非営利のイニシアチブ「ファッションポジティブ(Fashion Positive)」が循環型素材についてのガイドライン「Circular Materials Guidelines 1.0」を発表した。これは、ファッション産業に向けて「Circular Fiber(循環型繊維)」を定義する初めてのガイドラインとなる。アパレル産業や靴産業、繊維産業に対して、循環型繊維とは何であり、それをどのように企画することでサーキュラーエコノミーに対応できるかという一律の指針を示している。

Fashion Positiveは米国とオランダに拠点を置く「Cradle to Cradle Products Innovation Institute」のイニシアチブとして発足し、現在は非営利団体「Textile Exchange」の資金面でのスポンサーを受けるイニシアチブとなっている。

製品価値を最大限に高め、製品寿命を延ばすことを考えるサーキュラーエコノミー。循環型の繊維や糸は、サーキュラーエコノミーに基づくクリーンで安全な衣服や靴を開発する上で、重要な要素となる。

現在の「採って、作って、捨てる」形式では、ファッション産業が毎年、地球全体から排出される二酸化炭素のうち10%を排出し、79兆リットルの水を消費し、9200万トンの廃棄物を発生させているという試算がある。イノベーター、ブランド、メーカーがこの現状を変えようと動いているが、これまでは今後の循環型のシステムに向けて設計するために必要な一律の要件が存在しなかった。

ガイドラインは、Fashion Positiveと業界内のステークホルダーとの緊密な協力のもと、素材が最終的に焼却されたり埋め立てられたりすることで地球環境を汚染するのではなく、循環し使用され続けることを可能にする狙いで開発された。

Circular Material Guidelinesでは、次の4分野に焦点が置かれている。

Circular Material Guidelinesの主な4カテゴリー

※「Circular Materials – Fashion Positive 」より

原料:バージン材料の使用を最小化し、サーキュラーシステムを推進するための基礎的なステップとして、再生または再利用された素材を原料に組み入れる
化学:繊維製品と生産工程から有害化学物質を段階的に取り除き、より安全な製品/工程で代替することを促進
水:施設からの排水ゼロに向けてのロードマップを提示
エネルギー:温室効果ガス排出ゼロへのビジョンと技術により、可能な限り温室効果ガス排出をゼロに近づけるためのロードマップを提示


Fashion Positiveの取締役を務めるSasha Radovich氏は今回のガイドラインについて、「満たすことが難しいような別の新たな要件を設定しようとしているわけではない。むしろ、この業界をよりクリーンで安全でレジリエントな業界にするために行われている膨大な作業を活用することを目指している」と話す。

循環型システムへの移行においては、企業や団体による個々の取り組みだけでなく、業界内での連携が鍵となる。ファッション産業における共通認識としての方向性を示す今回のガイドラインは、ファッションを循環型にする取り組みの協働と推進を支援するものとなるだろう。

【参照記事】Fashion Positive launches the First-Ever Circular Materials Guidelines Defining Circular Fibers for the Fashion Industry
【参考文書】Circular Materials – Fashion Positive
【参考文書】 Circular Materials Guidelines 1.0
【参考文書】Cradle to Cradle Products Innovation Institute