粘着材料・ラベル製品メーカーの米Avery Dennison Smartracはこのほど、レポート「失われた1000億ドル:サプライチェーン廃棄物の本当のコスト」を刊行した。世界の企業300社以上と7500人以上の消費者を対象とした調査をもとに、日本・米国・英国・フランス・中国におけるサプライチェーンの現状と廃棄物問題に焦点をあてた。

同調査の目的は、企業が直面する世界的なサプライチェーンの廃棄物問題への理解を深め、これらの問題に取り組む方法を探求することだ。同レポートは、サプライチェーン上の製品破損・過剰⽣産による損失は世界で1631億ドル(約23兆円)にのぼり、製品購入時にサステナビリティを重視する消費者は30%のみであることなどを明らかにした。同レポートの概要は、以下のとおり。

世界の消費者動向

  • 世界の消費者が最も重視しているのは品質で67%、2位はコストで60%、3位は耐久性で48%だった。サステナビリティは30%で、14の選択肢のうち9位に留まった
  • 消費者の52%が、⾐料品を購⼊する際に「消費者に届くまでの製品の透明性が重要である」と回答
  • 消費者の43%が、化粧品を購入する際に「エシカルな原料調達・加⼯・輸送の透明性が重要である」と回答

⽇本の消費者動向

  • 日本の消費者が最も重視しているのはコストで72%、2位は品質で68%、3位はデザインで53%となっており、世界の消費者動向と異なる
  • ⽇本の消費者は世界平均と⽐べて、商品情報が入手できる技術の利⽤意向が低い。例)「製品の購⼊時にQRコードを使⽤して積極的に製品・ブランド情報を確認する」と答えた日本の消費者は、⾷品購⼊時は世界平均の53%に対し40%、化粧品購⼊時は世界平均の53%に対し41%
  • ⽇本の消費者は世界平均と⽐べて、メーカーやブランドによるサステナビリティに関する取り組みに懐疑的である。「ブランドのサステナビリティに関する取り組みを信じる」と答えた消費者は、世界平均の45%に対して⽇本は31%

世界の企業の動向・取り組み

サプライチェーンにおける廃棄

  • 在庫の約8%が損傷または廃棄されている。これらの損失は1631億ドル(約23兆円)にのぼり、企業の年間利益の3.6%に相当する。8%の内訳は、店舗に並ぶ前にサプライチェーン上で損傷した商品が4.3%、過剰⽣産により廃棄された在庫が3.4%である
  • 全⾷料品在庫の約10%が、サプライチェーン上での腐敗・汚損・破損・過剰⽣産により廃棄されている
  • 企業はこれらの問題を認識しているが、解決に必要な予算を投じていない
  • サプライチェーンのレジリエンス実現に向けた上位3つの課題として、「上層部からの⽀持の⽋如」「異種システム統合の課題」「社内関係者の連携不⾜」が挙げられた

サステナビリティ向上への取り組み

  • 60%の企業が、サステナビリティの優先順位は高いと回答した
  • ⾃社のサステナビリティへの影響のうち、28.9%がサプライチェーンに起因すると述べたが、サプライチェーンのサステナビリティ向上に特化して技術投資している企業は4.4%のみ

技術ソリューションの導入

  • 61%の企業が、製品可視化のためのソリューションをすでに導⼊している。34.6%の企業がサプライチェーンの可視性とトレーサビリティの向上を⽬指すことを計画しており、ソリューションを導入する企業は将来的に95%以上になると考えられる
  • ブロックチェーンへの投資は、飛躍的に拡大すると推測される。調査対象企業の97%が、5年以内に同分野への投資を計画している(現在投資している企業は12%)。5年以内に約99%の企業がスマートデバイス(センサーやドローンを含む)の利⽤を、97%が産業⽤IoTの利⽤を計画している

今後、サプライチェーン上の廃棄問題を解決するべく、技術ソリューションを活用して透明性確保とサステナビリティ向上に取り組んでいくことが企業に期待されるとともに、消費者と企業が共に持続可能なサプライチェーンを構築していくことが望まれる。

※ 同調査では、サプライチェーンを「原材料の搬⼊から商品・素材の製造、最終消費者に届くまでの全工程」と定義している

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*記事中の画像の出典:Avery Dennison Smartrac