2023年7月に欧州委員会による使用済自動車規則案が発表されてから早一年になる。今回の規則案は、主に自動車の下流部門に焦点を当てた現行指令に対し、自動車の循環性を促進することを主目的としており、そのためのツールとなる新要件の策定と既存要件の強化を行う大幅な改正となる。規則案の内容は、影響を受ける自動車関連業界へ大きな波紋を投げかけているが、そのなかでも特に注目を浴びている要件の一つは、プラスチックの再生材最低含有率目標だ。

自動車へのプラスチック再生材使用の推進

EUのプラスチック戦略は、プラスチック使用の削減とリサイクルを推進しており、また原稿のサーキュラーエコノミーアクションプランにおいても、プラスチックの循環性向上が推し進められる。こうした政策を背景に、今回の使用済自動車規則案要件には、最低25%のプラ再生材を新車へ使用することが義務付けられ、そのうちの25%は使用済自動車由来でなければならない。このターゲット数値は、欧州委員会の研究機関であるJRC(Joint Research Centre)が実施した事前調査報告に基づき決定されているが、その数字は自動車業界にとっては決して容易に達成できるものではないようだ。少なくとも欧州の自動車メーカーの多くは「現実的ではない」との声を挙げている。

では、現在欧州の自動車業界におけるプラスチック再生材の使用状況はどうなっているのか。欧州委員会の調査によると、「フロントランナー」とされる自動車OEMとそのサプライヤーでは、新車への熱可塑性樹脂の再生材約20%前後の使用を実現しているとされている。ただし、現在は再生材使用における報告義務も立証法も確立されておらず、調査は関係者への聞き取りに留まっており、この数字は第三者による科学的な実証に基づいたものではない。

自動車由来の樹脂のみならず、プラ再生材使用については、処理技術とコストのバランスや再生材の品質の問題など、まだ多くの障壁があることは周知の事実である。一方で、規制による再生材含有ターゲットの設定は、新たな事業機会と投資へのインセンティブおよび新市場の構築を牽引するものでもある。そのため、一定のプラスチック関連業界は自動車業界とは対象的にこの動きを歓迎しており、それぞれのセクターにより反応は様々である。

ここでは、欧州の自動車関連業界のみならず、グローバルな関心事項となっている使用済自動車規則案要件におけるプラスチック再生材含有率最低目標について、欧州の関連業界の反応と意見を報告したい。

対応を迫られる業界の反応は?

欧州自動車工業会(ACEA)

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