キヤノン株式会社はこのほど、リサイクルにおいてプラスチック片の種類を選別する際に判別が難しい黒色プラスチック片と他色のプラスチック片を高精度に同時選別できるトラッキング型ラマン分光技術を開発した。キヤノンが今回発表した内容は、以下のとおり。

プラスチックをリサイクルするには、プラスチックの種類を正確に選別する必要がある。現在、プラスチック片の種類選別において近赤外分光法が主流だが、黒色プラスチック片は可視光を通さず反射もしないため選別できず、多くがサーマルリサイクルされている。なお、黒色プラスチックは、家庭用電化製品や自動車の内装などに多く使用される。

ラマン分光法は、レーザー光をプラスチック片に照射して物質の分子情報を取得する測定法で、黒色プラスチック片も計測できる。しかし、黒色プラスチック片は散乱する光が少なく、他色のプラスチック片に比べて計測に時間がかかるため、高速に多量の処理が必要なプラスチック選別への適用は困難だった。

そこで、キヤノンはラマン分光法と同社の計測・制御機器を組み合せ、プラスチック片の色ごとに計測時間を確保し、黒色も含めたプラスチック片を高速かつ高精度に同時選別するトラッキング型ラマン分光技術を開発した。効率良く選別することで、再利用できるプラスチック量の最大化に貢献するとしている。

トラッキング型ラマン分光技術を導入した選別方法の仕組みは、下記である。

  1. プラスチック片を投入
  2. 画像認識システムで、プラスチック片の位置・色の明るさ・大きさなどを判別
  3. 非接触測長計「PD-704」で、ベルトコンベヤーの速さを計測
  4. ガルバノスキャナー「ガルバノスキャナーモーターGM-2020」に付けた専用ミラーで、レーザー光を各プラスチック片に追従して照射
  5. キヤノンが開発した受光ユニットで、反射したレーザー光や散乱光を受光
  6. 独自開発した分光ユニットで、ラマン散乱光を計測
  7. 独自開発した識別ソフトで解析。設定変更し、多種多様なプラスチックを選別

装置内部イメージ(出典:キヤノン株式会社)

キヤノンは2024年上期に、同選別法を導入したプラスチック選別装置の発売を予定している。同技術のようなイノベーションが、日本および世界のプラスチック循環に貢献していくことが期待される。

【プレスリリース】計測が難しい黒色プラスチック片も同時計測できる高精度選別法を開発 プラスチックの再利用促進によるサーキュラーエコノミーの構築に貢献
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