静岡大学・芝浦工業大学・東北大学は4月1日、テラヘルツ波を利用した廃プラスチック識別装置の開発に成功したと発表した。

同装置は、既存の識別装置では識別が難しかった、黒色プラスチック、添加剤や難燃剤などを含む混合プラスチックを識別でき、紫外線や長期使用による劣化度を把握できるとともに、バイオプラスチックを見分ける手法としても有効であるとしている。同識別技術は、廃プラスチックの適切な選別に応用でき、廃プラスチック資源の再資源化による高品質の再生資源の確保に大きく貢献すると研究チームはみている。

研究チームは、同装置により期待できる効果として以下を挙げた。

  • 資源循環の加速:素材や添加剤ごとに識別でき、投入エネルギーが小さいマテリアルリサイクルの資源循環を加速させる。廃プラスチックの素材ごとの選別精度が上がることにより、マテリアル・ケミカルリサイクルが実現できる
  • リサイクル現場の火災防止:着色プラスチックに隠れて見えないリチウムイオン電池などの金属を検出でき、リサイクル現場の火災防止に役立つ

電波と光の中間の性質を持ち、人体に安全なテラヘルツ波は、発生と検出が長年困難であった電磁波であるが、車の自動運転への活用など、デバイスや機器への利用が近年実用化されつつあると研究チームは認識している。

研究チームは、テラヘルツ波による識別に機械学習などのアルゴリズムを活用しており、識別に使用するサンプル数が大きいほど、識別精度が高まることを確認した。そのため、データベース構築を継続的に進めつつ、現場の廃プラスチック組成に適合した、より優れた識別性能が期待される識別アルゴリズムの開発を進めている。

同研究は、JST大学発新産業創出プログラム・プロジェクト支援型「プラスチック製容器包装廃棄物の高度選別装置の事業化」の助成を受けた。同研究の背景には、廃プラスチック問題が近年世界で注目されており、廃プラスチック材質の高度な識別と再資源化が求められていることにある。研究チームは、同装置はSDGsの達成とサーキュラーエコノミーへの移行に資するとの考えを示した。

廃プラスチックを効率的かつ適切に選別できる同装置は、 廃棄物処理・リサイクル業界が抱える人手不足問題の解決にも貢献するだろう。同装置などの最新技術が、プラスチックの循環を促進していくことが期待される。

テラヘルツ波

テラヘルツは周波数の単位で、1兆ヘルツに相当する。テラヘルツ波は0.1~10THz程度の周波数の電磁波のこと。電波と光の中間の性質を持ち、高速通信や空港での持ち物検査などのセキュリティ応用での研究開発が進められている。分光測定に利用すると高い物質識別能力を発揮するため、テラヘルツ波を用いて得られる分光スペクトルは指紋スペクトルと呼ばれ、医薬品分析などへの応用が期待されている。

【プレスリリース】「テラヘルツ波を利用した廃プラスチック識別装置の開発」 -静岡大学・芝浦工業大学・東北大学の研究グループが「廃プラ新法」に対応できる新技術開発-
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*冒頭の画像の出典:静岡大学