オランダ、アムステルダムに本拠を置くサーキュラーエコノミー推進団体 Circle Economyは3月11日、Circular Jobs Initiativesの発足に合わせ、サーキュラーエコノミーへ移行することで労働市場に起こる変化と講じるべき策を取りまとめたレポート「Jobs and Skills in Circular Economy」を発表した。Circle Economyは同レポートを通して、サーキュラーエコノミーが労働市場に与える影響や新たに需要が増減する分野を示した。また、サーキュラーエコノミーへの移行に際し、環境・経済・社会とともに、すべての人が豊かになるために必要となる雇用対策や労働環境を明らかにした。同レポートの概要を報告するとともに、サーキュラーエコノミーと労働市場の関係について考察する。

サーキュラー化が労働市場に与える影響

サーキュラーエコノミーへの移行が、この先10年から20年の間に労働市場にもたらす課題や機会は大きい。サーキュラー戦略上、資源管理部門の担う役割が大きくなり、さらにサービス・建設・製造・物流の分野も重要性が増す。資源の再利用やリサイクルには、製品の分解や分別・清掃・改装が必要となるため、工程は複雑化する。既存の資源管理の分野には、修理・サーキュラービジネスモデル確立、生産工程管理などより多くのことが求められるようになるため、異なるスキルの組み合わせや新しい働き方への需要が高まることが予測される。同時に、サーキュラーエコノミーへの移行は原材料からの製品製造や採掘産業における雇用減少を引き起こすとみられる。サーキュラーエコノミーは循環する(Closed-Loop)バリューチェーン群を通して、より地域に根ざした経済を創出し、地域経済と雇用を強化する可能性が高い。また、サーキュラー化はデジタルテクノロジーや自動化、大規模な修繕・改修プログラムをともなうため、労働市場に大きく影響を与える。

新しく需要が高まる仕事

サーキュラーエコノミーへの移行は、仕事そのものを再定義する。人的資源を含めた資源の活用方法が見直され、多くの仕事が生み出される反面、多くの仕事が不要になるとされる。サーキュラーエコノミーが実現すれば、すべての仕事に影響が及び、今までとは異なる考えが求められる。しかしそのなかでも特に重要性が増す仕事は次の通りだ。

1. サーキュラーエコノミーの核となる仕事

この仕事は、直接的に原材料の循環に影響を与える責任のある仕事、つまりコア・サーキュラージョブ(サーキュラーエコノミーの核となる仕事)だ。再生可能エネルギー・修繕・廃棄・資源管理の分野の仕事などがこれにあたる。

すでにあるものを保持・保全する仕事

資源を維持・修繕し、価値を高める。また、寿命を延ばしたり、回収の戦略を立て再度使えるように作り変える。家電や機械・車両などの修理工などが挙げられる例だ。フォーマルまたはインフォーマル教育を通して高い技術力を養うことが重要となる。

ごみを資源として活用するための仕事

廃棄されたものを活用する仕事は、一度(もしくは複数回)使用された資源を使える状態にし、再利用・リサイクルする役割を果たす。加工業者として、廃棄された資源を家畜の飼料にするなど、廃棄物から価値のあるものを仕分けて、販売可能な製品にする。仕事自体は実務的なスキルが求められるが、再販価値の高い資源を目利きできることが重要となる。

再生可能資源を選択・配置する仕事

再生でき、無害の再利用可能な資源を効率的に資材やエネルギーとして選び、使う。農学アドバイザーは、堆肥や残渣を利用した有機肥料を使って、土壌を健康で豊かに保つための栄養について助言する。高い対人スキルと生態系の知識が求められる。

2. サーキュラーエコノミーの実現を後押しする仕事

このタイプの仕事は、サーキュラーエコノミーへ移行するための仕事を後押しする。リース・エンジニアリング・デジタル技術などの仕事がこれに該当し、社会のサーキュラー化に直接的に貢献しているものを指す。

未来を見据えたデザインをする仕事

デザイン(設計)工程のなかでシステム思考の視点を用いることで、製品として利用されるにはどのくらいの耐久性にすべきか考え、適切な資源を選ぶ。サーキュラー機器エンジニアは、製品が使用された後、部品や資源として回復し、再利用できるように設計する。技術の観点から複雑な課題解決に長け、未来を見据えた設計をすることが求められる。

デジタルテクノロジーを駆使する仕事

デジタル・オンラインプラットフォームやテクノロジーを通して資源の利用を追跡・最適化し、サプライチェーン上のプレイヤー同士のつながりを強化する。ITマネージャーは物理的な資源を追跡するためのデータ管理の仕組みを作る。情報をどのように処理することで資源を本質的・効果的に管理できるかを理解し、実装するための知識やスキルが求められる。

ビジネスモデルを再構築する仕事

製品やサービスをどのようなビジネスモデルの上で提供すると価値が高まり、社会から必要とされるか見極める。需要計画を主な仕事とし、需要と供給を把握することでビジネスモデルを修正していく。論理的思考と推察力が求められる。

共有価値を創るコラボレーション・メーカー

サプライチェーン・社内外・公的機関らと協業することで透明性を高め、共有価値(Shared Value)を創る。購買のプロフェッショナルは中古資源への需要を高めるため、新しいサプライヤーを見極めてつながる。起業家マインドと高い対人スキルが求められる。

3. 間接的にサーキュラーエコノミーをサポートする仕事

これらの仕事は、サーキュラー化を主導・確立していく仕事を間接的にサポートする。教育や物流、公的機関などがこれにあたる。例えば、一度使われた製品を回収・分解・再利用するには、物流・パッケージから消費者と直接もののやり取りをする宅配便などのサポートが必要不可欠だ。また、サーキュラーエコノミー戦略上必要となる知識やスキルを教える教育者へのニーズも高まる。

サーキュラーエコノミー時代に必須の雇用対策

サーキュラーエコノミーへの移行に向け、着実に取り組みは進む。移行を確実なものとし、その後の社会が適切に機能していくためには、労働市場もまたサーキュラーエコノミーに対応できるものに変わっていく必要がある。しかし労働市場の変化の必要性についてはまだ理解が進んでいないのが現状だ。例えば、サーキュラーエコノミーの調査ひとつとっても非常に技術的で、マテリアルフローについて深い知識が必要となる場面も多い。サーキュラーエコノミーへと移行することで、新たな雇用機会の創出、雇用水準の向上、世界的な価値の再分配を通して不平等を減らすことなど、労働市場は多くの恩恵を受ける。労働者の権利を守るためにはどのような労働条件が必要となるかを注意深く監視し、迅速に対応していくことが求められる。具体的には、次の3つの柱を軸にした施策が変化をポジティブなものにしていくために必要だ。

教育・再教育

サーキュラーエコノミーで必要となる知識やスキルを教育や研修に組み込み、すべての人が参加できるように政府が支援することが重要だ。これまでの教育は一度学校を出たら終わりの「リニア」型だったため、学び直し・生涯教育の仕組みを確立し、広く一般化することが求められる。また、サーキュラーエコノミーにおいて必要となるスキルについて認識や調査が不足しているため、政府や企業は教育・再教育への投資に二の足を踏んでいる。今後発生しうるスキルギャップを明確化することで、政策や仕組みを導き出すことが可能になる。

質の高い仕事

適正な対価が支払われ、安全で、社会的意義を伴う仕事を、政府・市場メカニズム・労働組合・企業・規制が下支えする必要がある。手工芸や修理・仕分けなどの実務的な仕事は、簡易なものとしてこれまできちんと価値が認識されず、魅力的な仕事として認識されてこなかった。これらの仕事がサーキュラーエコノミーにおいて重要な役割を担うことを社会に伝える必要性が増す。この分野での専門性が磨かれ、雇用が進んでいくように、それに見合った労働条件を整え、法整備で後押しするように進めていくことが重要となる。

インクルーシブな労働環境

これまで何らかの障壁によって労働市場から遠ざけられてきたすべて人に、スキルレベルや居住地・人種・年齢・性別・学歴などに関わらず、就労の機会が与えられることが重要となる。この分野で活躍するソーシャルビジネスと公的機関・民間企業が協業し、テクノロジーを効果的に利用することで、水準の高いインクルーシブな雇用環境を創出することが求められる。

これまで環境面や経済的側面から語られることが多かったサーキュラーエコノミーだが、適切な雇用対策や労働環境の整備なしには達成できない。持続可能な社会を実現するためには、サーキュラーエコノミーへと移行することが労働市場にどのような変化をもたらし、どのような対策が必要となるかを政府・民間企業・教育機関・ソーシャルセクターそれぞれが理解し、連携しながら進めていくほかないのだ。

【参考】Jobs in Circular Economy レポート全文
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