体からも注目される、ごみ半減をめざす「しまつのこころ条例」の特徴

冒頭に述べた、ごみ半減をめざす「しまつのこころ条例」は、「京都市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例」の愛称で、2015年3月の条例改正でスタートしたものである。京都市の廃棄物政策を特徴づける政策として触れておきたい。しまつのこころ条例は、「2R(リユース・リデュース)」と「分別の促進」の2本柱で構成されている。

2R(リユース・リデュース)

6つの重点分野(①ものづくり②食③販売と購入④催事(イベント等)⑤観光等⑥大学・共同住宅等)に焦点を当てて実施義務と努力義務を定め、特に事業者から市民へのPRを中心に義務項目が並ぶ。PRを通じて、市全体の意識向上を図り、環境配慮設計や開発を促すことが意図されている。

また、一定規模を超える事業者には、2Rの取り組みを市に提出することを義務化した。

出典:2R実践ガイドブック(P5,6)より

京都市「事業者報告・届出義務制度」物品小売業者用 報告様式見本より

分別の促進

市民に対しては、これまで分別への「協力」を仰いでいたが、それを「義務」へ引き上げた。紙類などの資源ごみ分別ルールに違反した場合、ごみから個人を特定し指導することも可能になる。当時では横浜市などの3政令指定都市が導入しており、京都市も続く形となった。

市民・事業者・行政三位一体の推進を

同条例の根底に流れているのが、事業者・市民・行政が一体となってごみ削減を進めていくという考えだ。

市民・事業者・行政の3者の協力でごみを減らすという主旨が盛り込まれています。この枠組みがうまく機能するような形で各種制度設計を考えています。販売するのは事業、購入するのは市民、ごみを減らすことが環境に良いと伝えていくのは行政の役割で、その役割をしっかりと条文に表しています。他自治体から、この枠組みについてヒアリングを受けることがよくあります」と小野さんは話す。

全国初の食品ロス削減目標達成に向けた施策

京都市は、年に1度の家庭ごみの細組成調査を発表している(この細組成調査自体も1980年から継続的に行われており、さまざまな文献などに引用されている)。食品ロス削減目標が制定された2015年度のデータを見ると、家庭から出る燃やすごみに占める生ごみの割合は、43.5%。そのうちの36.9%が食品ロスという内訳だ。京都市は、生ごみの総量を減らすために、食品ロス対策に的を絞る。

2000年度の9.6万トンから2020年度の5万トンに削減する目標の達成は厳しい状況にあるというが、2000年度から2018年度までの18年間で3.4万トンが削減された。京都市の観光客数は、2000年に4050万人、2018年に5275万人(京都市観光総合調査)と1200万人増え、京都市の推計人口は2000年12月に約147万人から2020年12月146万人(京都市統計ポータル)と微減であるにも関わらず、全体としての食品ロスは大幅に削減できている。

京都市は、義務的施策に加え、啓発的政策を中心にさまざまな取り組みを打ち出している。まさに、事業者や市民とともにできることは何でもやってみようということが、功を奏しているといえるのではないだろうか。下記は、取り組みの一例である。

  • 販売期限の延長に係る取組の推進
  • 京都市食べ残しゼロ推進店舗認定制度
  • 2R行動ガイドの発行
  • 生ごみ3キリ運動の推進
  • フードバンク活動支援
  • 食べ残しお持ち帰りの推進
  • 30・10(サーティ・テン)運動
  • 食品ロス削減啓発オリジナルカードゲーム「食品ロスZEROマスター」を活用した啓発
  • 職員向け「フードドライブ」の実施
  • 「京都市食べキリ宣言」フォトコンテストの開催
  • 「京都市食べ残しゼロ推進店舗」スタンプラリーキャンペーンの実施 など

さらにリサイクルについては、水分が多い生ごみを取り出してバイオガス化し、エネルギー回収を最大化するバイオマス発電施設が、南部クリーンセンター第二工場を建て替える形で2019年に稼働した。

ここでは、「販売期限の延長に係る取組の推進」と「京都市食べ残しゼロ推進店舗認定制度」を見ていきたい。

販売期限の延長に係る取組の推進

食品ロス削減を目指すうえで欠かせないのが、いわゆる3分の1ルールの見直しだ。これは、製造日から賞味期限までの合計日数を3等分し、卸売業者は小売業者に3分の1を過ぎた日までに納品、小売業者は消費者に3分の2を経過した日までを販売可能な日とする日本の商習慣。1日でも過ぎてしまうと、ほとんどが廃棄されているという現状がある。(返品されてディスカウントストアに回される場合もある。)もともとは期限切れの製品が店頭に並ぶことを防ぐために、1990年代に製造メーカーと小売店によって定着した習慣とされる。国を挙げて対策が施されるとともに、昨今各業界間の連携によってルール緩和の動きも進んでいる。

京都市では、この3分の1ルールのうち販売期限に着目し、市内の食品小売店の協力のもと、2017年・2018年に販売期限の延長等による食品ロス削減効果に関する調査・社会実験」を実施。2018年度(10店舗参加)では、廃棄点数ベースで約3割の削減効果があった。消費者の約95%は「良い取り組み」と評価し、「販売延長を積極的に進める食品スーパーに対する好感度」も89%と概ね高評価。事業側も「販売期限延長による定量的な効果(廃棄削減効果)を ほぼ全員が認識」した。「それ(消費者の良好な反応)を事業者にフィードバックすると、好意的に捉えられているため、(食品ロス削減施策に対して)安心していただけるのではないかと考えています」と、小野さんは結果について受け止める。

2018年度 販売期限の延長等による食品ロス削減効果に 関する調査・社会実験 報告資料P8(公益財団法人 流通経済研究所)

その実験結果を踏まえて、2019年度から市内全域で取り組みを展開し、2020年度は食品スーパー・百貨店・ドラッグストア・コンビニエンスストアの66事業者827店舗が参加して取り組んでいる。このように、強制力をもたない形で自治体主導で推し進められていることが特徴といえる。

京都市食べ残しゼロ推進店舗認定制度

食べ残しゼロ推進店舗ステッカー飲食店・宿泊施設版(左)と食品小売店版(右)

食べ残しゼロ推進店舗とは、食品ロス削減を目的として、食べ残しゼロを目指して取り組む事業者を認定する仕組みだ。認定されると、食べ残しゼロに向けた実践を重ねることに加え、ステッカーの掲示や顧客への広報に協力する。下記のうち2項目以上を実践している店舗が対象である。

飲食・宿泊施設版

  1. 食材を使い切る工夫
  2. 食べ残しを出さない工夫
  3. 宴会、冠婚葬祭での食事等における工夫
  4. 食べ残しの持ち帰りができる工夫
  5. ごみ排出時の水キリ等の工夫
  6. 使い捨て商品の使用を抑える工夫
  7. 食べ残しゼロに向けた啓発活動
  8. 上記以外の食べ残しを減らすための工夫

食品小売店版

  1. 店頭での手つかず食品(賞味・消費期限切れ食品)の削減につながる取組
  2. 家庭での食べキリ・使いキリにつながる取組
  3. 惣菜等の製造・調理段階での取組
  4. イートインコーナー等での飲食に関する取組
  5. 食品ロス削減に関する自社の取組についてのPRや社内での情報共有
  6. フードバンク活動等への支援
  7. 食品リサイクルの推進
  8. その他 上記以外で食品ロスを減らすための取組

また、認定された店舗は、どのような取り組みをしているかが検索できる食べ残しゼロ推進店舗マップに掲載される。

食べ残しゼロ推進店舗マップ検索画面(飲食店・宿泊施設版)

店舗マップまで用意する徹底ぶりには、国際観光都市京都という側面もあるという。小野さんは、「日本全体として外食が多くなってきていることに加えて、京都市は観光で消費される食品廃棄物も多いので、事業での食品ロスが増えやすい都市だと認識して施策を立てています」と話す。

循環型都市に向けた次の一手

当初は大きな削減幅となる廃棄物政策も、やがて壁にぶつかるのは京都市に限ったことではない。小野さんは「最近は削減幅が小さくなっている」と話すが、次の一手としてもさまざまなものが実施・検討されている。ここではさまざまある次の一手のなかでも、「ミツカンとの連携」「エレン・マッカーサー財団フード・イニシアティブ参画表明」「京もの×プラスチック」の3つについて、「地産地消」の観点で伺った。

ミツカンとの連携により地産地消を強化し、食の設計に踏み込む

2020年8月には大手食品メーカーのミツカンと、「食品ロス削減に資する取組の連携に関する協定」を締結。食品ロスの取り組みでは初の民間企業のパートナーとなる。次の2点が当面の取り組みだ。

  • 「京都の野菜を無駄なくおいしく食べ尽くす」ピクルス及び鍋メニューの企画及びキャンペーンの実施
  • 京都の野菜を使った「ZENB PASTE(ゼンブ ペースト)」(普段利用している部分だけでなく,食べていない部分まで可能な限りまるごと使った植物でつくる「ZENB」シリーズの京野菜版)の開発(両者からのプレスリリースを抜粋)

両方とも地産地消の促進を通じて、フードサプライチェーンを短くし食品ロスを削減するねらいがある。「今回を機に、(地産地消を所管する)農林企画課と京野菜の普及推進等の政策を進めていきます」と小野さんは話す。まさに、食品ロス削減と地産地消推進を結びつける戦略だ。現在、「どの野菜で商品化するか、市内の農家にご協力いただきながら、ミツカンと協働している」(小野さん)という。

エレン・マッカーサー財団フードイニシアティブ参画表明

ミツカンとの連携と同時に発表されたのが、エレン・マッカーサー財団が主導するフード・イニシアティブへの参画表明だ。同市の食品ロス削減を中心とした食に対する取り組みを海外へ発信するとともに、同イニシアティブに参加している他都市の優良事例を政策に活かすことがその目的である。ミツカンは先に同イニシアティブに参加しており、同社を通じてエレン・マッカーサー財団より京都市に参画の打診があったそうだ。

同イニシアティブは、エレン・マッカーサー財団によるレポート「Cities and Circular Economy for Food」の発表後に設立された。イニシアティブの目的は次の3点である。

  1. Source food grown regeneratively, and locally where appropriate(再生可能な農業と地産地消の促進)
  2. Make the most of food(食品利用の拡大)
  3. Design and market healthier food products(健康な食を設計し流通させる)

現在、ロンドン・ニューヨーク・サンパウロを戦略パートナーとして、バルセロナ・ボゴタ・ミラノ・トロントなど20以上の都市と、ダノン・ネスレ・イケア等の民間のパートナーが参画している。

京都市の同イニシアティブの参画のねらいは先に述べたとおりだが、小野さんは、もう一つの目的を平たく強調した。「イニシアティブに加盟し、私たちの取り組みを世界に知ってもらえることは、京都市民の方にとっても誇りになります。いつもは市民の方にお願いするばかりですが、市民の方がプレーヤーだと私たちは認識しているため、京都市の取り組みを誇りに思っていただければという意味合いもあります」

「京もの」×プラスチック政策

京都市はごみ削減の一環として、プラスチック政策にも意欲的に取り組んでいる。これまでも、プラスチック分別収集や発生抑止に取り組んできたが、12の「すぐにできる」取り組みを定めた「京都市プラスチック資源循環アクション ~プラスアクション12~ 」を2019年10月に公表した。

そのうち12番目が「プラスチックを使わない優れた『京もの』の情報発信・利用促進」。京都らしい施策として打ち出された。

この「京もの」の情報発信とプラスチック利用削減を組み合わせることについて、小野さんはこのように語る。

「伝統産業を通じた啓発を、プラスチック発生抑制の文脈で実施します。木や紙でできたうちわやくしがプラスチックに置き換わっていますが、つげ櫛・京せんす・風呂敷などの伝統的な『京もの』に目を向けていただきたいと思います。まずは、啓発冊子を作って、特に20・30代の若い世代の市民に(京ものを)知っていただきたいと考えています。またこれは同時に、伝統産業の復興や経済政策も兼ねています。それが結果として使い捨てプラスチック削減につながれば」と話す。

サーキュラーエコノミーの視点から

以上、京都市の廃棄物政策や食品ロス削減対策について見てきたが、同市の取り組みをサーキュラーエコノミーの観点からも考えてみたい。

2R推進を通じて、設計・開発を推進

廃棄物処理というとリサイクルが思い浮かぶが、リサイクルは優先順位としては高くない。欧州の廃棄物ヒエラルキーや日本の循環型社会形成推進基本法では、リサイクルの前に発生抑制(リデュース)と再使用(リユース)があり、「技術的に及び経済的に可能な範囲で」(同法第七条)講じられるべきとしている。また、2015年に閣議決定された第三次循環型社会形成推進基本計画では2Rの推進を強化していくことが打ち出されたが、京都市の2Rは同計画を受けて具体化した。

2Rの一例として、しまつのこころ条例の6つの重点分野の一つである「ものづくり」の項目を下記に挙げてみたい。

「ごみの減量に配慮した製品(長く繰り返し使える環境にやさしい製品や,容器包装の少ない製品など)の開発や普及の促進(PRポイントのラベリングなど)に努めてください。」

2R推進を通じて、環境配慮設計や開発を促進していることがわかる。さらに、食への取り組みについては、ミツカンと提携することで、食の設計にアプローチし、地産地消と食品ロスを同時に推し進めている。

2Rをそのまま終わらせるのではなく、製品ライフサイクルの上流にもアプローチする視点を持ち合わせていることが特徴だと考えられる。

全ステークホルダーを巻き込む

この事業者・市民・行政の三位一体の取り組みを推進する施策は、全国の自治体で進められている。京都市の場合は、これを仕組みとして位置付け、半ば強制力も活用する。ただ、行政も自組織の役割を認識し、さまざまな市民啓発促進や民間企業・エレン・マッカーサー財団との連携など、硬軟織り交ぜながら次々と新しい施策を打ち出している。

京都市の取り組みは高い評価を得ている。ただ、この政策が伝家の宝刀だという施策はない。特に財政面(クリーンセンターの費用)の効果を訴え続け、PRを強化し全ステークホルダーを巻き込みながら地道に取り組んでいることが功を奏している。この全てのステークホルダーを巻き込んで推進する点に力を注いでいる。

地域特性を生かしたサーキュラーエコノミー

京都といえば、古都。京野菜や京ものといった京都の「伝統」を活用しない手はない。これを食品ロス削減やプラスチック削減の文脈に位置づけていることが特徴的だろう。エレン・マッカーサー財団のフード・イニシアティブでは、近郊農業による都市の繁栄が謳われているが、地産地消の取り組みをミツカンや市内農家と一緒に取り組む。また、京ものをつくる伝統産業を振興させながらプラスチック問題にアプローチ。地域特性を最大限に活かそうとしていることが特徴である。

そもそも、愛称「しまつのこころ条例」の「しまつのこころ」は京都に流れる文化を反映している。以下、同市の2R行動ガイドから抜粋する

京都市には豊かな自然と長い年月、多くの人の手に育まれてきた伝統行事・伝統文化・工芸・食文化などがあり、また自然と共生しながら生活してきた知恵や工夫・心構えとして、門掃きや打ち水、「しまつのこころ」などがあります。

「しまつのこころ」とは、いのちや資源、それを活かす作り手の皆さんへの感謝のこころから生まれてくる考え方であり、「無駄遣いしない」、「倹約・節約する」という意味で用いられ、生産から廃棄のことまで考えて、「良いものを長く使う」ようにする。電気や水の使用を節約するなど2Rにもつながる考え方です。これは季節の食材を余すところなく使い切る京都市の食文化などにも息づいています。

さいごに:循環型都市に向けて

これまで見てきたように、京都市は、循環型都市移行に向け、さまざまな施策を通じて意欲的に目標達成に向けて邁進する。しかし、「雑巾を絞りきった」先には、今後の削減幅もより小さくなると予想される。時代に即した新しい取り組みが必要となることを京都市は認識している。

小野さんは、「環境は経済をストップさせるものではなく、経済と両立するものであるという考え方がスタンダードになってきているのではないでしょうか」と話す。今後は、今まで以上に経済政策としての環境政策を、循環型都市に向けた「促進剤」として打ち出していくと考えられる。京都市の世界への発信も含めて注目していきたい。

【参考】京都市参考資料集
【参考】ごみ量の推移(京都市)
【参考】京都市循環型社会推進基本計画~京のごみ戦略21~
【参考】新・京都市ごみ半減プラン-京都市循環型社会推進基本計画(2015-2020)
【参考】2R実践ガイドブック
【参考】京都市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例の一部を改正する条例(しまつのこころ条例)
【参考】平成30年度 販売期限の延長等による食品ロス削減効果に 関する調査・社会実験 報告資料
【参考】食べ残しゼロ推進店舗マップ
【プレスリリース】【広報資料】エレン・マッカーサー財団フード・イニシアティブへの参画及び株式会社Mizkan Holdingsとの「食品ロス削減に資する取組の連携に関する協定」の締結について
【プレスリリース】ミツカングループが京都市と食品ロス削減に関する協定を締結「京都の野菜を無駄なくおいしく食べ尽くす」~協働でエレン・マッカーサー財団のフードイニシアティブを推進~
【参考】Cities and Circular Economy for Food
【参考】京都市プラスチック資源循環アクション ~プラスアクション12~
【関連記事】京都市、エレン・マッカーサー財団のフード・イニシアティブへの加盟を発表。食の循環に向けた取り組みを加速