エプソンアトミックス株式会社は6月6日、青森県八戸市に「北インター第二事業所 金属精錬工場」が竣工したと発表した。建物と生産設備に約55億円を投じた新工場は、エプソングループ内や地域で不要となった金属を自社の金属粉末製品の原料として再資源化する。これにより、親会社であるセイコーエプソン株式会社が掲げる「環境ビジョン2050」の目標の一つ、「地下資源消費ゼロ」の達成に向けた取り組みを加速させる。
エプソンアトミックスは、金属粉末や、金属粉末を射出成形する技術「金属射出成形(MIM)」による部品の開発・製造・販売を手がけるセイコーエプソンの100%子会社だ。新工場では、自社の製造工程で発生した規格外の金属粉末製品や工場内の金属くず、さらにエプソングループが排出する金属端材や使用済み金型などを回収し、新たな金属粉末の原料として再生する。これは、自社グループ内で発生した廃棄物を再び自社の製品原料として利用する、クローズドループ型の資源循環を構築する取り組みだ。
この取り組みの背景には、将来的な地下資源の減少や、地政学リスクなどによる金属原料の価格高騰といった、バージン原料の入手が困難になるリスクへの備えがある。同社は2020年から、エプソンの半導体事業で使われたシリコンウエハーを金属粉末原料として再利用しており、今回の新工場設立は、その対象を拡大し、金属資源循環を本格的に確立する動きとなる。
新工場で生成された高品位な再生原料は、同社の本社および北インター事業所において、独自の金属粉末製造技術によって製品化され、次世代の省電力・小型デバイスなどに使われるMIM部品にも活用される。新精錬プロセスの導入により、高炉製純鉄などのバージン原料から再生金属原料への置き換えを進め、地下資源の保護とCO2排出量の削減に貢献する。また、工場では再生可能エネルギー由来の電力やLNGを利用するほか、原料投入の自動化や除滓ロボットの導入など、環境負荷低減と生産性向上を両立させる。
【プレスリリース】エプソンアトミックス、不要な金属を原料として資源化する新工場が竣工
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