欧州委員会は7月13日、使用済み自動車規則案(ELV規則案)を発表した。2021年の現行指令の見直し作業報告書発表から、予定を大幅に上回る期間が費やされた法案作成となった。
金属を多く使用する自動車は、その有価性ゆえ使用済となった際部品のリユースやリサイクルが伝統的に行われてきた。そのため、リニア型経済時代においても、リサイクルインフラが古くから確立されている数少ない製品の一つである。現行の使用済み自動車関連規制のもとでも、原料回収ターゲット・部品のリユース・新車への再生材使用など、2015年以来EUがサーキュラーエコノミー政策のもとで推進する項目の一部がすでに義務付けられてきた。そのため、使用済み自動車は、さらなる循環性を担うものとして、サーキュラーエコノミー政策に基づき改正される対象規制のなかでは最優先とされる後続規制のモデルでもある。
循環性を推進するインフラが形成されている欧州の自動車リサイクル業界ではあるが、その一方で大きな問題も抱えており、それゆえに二面性を持っている。一方で、現行の指令下では大部分の加盟国が、使用済み自動車からの原料回収率95%、リユース率85%というターゲット数値を達成し、数字上は循環型を実現する。他方では、回収される原料の質は低く、その利用用途はセメント用など限定的だ。また、使用済みとなったはずの自動車のうち行方がわからないものが全体の3割を占めるという問題も横たわる。これらのなかには、不法な輸出に伴い環境負荷の高い方法で処理・廃棄されるものも含まれており、輸出先の環境を汚染していると考えられている。インフォーマルセクターと呼ばれる政府による認定を受けていない自動車解体業者の存在も長期的にはびこる問題である。こうした業者は規制で定められた処理法に従わず事業を展開しており、結果的に不法業者の存在も環境負荷に大きく影響している。
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