キヤノン株式会社は、リサイクル現場でプラスチックの種類を高精度に同時選別する独自技術を用いた選別装置を新たに立ち上げ、一般向けの受注を6月6日に開始した。プラスチックを判別する際、従来の方式では黒色とその他の色の判別が難しいとされていた。この課題を解消するとともに、リサイクル機器分野に参入する。

廃棄されるプラスチックの約2割が、新たな製品の材料として再生利用(マテリアルリサイクル)されるが、その他は燃料や未活用のまま焼却されている。また、再生利用する際はプラスチックの純度が求められるため、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンからなるプラスチック)やポリプロピレン(PP)など、種類を正確に判別する必要がある。

しかし、家庭用電化製品や自動車の内装に使用される黒色プラスチックは可視光を通さず反射もしないため、現状のプラスチック判別方法「近赤外分光方式」では種類の判別が難しいという課題があった。再生利用を加速するためには、高精度なプラスチックの種類選別と選別作業の生産性向上が求められていたのだ。

キヤノンの新プラスチック選別装置「TR-S1510」は、「トラッキング型ラマン分光技術」によって、黒色を含むプラスチック片の高精度かつ高速な同時選別を実現した。

ラマン分光方式によるプラスチックの判別では、レーザー光をひとつひとつのプラスチック片に照射し物質の分子情報を取得するため、黒色プラスチック片を測定できる。ただし、黒色は散乱する光が少なく、計測に時間がかかるため、高速に多量の処理が必要なリサイクル現場での活用には課題があった。

トラッキング型ラマン分光技術は、ラマン分光方式とキヤノンの計測・制御機器を組み合わせて開発した、レーザー照射を走査する技術。1.5m/秒の搬送スピードを保ちながら、最大1t/時の選別が可能だという。これまでの近赤外分光方式では選別が難しかった黒色プラスチック片も、その他のプラスチック片とともに同時選別することができる。

プラスチック片のトラッキングや計測を行うモジュール、ベルトコンベヤーの組み合わせを変更することで、顧客の処理量や設置スペースに合わせた装置のカスタマイズにも対応する。同社では、同機を含む「TRシリーズ」の受注を開始。リサイクル機器分野への参入で、サーキュラーエコノミーの構築に貢献するとしている。

【プレスリリース】種類判別が難しい黒色のプラスチック片も計測できる高精度選別装置を受注開始 リサイクル機器分野に参入しサーキュラーエコノミーの構築に貢献
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