サーキュラーエコノミーの最先端ともいえる欧州で、建築業界はどのような変化を歩んでいるのだろうか。本連載では欧州の建築循環型建設連合(CBC)の報告書などの資料調査をもとに、サーキュラーエコノミーへの移行に向けて奔走する欧州建築業界の現状をお伝えしている。
第1回でお伝えしたように、サーキュラー建築が普及する素地が法規制によって整えられるのはまだ時間がかかりそうだ。では現状、散見される欧州のサーキュラー建築プロジェクトはどのように成り立っているのか。第2回では、欧州におけるサーキュラー建築の資金事情を覗いてみたい。資金調達の苦労は日本と共通する部分も多く、CBCが提起する策にうなずきたくなるのは筆者だけではないはずだ。
今最も頼れるお財布は公的ファンド
サーキュラー戦略にはお金がかかる。第1回で記したように資材費よりも人件費が高い今の市場では、資材を減らす努力をすればするほど費用が高くつきがちだ。従来とは異なる手法で計画を進めれば、それだけで関係者の話し合いに時間を費やし、人手がかかり費用は増える。
そんなサーキュラー建築の主な資金源は、公的ファンドだ。CBCによると、これまでのサーキュラー建築プロジェクトは欧州の研究開発・イノベーションを促進するためのプログラムであるHorizon 2020や域内格差是正と成長のための基金である欧州地域開発基金(ERDF)から資金を得ていた。現在欧州投資銀行は「循環型経済に関する共同イニシアチブ(JICE)」を通してサーキュラー関連プロジェクトや事業者に資金を提供している。ローマの歴史的な建物を新たな用途に再生させるPalazzo delle Finanzeが一例だ。高い投資リスクを伴うイノベーティブなプロジェクトには、欧州戦略投資基金(EFSI)、InnovFinなどが資金を出している。
ときには近隣の自治体同士が協働で資金を出し合うこともある。欧州が発端となった「世界気候エネルギー首長誓約」には欧州の数千の自治体が加わり(日本も29の自治体が加盟)、サーキュラリティ向上に向けた取り組みも進められている。
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