アミタ株式会社はこのほど、デジタルアートと*NFTを活用したスマートフォン用アプリケーションを開発、商業施設やオフィスでの資源回収を通じて施設利用者のコミュニティづくりを促す新たなサービス「MEGURU CLUB(めぐるクラブ)」の運用を開始した。

同社は神戸市など全国3自治体で市民が利用できる互助共助コミュニティ型の資源回収拠点「MEGURU STATION®」を運営しており、今回の取り組みにおいて商業施設やオフィス向けの新たなスキームを展開していく。

*NFT(Non-Fungible Token):ブロックチェーン技術を利用してデジタル資産の擬似的な保有を表せる

施設利用者のファンやリピーター層を増やし、資源循環も促す

今回開発したアプリ上では、資源回収ボックスのある商業施設やオフィスの情報が表示される。各拠点に設置された資源回収ボックスなどにチェックイン(参加記録)用のQRコードを配置し、ユーザーによるチェックイン数を「GOODポイント」として可視化。GOODポイントの量に応じて、利用者お気に入りの拠点のデジタルアートが成長し、アプリ内で各利用者に付与されているメンバーズカードのステータスが変化する。

拠点を訪れ現地でチェックインしたユーザーは、その拠点の「デジタルアートNFT」を受け取れる。なお、NFTを受け取るにはMetaMaskなどの*ウォレットアプリが必要。

*ウォレットアプリ:NFTなどのトークンを安全に保管し、取引するためのデジタルウォレット

デジタルアートは、盆栽をモチーフとした作品をアーティストのayat 氏が制作(出典:アミタ)

同アプリは、LINEをインストールしていれば誰でも利用できる。ユーザーは新規登録用QRコードをスキャンし、「MEGLOOP」LINE公式アカウントの友だち追加と必要情報の入力、所属拠点を選択することで、デジタルアート生成機能が利用できる。

新たに開発したアプリ「MEGLOOP」の使い方(出典:アミタ)

各拠点にとっては、MEGURU CLUBを導入すればアプリを通じたリピーターやファン層の増加によるプレイスの利用率・利益率の向上につながる。加えて、各拠点での資源循環の促進によってデジタルアートが成長することで、社会関係資本の増幅を可視化でき、各拠点のオーナー・テナント・ユーザーすべての協力関係強化が期待できる。利用者にとってはデジタルアートの成長やNFTを通じて資源循環への参画を可視化でき、充実感や達成感を得られることにもつながる。

PP製豆腐パックをリサイクル、乗用車の電子機器コネクターへ

MEGURU CLUBの導入第1号となった複合施設ボーナストラック(東京都世田谷区下北沢)では今後、豆腐パックを中心としたポリプロピレン(PP)製のプラスチック資源と衣類を回収。新車に必要なプラスチックの25%以上を再生プラスチックにするよう求める欧州委の使用済み自動車規則案(ELV規則案)を見据え、回収したプラ資源を自動車内の電子機器に使われるコネクターに再生する計画だ。

MEGURU CLUBの開発責任者を務めたアミタ代表取締役社長・岡田健一氏によると、海外ではPPに特化して市民からプラ資源はほとんど回収されておらず、前例のない社会実験になるという。

「市民の皆さんになじみのある豆腐パックはほぼすべてPP製で、白色なのでさまざまな製品に加工しやすい。日本の自動車業界で必要となるPPは年間25万トンであるのに対し、業界は5万トンしか確保できないのが現状です。プラスチックは生活者からの排出が全体の半分で、産業由来の排出分だけではリサイクルプラスチックを賄えません」

自動車に限らずさまざまな製品で再生プラスチックの需要が高まっていく状況を考えると、生活者である一般市民から状態の良いプラスチック資源を恒常的に回収できる拠点や仕組みが欠かせないのだ。

ボーナストラックで開催されたサービスリリース記念イベントでは、プラスチックの材質を判別する「ぷらしる」を使って、参加者同士で身近なプラスチック製品の素材を確認した(筆者撮影)

プラ素材の統一、素材別の回収を当たり前にするために

日本の容器包装の表示では、素材の種類まで記載することは義務づけられていない。このため、プラスチックなら「プラ」とのみ記載されていることが多い。これでは、プラ素材ごとに回収して良質なリサイクル品の生産につなげられない。アミタの岡田氏は言う。

「たとえば、ペットボトルキャップにはPPのものとそうでないものがあります。(中略)ぷらしるで判別してみると、プラスチック素材ごとの違いが分かるので、『どうして違うのか?』と考えるきっかけになります。ペットボトルキャップの素材も統一した方がいいという流れを作るなら、一人ひとりがまず気づくことが大切だと思います」

資源を持ち寄ることをきっかけに、各拠点のユーザー同士の偶然の出会いを促進してコミュニティの醸成を目指すMEGURU CLUB。コミュニティ一人ひとりの力を借りながら、プラスチックリサイクルのレベルをさらに一段引き上げられるか注目だ。

【プレスリリース】
デジタルアートとNFTで資源循環とコミュニティ醸成を促す 新サービス「MEGURU CLUB」を商業施設・オフィス向けに提供開始~7/15、ボーナストラック(下北沢)でリリースイベントを開催~
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*冒頭の画像は、MEGURU CLUBの第1号拠点であるボーナストラックに設置された資源回収ボックス(筆者撮影)