投資家の間で、判断要素としてのESG(環境・社会・ガバナンス)は着実に浸透しているようだ。株式会社電通パブリックリレーションズ内の企業広報戦略研究所が9月29日発表した「2020年度ESG/SDGsに関する意識調査」で、投資を検討している、もしくは投資に興味のある人で、投資をする際に企業の「ESGに対する取り組みを考慮する」人は8割弱に上った。気候変動や自然災害など、生活者の不安感が増大している状況に加え、新型コロナウイルスにより生活環境が変化する中、ESG/SDGs(持続可能な開発目標)の認知・関心は高まり、投資家の判断にも影響を及ぼしているのがうかがえる。

調査は全国の20~69歳の男女計1万500人にインターネットで実施。ESG/SDGsの認知状況や関心が高い取り組み、企業に期待する事柄の昨年からの変化などを調査・分析した。このうち、投資意識(興味)のある8619人に、投資の際に企業の「ESG」の取り組みを考慮するかを質問したところ、「とても考慮する」が22.0%、「少し考慮する」が55.6%で、計77.6%、約4人に3人(77.6%)が“考慮する”と回答した。「新型コロナや気象災害など、生活を取り巻く状況に不安が高まる中、経営者がESGの視点を持つ重要性は日増しに高まっている」と同研究所は読み取っている。

さらに、ESGを項目ごとに分類し、それぞれの魅力度の推移を昨年比較で確認した。項目は①エネルギー効率化②気候変動への対応③水資源保護④働きやすい職場環境づくり⑤ダイバーシティ推進⑥サプライチェーン・人権問題への対応⑦多様性・透明性の高い経営体制づくり⑧リスク&コンプライアンス⑨資本効率(ROE)。その結果、「気候変動への対応」が29.2%で、19年の21.7%から増加。「エネルギー効率化」や「働きやすい職場環境づくり」も引き続き高い割合を維持しており、これらの項目は投資家にとって、今後も企業の社会的影響や投資の持続可能性を測る重要な指標となっていきそうだ。また、年代別に魅力を感じる項目を確認すると、20代~40代の1位は「働きやすい職場環境づくり」で、50代と60代では「エネルギー効率化」、さらに「気候変動への対応」といった環境を重視した項目が上位に挙げられた。

ほか、生活者のESG/SDGsの認知は、ESGが19年の18.3%から23.7%に、SDGsの認知率は39.8%で19年の24.2%から大幅に上昇した。SDGsの達成目標である17項目のうち、企業に取り組んでほしい項目1位は「すべての人に健康と福祉を」22.4%、2位が「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」21.9%で昨年と同様の傾向。生活者の関心1位は身近に問題を感じることのできる「食品ロス削減」が35.5%。「子ども食堂への支援」(27.7%)は昨年より8.0ポイントと大幅に伸長した。

企業のSDGsの取り組みを認知すると、生活者の約7割(71.1%)はウェブサイトの閲覧や商品・サービスの購入など、その企業に対し何かの行動を起こす。行動を起こすという回答は、昨年より3.2ポイント上昇した。

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「HEDGE GUIDE」の転載記事です。