エレン・マッカーサー財団はこのほど、報告書「Circular by Nature: A Policy Agenda for Bio-Based Materials in a Circular Economy」を公表し、これまで十分に議論されてこなかった木材や紙・パルプ、天然繊維、ゴム、皮革といった生物由来素材の循環利用を促進するための政策提言をまとめた。

報告書は、循環経済の取り組みがこれまで主に鉱物・化石資源などの有限資源を対象として発展してきた一方で、生物由来素材は十分な検討がなされてこなかったと指摘。13カ国の循環経済戦略と18の生物由来素材関連政策を分析した結果、両者は並行して進められているものの、十分に連携していないことが明らかになったとしている。

現在の循環経済政策では、生物由来素材は主に化石由来素材の代替として位置付けられている。しかし報告書は、単なる代替利用にとどまらず、素材の生産から使用、再利用、最終的な自然への還元までを一貫して設計する循環的視点が不足していると指摘する。このため、修理や再利用、リサイクルといったプロセスを通じて本来もっと活用できるはずの価値が十分に活かされず、資源効率や環境効果の最大化が妨げられているという。

こうした設計の不在は、経済面と環境面の双方に影響を及ぼしている。

現在、多くの生物由来素材は依然として線形経済モデルの中で利用されている。これに対し、循環的な設計やリユース・リサイクルを組み合わせることで、資源価値をより高めることができるとしている。

また報告書は、循環利用が環境面でも大きな効果をもたらすと指摘する。製品や素材を長期間利用することで新規資源採取への依存を減らし、土地利用圧力を軽減できるほか、再生型農業や多様な作物栽培の導入によって土壌の健全性や生物多様性の回復も期待できるとしている。また、堆肥化や有機資源の循環利用を通じて栄養分を土壌へ戻すことで、自然の再生を支える生物循環の構築につながるとしている。

循環戦略を実践する企業事例として、再生型農業由来の天然繊維調達や製品修理、循環設計を進めるGucciや、持続可能な森林管理と古紙リサイクルを組み合わせた事業を展開するブラジルの紙・パルプ大手Klabinが紹介されている。また、インドのスタートアップMYNUSCoは、農業残渣を生物由来の複合材料へ転換し、プラスチック代替材として活用する事例として取り上げられている。

こうした取り組みを後押しするため、報告書では循環経済への移行を加速させる5つの政策的柱を提示している。

1. 土壌や生態系の再生を促す生産と循環利用を組み込んだ設計基準の整備

資源調達から製品設計、廃棄後の循環までを通じて環境負荷を低減し、再生農業や有害物質排除などを通じて自然再生に貢献する設計思想の標準化が求められる。

2. 安全かつ効率的な素材循環システムの構築

回収・選別・再資源化の高度化に加え、トレーサビリティやデジタルプロダクトパスポートの活用により、生物由来素材を含む多様な資源の循環利用を可能にする。

3. 補助金や税制を活用した経済的インセンティブの見直し

再生素材やリユース・リペアなど循環型ビジネスを促進する一方で、使い捨て型の生産・消費構造に対してはコスト内部化を進める仕組みへの転換が必要とされる。

4. イノベーション・人材育成・インフラへの投資

素材技術や循環設計の研究開発を強化するとともに、専門人材の育成や回収・再資源化インフラの整備を進めることで、産業全体の移行基盤を整える。

5. 政府・産業界・国際機関の連携強化

国際的な標準化や規制調和、サプライチェーン全体での協調を通じて、循環型経済のグローバルな実装を後押しする。

これ以外にも、デジタル製品パスポートやトレーサビリティの導入を進め、素材の由来や循環経路の透明性を高めることの重要性も指摘している。

報告書は、生物由来素材の潜在力を最大限に引き出すためには、単なる化石由来素材の代替にとどまらず、自然の再生と資源循環を両立する経済システムへの移行が必要だと結論付けている。

【参照記事】Circular by nature: a policy agenda for bio-based materials in a circular economy
【参照記事】CIRCULAR BY NATURE
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